野ブタ。をプロデュース | Book Review’S ~本は成長の糧~

野ブタ。をプロデュース

野ブタ。をプロデュース
白岩 玄

河出書房新社 2004-11-20
売り上げランキング : 7,359
おすすめ平均

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★★★★★★☆☆☆☆



今月の10冊 (リニューアル後なくなってしまいました・・・)で近藤雄策さんが紹介していたのを読んで、前からマークしていた一冊です。近藤雄策さんの紹介がきっかけで進化しすぎた脳 を読んだこともあって、楽しみにしていました。久しぶりに古本屋さんに行くと置いてあったので、本当はダヴィンチ・コードが目的でしたが、我慢してこちらを購入しました。

◆スピーディーな展開◆

出だしから「辻ちゃん・加護ちゃん」の登場で面食らってしまいましたが、これも「プロデュース」への伏線だと考えると、まぁ納得。タイトルの野ブタの後になぜ「。」がついているのか疑問でしたが、気づけばあぁ単純「モーニング娘。」を意識したものだったんですね。といったようになんだか全体的に安直というか素直すぎるというか捻りのないところが見受けられました。僕は世代が近い(というか同じ年齢)ということもあって、別にそれが嫌い・よくないという感想にはつながりませんでしたが。

みなさんの感想を見ていると「(笑)」の使用頻度が高いことに眉をしかめた方とそうでない方に分かれていました。その原因?はやはり年齢の違いが大きいように感じます。僕自身、みなさんの感想を読むまで気づかないぐらい、普通に読み進められていました。僕も「(笑)」をよく使うせいかもしれません。

ストーリーはいたってシンプル。

着ぐるみを着て人気者を「演じる」桐谷修二。つまりここでは修二が事故プロデュースしている状態です。そして修二が編入してきた不幸な外見を持つ小谷信太(野ブタ)を人気者にプロデュースする

というもの。その文体はとてもスピーディーでユーモアもあってさらっと読めます。笑えるんですが爆笑には至らず、そしてその笑いの種類もどことなくシュールなものです。

高校生独特のバカ騒ぎする生活やテンポはいいが中身のない会話など、自分の高校時代を振り返れば思い当たることがある人も多いかもしれないですが、僕はどちらかというとそういうタイプではなかったです。修二がバカにしている、みんなとはつるまず「自分はお前たちとは違うんだ」という側に近い人間でした。着ぐるみの中の桐谷修二のような冷めた感じです。だから、心の中でツッコミをいれる修二に共感する部分が多かったです。

◆評価が180度変わった終盤◆

ふたつの意味を持たせています。本の中での修二と僕のこの本への評価です。前者はネタバレ含むので省略します。後者の僕の評価は、よくなったのではなく逆の最悪になりました。

個人的に、結末は本当に納得のいかないものでした。修二のプロデュースによって野ブタは変わっていきます。しかし、それも野ブタ自身が変わったのではなく、まわりの評価、反応といった環境が変わっただけ。野ブタをプロデュースすることによって、修二も変化していったように書かれていますが、僕としては結局何一つ変わっていないじゃないかというのが感想です。

近づきすぎることのわずわらしさ、遠すぎることの寂しさを相手にするのが嫌で、避けてきたのに気づけば自分がその状態に置かれている。そこでの「気づき」に関してどう対応するのかを期待したのですが、期待はずれ(悪い意味で)で残念でした。「着ぐるみ=他人から見た自分」も同じ自分の一部ということを受け入れるような展開であれば・・・なんて思いましたが、あくまでも個人的感想ですので(^^;

それでも同じ年の学生がこの作品を書いたことは尊敬です。受賞に関してどうこう言えるほどの知識もないので触れません。純粋に文章力のない自分にとって、がんばって文章力をつけよう!というモチベーションを高めるきっかけをくれました。これからの作品に期待です。

3年ほど前から若手作家の活躍が取り上げられています。僕はこの本が若手作家小説で初めて読んだ本です。同じ世代の視点から書かれた本も面白いなぁと思ったので、また機会があれば綿矢りさでも読んでみようかな、と思いました。

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