『小説消費者金融 クレジット社会の罠』  高杉 良 | ページをめくった先に広がる世界と解け合う心

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小説 消費者金融―クレジット社会の罠 (講談社文庫)/高杉 良
¥800
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***この本は2009年2月頃読了しました***

危機に瀕するクレジット社会の内幕を描く!カード犯罪が増大し、ローンの不払い、自己破産が横行するのはなぜか。クレジットカードの総発行枚数は約1億8千万枚――業界・使用者をめぐる不透明な実態を綿密な取材で明かし、“消費者金融”再生に賭ける男たちの、熟きドラマを活写する。『座礁』を改題。






刊行されたのが1996年なので、その時代背景を考え読んでみました。
消費者金融と言うと、宮部みゆきの「火車」 が浮かびました。
副題からいっても、そんな感じなのかなっという思いで読み始めました。


昭和40年代、街金・サラ金を営み取立ての激しさから「鬼玉」と呼ばれていた玉崎英太郎。
彼が色々な経緯からアメリカへ渡米し、消費者金融の本来あるべき姿を学び、日本にもその重要性と必要性を訴え、会社の倒産・自身の結婚離婚・非弁法との問題等、紆余曲折を経て、日本にも透明性の高い消費者金融を根付かせるため試行錯誤し、戦っていく物語でした。



前記「火車」とは違い、消費者金融の歴史や、そのデータベースの構築(ブラックリスト)までの歴史等が読みながら学べる、といった感じです。
379Pから始まる玉崎の東都弁護士会風紀委員会に対する回答書は、非常に素晴らしい記述であるとともに、問題点を的確に指摘しています。


主人公玉崎は、「クレジット社会の円滑な発展のためには信用情報及びその情報データベースの構築は必要不可欠」だと。全くその通りだと思います。
そしてこうも述べています。「貸し手(与信企業)と借り手(消費者)との良好な人間関係を維持し、かつ消費者の経済生活の正常な発展に寄与するために、双方を繋ぐ架け橋が非常に重要」だと。


ブラックリストというと嫌なイメージが付きまといますが、その債務者が自己の支払い能力を超えてカードを使用しようとするときに、自動制御装置のような抑止力が働くシステムとなるわけです。


過剰な与信信用の創造は、いずれどこかで歪みをもたらすのだと思います。
現在のその最たるものが、リーマンショックに端を発した今の世界的不況なのだと思います。





副題である「クレジット社会の罠」に期待して読み始めたため、その点に関してはちょっと期待はずれでしたが、また違った側面からの業界を見れた気がします。

人間ドラマの側面としてはあまり感動的ではなかったけど、非弁法での弁護士との戦いが決着したときは、ちょっとウルッと来ました。

まぁ副題がなければ読まなかった本かも知れませんが、勉強になりました。

経済小説が苦手な方は厳しいかも・・・。



★★★★




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