- 号泣する準備はできていた (新潮文庫)/江國 香織
- ¥420
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***この本は2009年8月に再読しました***
私はたぶん泣きだすべきだったのだ。身も心もみちたりていた恋が終わり、淋しさのあまりねじ切れてしまいそうだったのだから―。濃密な恋がそこなわれていく悲しみを描く表題作のほか、17歳のほろ苦い初デートの思い出を綴った「じゃこじゃこのビスケット」など全12篇。号泣するほどの悲しみが不意におとずれても、きっと大丈夫、切り抜けられる…。そう囁いてくれる直木賞受賞短篇集。
(Bookデータベースより)
人が一所にとどまっていられない――愛においてさえ――というのは、何て残酷なことだろう。
私の心臓はあのとき一部分はっきり死んだと思う。さびしさのあまりねじ切れて。
一人の男をちゃんと好きでいようとするのは、途方もない大仕事だ。
さて、まず何よりタイトルがずるいですね。とても素敵なタイトルです。
普段ミステリーばっかり読んでるとすぐにやれ殺人やら、やれエグイ表現やらとかが多いのでたまにきれいな表現に触れて心をきれいさっぱり洗いたくなったりします。
そんなときに読みたくなる作家さんの一人が著者だったりします。
本作はいつ読んだのか覚えてないくらい前に読んだので、内容はほとんど忘れてたので始めて読む感じで読めました。
12編からなる短編集です。
誰もがみな何かしらの孤独をかかえ、それに抗い、受容し、傍らに置きながら生きていく。
そんな風に生きている人たちの人生を、ほんの一瞬だけ、ものすごくきれいな切り口で切り取って寄せ集めた短編集です。
どの短編も孤独で、それでいて凛とした強さを持った女性が描かれています。
それぞれの人間関係の距離感の描写や、立ち振る舞いや言葉遣いのひとつひとつが素敵だなぁ、と思います。
こういう表現はしばらく触れてないとやっぱりいいですね。
普段生活している世界が言葉ひとつでこうもきれいな世界に見えるのか、こうも違った色を見せるのか、と思ったりします。
それぞれの短編の読了後はどれも、脱力感とは違う、虚無感という表現でもない、どう表現したらいいのかわからない感じのモヤモヤ感に襲われました。
まぁ、それによって物足りないと感じてしまうことも何編かにはありましたが。
さぁ、人生を振り返ってみて
号泣する準備・・・
できていますか?
「私は人間のひとりひとりが、意思通りに、大きな仕草で、自分の人生を描くのだと思うわ。鮮やかな、決定的な方法で」
フランソワーズ・サガン
★★★
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