さくら | Book Review’S ~本は成長の糧~

さくら


著者: 西 加奈子
タイトル: さくら
★★★★★★★★☆☆



もう一度、中学生のころの文学少年の気持ちに戻ってみたいと思い、それに合った本を探していました。この本がそれにふさわしいかどうかは判断できませんでしたが、売れている本ということと帯の「あるちっぽけな家族に起こった、ひとつの奇蹟」という言葉で購入に踏み切りました。

◆内容&感想◆

帯の反対側に編集者のコメントが載っています。編集者なのに、「涙を流した」のがこの本がはじめてというのはどうかと思いましたが、その涙の理由が「哀しいから」「切ないから」といった言葉で表現できないものというものに共感しました。

つまり、
僕も泣いてしまいました

現在→過去→現在という流れで進んでいきます。過去がこの本の伏線であり、主題であり、見所であります。

正直な所、流れが変わるまでとても長くて中だるみの状態で読み進んでいました。しかし、物語がすごいスピードで変化していくくだりから、今までの部分がくっきりと色づき、存在を主張し始めます。

「理想の家族」

僕の目にはそう映るステキな家族の姿が描かれています。いつまでも仲の良い恋人のようなお母さんと、お父さん。人気者で数々の伝説を作り、みんなから愛されるお兄ちゃん。物語の語り手となる。ちょっぴり変な性格(その理由は本を読んでください)の。そして、さくら

家には団欒があり、笑顔が溢れ、幸福感に包まれています。こんな家族っていいな、って素直に思えるぐらい絵に描いたような幸せな家族像。

帯に書かれていた「奇蹟」はありませんでした。少なくとも僕が定義していた「奇蹟」は…。ただ、そこにあるもので、突然降って湧いたような出来事ではありません。それまでの日々の生活が家族の絆が生み出したものといった方がしっくりきます。

もしかすると、さくらの異変を奇蹟と言っているのかもしれません。

この本を読んで涙を流すかは、やはり人それぞれだと思います。しかし、涙を流す人は共通して妹のミキのように、ただただ目から涙が出てくることになるはずです。

◆その他◆

物語の中で、同性愛について触れられています。また、女性の方が視野が広いことと関連したエピソードも。「話を聞かない男、地図が読めない女 」に触れられていた内容とオーバーラップする部分があって、

読書ってつながっていくんだなぁ

って嬉しくなりました。たとえビジネス書と小説や全くジャンルの違う本同士でも、共通する部分が隠れていたりします。万遍なく読むことの大切さを実感しました。

想像できないような不幸が降りかかったり、自分の境遇が劇的に変化したり、彼女に振られたり、いろんなことで人は一喜一憂し、変化していきます。

だけど、
変わらないものがいつでも確かに存在していて、気付いた人は強くなれる

この本はそう伝えたいのではないかな、と思いました。

女性作家の文学はあまり読んだことがないのですが、女性らしい表現が今までに出会ったことのない新鮮なもので、新しい発見でした☆ただストーリー展開は王道を行き過ぎている気がしました…(^-^;

小説ってビジネス書のようにごっそり引用してコメントのような力技ができないので難しいです。ストーリーに出来る限り触れずに、感じたことを伝える練習は何かの役に立つかな(^-^;個人的な解釈ばかりですので、どの書評も軽い気持ちで読み流してくださいね(苦笑)

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