ユージニア | Book Review’S ~本は成長の糧~

ユージニア

ユージニア ユージニア
恩田 陸

角川書店 2005-02-03
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おすすめ平均

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★★★★★★★★☆☆

ついに恩田陸さんの作品も3作目となりました。まだまだ順番待ちの購入済みの本があるので、少しずつ読んでいこうと思います。さて、このユージニアですが、感想を文章にして書けるかどうか不安です。読み終えてすぐなのですが、まだまだ消化しきれていなくて、頭の中でぐるぐるといろいろなことが駆け巡っています。

構成は、僕の非常に好きなタイプでした。奥田英朗さんのララピポもそうだったのですが、章ごとに出てくる人物が違うのは、刺激が継続されてついつい読み進めていってしまいます。また、インタビュー形式の内容と物語のキーのひとつである「忘れられた祝祭」の内容が交互に出てくることも、少しずつパズルのピースが集まって作り上げられていく感じがして、引き込まれました。

地元の名士である医者の屋敷で、3代とも誕生日が同じで3代そろって誕生日をを祝う日に事件は起こった。毒入り飲料によって17人もの命が奪われた。生存者はたったの2人。事件は遺書を残して死んでいった青年が犯人ということで解決したかのようにみえたが・・・というはじまり。

事件には被害者と加害者ばかりが注目されますが、その事件に関係した人々がその背後にたくさんいるということを気付かせてくれます。真実を追い求める人たち。しかし、真実を知っているのは限られた人だけ。その真実もおぼろげではかない。

目の見えないこと、見えない人間、見る側、見られる側、見る人によって変わる真実など「見る」が重要な要素となっています。目の見えない少女は何を感じ、何を考えたのか。見えることで見えない青年は何を見出したのか。見られる立場の人間になりたくて、その姿を追い求めた彼女は答えを掴み取れたのか。

ミステリを読む機会が少ないのですが、推理小説ではないこのような形のミステリは非常に好きです。ただ、何にでも答えを求めてしまう面倒くさがり屋の僕としては、結論のはっきりしない結末はむずがゆい気持ちにさせました。しかし、これはこれでOKなんだという思いもあります。

読んでいて少し暗い気持ちにさせ、不安を掻き立て、心の中に何か異物を置かれているような気分になります。それは作品のはしばしから、人の本質をずばりと突くセリフや描写が次々と出てきてドキッとさせるからかもしれません。哲学的で、抽象的で、具体性には欠けるようでいてズバッと切り込んでくる感じというのでしょうか。

その数多く心に引っかかった箇所からいくつか紹介です。

ノンフィクション?あたしはその言葉が嫌い。事実に即したつもりでいても、人間が書くからにはノンフィクションなんてものは存在しない。ただ、目に見えるフィクションがあるだけよ。目に見えるものだって嘘をつく。聞こえるものも、手に触れるものも、存在する虚構と存在しない虚構、その程度の差だと思う。

事実は、ある方向から見た主観に過ぎません。

誰でも最初は模倣から始まるんだぜ、きちんと模倣ができない奴には、オリジナルだって出来るはずがない、模倣しかできないなんていうのは自惚れもいいところだ、
(中略)違う、お兄ちゃんは誤解してる、あたしは技術を真似てるんじゃなくて、人を真似てるんだ

まだ頭の中でごちゃごちゃとうるさく、イライラさせるぐらいこの作品の内容が回っています。書くことによって少しは整理できるかと思ったのですが、甘かったようです。こんな感想を投稿してもよいのか迷うところですが、せっかく書いたので投稿します。もともとそのつもりでしたが・・・。でも、読後にこれだけ考えさせられるというのは、それだけ中身の濃いものだったんだと実感しています。

このもどかしい気持ちを少しでも整理してくれないだろうか、と他の方の感想を読んでいたところ、とても良い感想があったので紹介させていただきます。

しっくりと落ちてきた:『ユージニア』 -恩田陸

これぐらい整理のされた、まとまった文章を書けるようになりたいものだ、と思います。

3作とも違った系統の作品で、恩田陸さんの力量のすごさを感じます。伊坂幸太郎さんと同じくはまってしまいそうです。この作品も時間を空けてもう一度読み直してみたいな、と思います。そうするとまた違った発見がありそうです。

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