近藤史恵",「マカロンはマカロン」 | 読書日記PNU屋

近藤史恵",「マカロンはマカロン」

マカロンはマカロン (創元クライム・クラブ)マカロンはマカロン (創元クライム・クラブ)
近藤 史恵

東京創元社  2016-12-12


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 フレンチレストランのビストロ〈パ・マル〉で働く高槻青年。彼が見つける謎を、三舟シェフが推理力で解く日常の謎系連作集。

 たぶんシリーズ3冊目。前作を読んだかどうかも定かではない読者の私だったが、読めばあたたかで居心地の良いレストランの雰囲気に包まれ、楽しい時を過ごせた。

 とくに、アレルギーと人間模様がテーマの「コウノトリが運ぶもの」は、タイトルから妊娠ネタかと思わせて、全く違う感動的な展開にやられた。
 また、食から過去をふりかえる「ムッシュ・パピヨンに伝言を」はほろ苦くもさわやかで、欧州文化香り立ち、鮮やかな印象を残した。

 ただ、それだけにどうしようもなく身勝手な保身が見苦しい「タルタルステーキの罠」が、本書の後味を酷く損ねたのは残念。これ、下手したらお店にも迷惑になるし、抗体検査の時期と結果を調べられたら終わりだし、もう●療機関で対処を始めてるのが知られたら言い訳もきかないし、友達も巻き込んで悪手なのでは?

 ともあれ、シェフの料理はフレンチなど一度も賞味したことのない私にすら魅力的に映るし、またビストロ〈パ・マル〉に読者として足を運ぶ機会を持ちたいものだ。