『ユニット』  佐々木譲 | ページをめくった先に広がる世界と解け合う心

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ユニット (文春文庫)/佐々木 譲
¥750
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***この本は2009年6月に読了しました***

十七歳の少年に妻を凌辱され殺された男、真鍋。警察官である夫の家庭内暴力に苦しみ、家を飛び出した女、祐子。やがて二人は同じ職場で働くことになる。ある日、少年の出所を知った真鍋は復讐を決意。一方、祐子にも夫の執拗な追跡の手が迫っていた。少年犯罪と復讐権、さらに家族のあり方を問う長編。 (Bookデータベースより)








序章はまるで、Y県H市の母子殺人事件を彷彿とさせる記述から始まる。



7年前に愛する妻子を凌辱され殺害された真鍋。
そしてその犯人、川尻。
川尻は犯行当時17歳と言うことで、少年法が適用されるがあまりにも凶悪犯罪だったため公判が開かれる。
成人であれば死刑判決でもおかしくない事件だったが、18歳未満の「少年」であったため、無期懲役となる。
真鍋は、妻子を永久に失ってしまった悲しみと喪失感から自暴自棄の酒びたりの生活を送っていた・・・。

時を同じくして、門脇裕子は警察官である夫、英雄のたび重なる暴力に耐え切れず幼い息子を連れて家を飛び出した。
警察官の夫、英雄は妻に逃げられ激怒。傷ついたプライドを回復すべく、妻裕子の足取りを刑事という職務を利用してまでも辿り追い詰める決意をする・・・。

そして、真鍋と門脇裕子は偶然、波多野工務店と言う職場で働き始める。
社長である波多野も、仕事優先をしてきた結果、妻に逃げられていた過去を持っていた・・・。









小さくも暖かい幸福感に包まれていた生活、永遠に途切れることはなく続いていくと何の根拠もなく信じていた日々。
これを自分勝手な、そしてとても理不尽な暴力により、一瞬で永遠に失われてしまった事件。



七年前のあの日のこと。
記憶がいまも鮮やかに生きているという意味では、つい昨日のことのように思える。
二度と戻らない、という点では、果てしなく大昔のことだった。



被害者遺族の癒すことの出来ない感情が悲しく切ないです。
判決による刑罰では、到底納得できない感情が描かれています。

模範囚であり改悛の念が認められば、最短で7,8年で仮出獄となる無期懲役。
犯人である川尻も7年で出所してきます。

それを聞いた真鍋は復讐と言う生きる希望を見つけ、今までの生活から一変します。
司法の手による裁きではなく、自分の手による裁き。
個人の責任で法律の不備を補う行為。法律を超えた正義。
これを読者はどう捕らえるか。のめり込めるか一歩引くか分かれるところでしょう。




激しくクロスする登場人物それぞれのユニット。
それぞれが最初に属していたユニットがどんどん失われ、そして新たなるユニットの構成。
新しくできたユニットはどういう結末を迎えるのか・・・・。



大筋は良かったんですが、警察官である門脇英雄の執着の理由の記述が薄かったかなぁ。。。



★★★




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