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死神の精度

死神の精度 死神の精度
伊坂 幸太郎

文藝春秋 2005-06-28
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おすすめ平均

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★★★★★★★★☆☆



伊坂幸太郎さんの作品も三作目となりました。全作品購入済みなんですが、なかなか読み進められません。この本のジャケット、とても好きです。青と黄色、そして白は相性が良いですね。

読み終えた後の正直な感想としては、少し物足りない感じでした。「魔王」と「陽気なギャングが地球を回す」の方が好きです。初めにこの作品を読んでいたら、それはそれで感動したと思いますが、どうしても伊坂幸太郎さんの作品ということで期待が高かったからかもしれません。「死」をテーマにするのなら、重松清さんの作品の方が好みです。

あらすじはいつものようにネタバレしない程度に書きたいので、簡単に。簡単に書くから「粗筋」なんですが。主人公は死神の千葉。死神の仕事は、対象となった人を一週間の間に調査して「可(=死)」か「見送り」かを上に報告することです。この千葉と六人のショートストーリーです。

一話目の結末が結末だったので、もしかして、この後も・・・。なんて不安にもなりましたが、そこは伊坂さんらしかったです。「死」の扱い方も伊坂さんらしく、決して軽いテーマではないんだけれど、読者に無理に受け入れさせることのないように軽く、というより日常の中にあるかのように扱っています。

死は人間にとって特別なことではない。けど、死は大事なことなんだ。

この特別ではないけれど、大事なことである。ということは「死」に関してはとても大切なことだと思います。死を特別視し、無闇に恐れる必要はない。しかし、やはり死は常にそばにあって、死を意識することは大切です。その点では、六話目の「死神対老女」が一番好きです。

各話とのリンクについては、予想がついたのが残念でした。それでも「吹雪に死神」の謎は最後までわからなかったところもあって、ミステリとして楽しむこともできました。「死神と藤田」「旅路に死神」のどちらも、死の中に救いがあって好きです。若者の心理を上手く表現するなぁと思います。

冒頭に書いたように個人的にはそこまでハマる作品ではなかったのですが、やはり、随所にでてくるセンス溢れるセリフや千葉の独特のキャラクターは魅力です。

「ちょっとした微妙な嘘は、誤りに近い」
「渋滞」というものが、「ミュージック」とは対極の、人間の発明した最も不要で、最も醜いものだと確信している。


なんて、伊坂ワールド全開なセリフ回しだと思います。まぁ、まだ三作しか読んでいないのですが。本屋大賞では「魔王」と一緒にノミネートされましたね。ノミネートの中に二作品も選ばれるなんて、さすが伊坂さん。という感じですが、票が割れてしまいそうですね。「サウス・バウンド」と同様、「魔王」も応援しているのですが、こちらは大衆向けではないからなかなか難しいのかも。伊坂ファンの皆さんの中でも「魔王」の評価は分かれているので、余計に難しいですね。

四作目は重力ピエロを読んでみようとおもいます。砂漠もチルドレンも気にはなるのですが、楽しみは後にとっておきます。未読の作品すべて楽しみなんですが。

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