卒業
卒業
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久しぶりに重松清さんの作品です。ハードカバーで読むのは初めてです。この本には、「まゆみのマーチ」「あおげば尊し」「卒業」「追伸」の4つの短編が入っています。
どの作品も、大きなテーマとして親の死があります。そして、いつも通り?視点は40代ぐらいの男性として書かれています。そのため、重松清さん独特の中年男性の切なさとか悔しさとかやるせなさとか含みながらも心温まる、優しい話として書かれています。
「まゆみのマーチ」は賢く上手に生きることが出来ず、不器用に人生を歩んでいるまゆみと賢いとは言えないが真っ直ぐで深い愛情を注ぐ母親の絆が描かれています。「好き」という言葉の偉大さを考えさせられる内容でした。
「あおげば尊し」は死期が近い父親と、父親と同じ教師という職業に就いた息子の光一と死に関心を持つ生徒が「死」を見つめ、考えるストーリーです。父親の信念の強さと、死の荘厳さが印象的な作品でした。
「卒業」は生まれる前に父親を失った亜弥と、その父親と親友だった主人公が出会い、父親の影を二人で追いかけながら何かを「卒業」していく話です。親の存在、責任について、また月日が経ち輪郭がぼやけてしまっても変わらないものについて考えさせられました。
「追伸」は義理の母親と母親と素直に呼ぶことができない敬一とのすれ違い、そして変化について書かれています。記憶の中で美化され理想化していく人間の性と、どんなに形は違っても変わらない親の大きな愛を見ることができました。
4つの作品とも、いつものことながら泣けてくる良い作品であったのですが、特に好きなのは「追伸」です。意固地になって、固く強張ってしまった心に差し込む愛情。どんなひどいことをされても、言われても変わらないその愛情に心打たれてしまいました。くさい言葉ですが、愛とは与えるものだということを再認識させてくれました。
「あおげば尊し」はテリー伊藤さんが主演で映画化されたようです。上映は1月21日からです。ということは、明日からですね。どのような仕上がりになっているのか、気になります。
あおげば尊し 公式サイト
重松清さんの作品の中でも特に今回は「狙った」感が非常に濃い作品ばかりではありましたが、それでも良いんだって思える、心の中からじわじわと感動が込み上げてくる良い作品でした。
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