この本が、世界に存在することに | Book Review’S ~本は成長の糧~

この本が、世界に存在することに

4840112592 この本が、世界に存在することに
角田 光代

メディアファクトリー 2005-05
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おすすめ平均

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★★★★★★★★★★



10月に再開して、コツコツ更新していくと書いていたにも関わらず、かなりの時間が空いてしまいました・・・。いつもいつも約束を守れず申し訳ありません(>_<)更新していなかった間も、読書は毎日続けていました。ただ、読み続けること(インプット)は、なかなかしんどいですね。たまにはこうして感想を書く(アウトプット)もしないと、その本の内容を忘れてしまうのがとても早いように感じます。

角田光代さんの著書を読んだのは、この本が初めてです。前作の「対岸の彼女」もとても読みたいと思っていたのですが、この本が古本屋さんで安く売られていたこと、ジャケットがとてもキレイだったこと、タイトルが本好きの僕にはとても惹かれるものだったことから、手に取り読んでみることにしました。

◆「本」と「わたし」の9つの短編集

「本」をテーマにした9つの短編が入っています。「本」に対する作者の想いがとてもよく伝わってくる作品です。本好きの方には、共感できる箇所が非常に多いと思います。

ぼくは、女性作家の小説はどうも苦手なのですが、この作品はそういった抵抗感もなく素直に読むことができました。その理由は、作者が女性であることを自然なままで文体に表現しているからだと感じました。

本を見るとワクワクする人、本屋さんにいるとあっという間に時間が過ぎてしまう人、ふと手に取った本に無性に惹かれる経験をしたことがある人、本を通して世界が広がった人、なんていうとほとんどの人に当てはまってしまいそうですが、オススメです。

角田光代さんの他の書籍も読んでみたい、と思わせてくれる一冊であったのは確実です。

◆ぼくが作者と本好きとしてつながれたと感じた箇所

読んだ中で、ぼくが共感を得た箇所を抜粋させていただきます。

かわっているのは本ではなくて、私自身なのだと。 「旅する本」より

小さい頃に読んで理解できなかった本が、大人になってから理解できるといったレベルの話を越えて、読む年代によって本に対する解釈・理解が少しずつ変化していくことってありませんか?本はただそこに変わらないままで存在し続ける。でも、それを読む「わたし」は多くの経験を通して新しい価値観や思考を手にして変化していく。ぼくにとってそんな一冊は吉野源三郎さんの「君たちはどう生きるか」です。中学生の時に読書の授業で課題図書として読まされたものの、全く理解できませんでした。最近、手に取り理解する部分・納得できる部分が増え、こんなに面白い本だったんだと驚きました。

開くだけでどこへでも連れてってくれるものなんか、本しかないだろう 「ミツザワ書店」より

中学生の頃、ファンタジー小説を読むことがとても好きでした。剣と魔法の世界。現実には起こりえない出来事の数々。一冊一冊読み進めることで、心が躍り弾んでいた昔の自分を思い出しました。

できごとより、考えのほうが何倍もこわいんだ 「さがしもの」より

考えて考えて不安になって、胃が痛くて逃げ出したい気持ちが爆発しそうになっても、いざ事が起こってみると「なーんだ」と思ったり、あっという間に終わってしまって拍子抜けすることって少なくないですよね。見えるものよりも、見えないものの方がこわい、というのはよくわかります。人間の想像力の面白いところなのかも、なんて思いました。