流星ワゴン | Book Review’S ~本は成長の糧~

流星ワゴン

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重松 清

講談社 2005-02
売り上げランキング : 1,849
おすすめ平均

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★★★★★★★★★★


ビタミンFを読んでから、すっかり重松清さんのファンになってしまった僕はモグさん の紹介もあってこの本を早く読みたいと思っていました。しかし、本の買い過ぎで財政の厳しい身としては、古本じゃないと買えない、買いたくない!ってことで今まで手にすることができていませんでした。

◆あらすじ◆

「死んじゃってもいいかな」

なんて悲観的な考えがグルグルと頭の中を回る、冴えない38歳の男・永田一雄。彼の現状は、息子がいじめが原因で家庭内暴力と引き篭もり、妻からは離婚を迫られる。そして、会社の方針によって早期退職=リストラによってハローワークに通う日々。とどめに、父親が肺ガンで入院中ときている。


父親の見舞いに行った時に、車代としてもらえるお金を目当てで月に2,3回病院に通う。奇妙な出来事は、そんな見舞いの帰りに起こった。


気がつくと、5年前に家族での初ドライブで事故死してしまった父・橋本と息子・健太オデッセイに乗っている一雄。この車では、過去に岐路となった後悔の出来事をやり直すことができる。そして、やり直しの時間の中に突如、自分と同い歳で現れる父親・チュウさん


この奇妙な旅によって、岐路=ターニングポイントとなった過去をたどっていく。そこで、自分と父親・息子・妻との関係や自分自身を見つめ直し、変化していく。


何度かのやり直しの現実を過ごし、別れの時が近づく。その時、親子の絆を見つけることができる。

◆感想(引用も交えて)◆


この本は、もしかすると男にしか理解できない、もしくは泣くことのできない作品かもしれません。それは、この作品にはほとんど「女性」が出てこないことと、父親と息子の関係に焦点があてられているからです。

僕は、父親の経験がないので息子としての視点しか持っていませんが、とても共感できる部分が多く、最後は思わず泣いてしまいました。男の不器用さが生み出す父と子の誤解や確執。そんな経験をひとつやふたつは、誰もがしていると思います。


・「なにも知らない」のと「すべてを知っていて、なにもできない」のはどちらが不幸せなのだろう


作品の中の一文です。みなさんはどちらですか?やり直しの時間では、後者の状況に苦しむ一雄の姿があります。「知らぬが仏」という言葉もあるように、やはり知らないままでいたいことも多いのかもしれません。たとえ、できることが全く無かったとしても知りたいと思う僕は身の程知らずなんでしょうか・・・。


このことについて、続けて考えさせられる箇所があります。橋本さん一雄のやり取りです。


「私なら、なにも知らないことのほうがくやしいですけどね。」

「知らないほうがましだ。」

「被害者づらができるからですか?」


このやり取りを見て、共感しますか?それとも反感を持ちますか?人それぞれだと思いますが、僕は素直に「ああ、そのとおりだな」と思いました。知らないことで被害者づらをする。他の人から見たらとてもかっこ悪く映っても、知らないから気づかないで済む。深いです・・・。


・同じでも、違う。違うのに同じ。


これどういうことかわかりますか?これだけじゃわからないですよね。

いくつも考えさせられる箇所があったのですが、その中でも一番印象に残ったところです。


(結果は)同じでも、(過程が)違う。(状況が)違うのに(結果は)同じ。


と補足することができます。現実には過去をやり直すことなんて出来ないから、結果がわかっていることなんてほとんどありません。でも、やり直しの時間の中でもがく一雄を見ていて、たとえ結果が変わらなかったとしても、どのように考え行動したのかの違いはとても意味があると感じました。


最後に心に残った、残しておきたいこの言葉を載せておきます。


たいせつな場所って、ほんとうにたくさんあるんですよね。あとになってからそれに気づくんです


親子の関係だけでなく、生と死、受験問題、いじめ、仕事観などなど多くのことを考えさせられる一冊でした。そして、しっかり?涙ありの物語。本当にオススメです♪それにしても、まだまだ上手く書評ができません。斎藤美奈子さんの解説があまりにも的確でわかりやすかったので、僕もこういうものを書きたいと思いました。


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