ある男から語られる科学と物理の奇妙な奇妙な物語!
◇白鹿亭綺譚◇ -Tales Frothe White Hart-
アーサー・C・クラーク 平井イサク 訳
ロンドンの新聞街からテームズ河岸に通じる名もない裏通り。そこにパブ《白鹿亭》がある。外観はごくありきたり、他のパブと変わったところはない。だが、水曜日の夜だけは別だ。この日に集まる男たちが披露するのは、おどろくべき話の数々ーーー原子炉が臨界点に達した途端、反重力を作り出す「登ったものは」アイソトープが積まれたはずのトラックから奇妙な流動体があらわれる「臨界量」全ての音を消してしまう完璧な消音器を発明した男の悲劇「みなさんお静かに」など、巨匠クラークが豊富な科学知識を、ユーモアとウィットでソフトに包み込んだSF綺譚。
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1.みなさんお静かに
(Silence Please)
……ある男が完全に音を消してしまう完璧な消音器を発明した。ところが、それを復讐に使おうとする輩が現れたことから悲劇の幕が上がった!?
2.ビッグ・ゲーム・ハント
(Big Game Hunt)
……神経組織を流れる電流を記憶・再生することでその動物の動きをコントロールすることに成功したとある博士。映画監督がそれを利用して巨大イカを狙った!?
3.特許出願中
(Partent Pending)
……人間の神経を流れる電流を記憶・再生すれば五感すべてを再現できる! そんな機械の発明者の助手はこれが金になることを見抜き、外に持ち出し、あらゆる記憶を再生したが!?
4.軍拡競争
(Armanents Race)
……白鹿亭きっての話し上手ハリー・パーヴィスが映画界の人間を連れてやってきた。その男はかつてはハリウッドで活躍していたのだが、小道具の光線銃のためにアメリカを追われてしまったのだ!?
5.臨界量
(Critical Mass)
……アイソトープを積んだトラックが横転した。当然積んだ荷物も転がったが、拾おうとした人たちはそれを見るなり一目散に逃げ出した!?
6.究極の旋律
(The Ultimate Melody)
……なぜ人は流行歌に魅了されるのか? それは人間の頭脳の電気的リズムが関係するのではないかと考えた男は理想的な音楽を探求する機械を作り上げた!?
7.反戦主義者
(The Pacifist)
……戦略を決定する軍事用のコンピュータの開発がなされた。その計画責任者は無能で開発者はだんだんその将軍を憎悪するようになり、それが完成されたコンピュータ、カールに表れた!?
8.隣の人は何する人ぞ
(The Next Tenants)
……パーヴィスが若い時、ビキニ環礁に出向いた時の話。彼はそこで白蟻を研究するある日本人生物学者に出会うが、彼の目的は白蟻に世界を託すことだ!?
9.とかく呑んべは……
(Moving Spirit)
……パーヴィスの血縁ホーマーはとかく呑兵衛で、ウィスキーを密造するぐらい酒が大好きだった。それが世間にバレた時、弁護人パーヴィスは爆弾製造と誤魔化した!?
10.海を掘った男
(The Man Who Ploughed the Sea)
……小型潜水艦でフロリダの海を友人と堪能していたパーヴィス。別の船を見つけた彼らはその船をつけるが、逆に捕まってしまった! その船の乗員ロマーノは海水からウラニウムを抽出していた!?
11.尻込みする蘭
(The Reluctant Orchid)
……臆病な子男の趣味は蘭やサボテンの栽培。ある時、肉を食べる奇妙な蘭を入手し、それで憎悪している男勝りの伯母を殺害しようと企むが!?
12.冷戦
(Cold War)
……フロリダの海に氷山? どうせガセネタだろうと思いきや真実だった! カリフォルニアはマイアミビーチの攻撃のためフロリダに氷山を送り込んだ!?
13.登ったものは
(What Goes Up)
……空飛ぶ円盤信者に辟易していたパーヴィズの撃退話。新型原子炉を開発した博士らは臨界点に達した瞬間、反重力を生み出した。博士は重力ゼロの空間に最初に踏み入れる人間になったが!?
14.眠れる美女
(Sleeping Beauty)
……ひどいいびきに悩まされていた男。このままでは夫婦生活も崩壊、遺産ももらえない。科学者の伯父さんに頼み込んだところ、薬をもらい、確かにいびきはかかなくなったが!?
15.アーミントルード・インチの窓外放擲
(The Defenestration of Ermintrude Inch)
……白鹿亭きっての謎、パーヴィスの私生活は? 結婚しているの? その謎がなんとおしゃべりな女とその語数計測器によって解明されようとは!?
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「白鹿亭綺譚」です(・∀・)
本作は今までとは違い、とんでもなく遠い未来でもなく、滅亡した未来でもなく、時間軸は現代で普通にある世界の話です。
場所も火星や土星や異星ではなく、テームズ河のどこかのパブ《白鹿亭》。
現代のわたしたちと似た立ち位置にいますね。
本書はその白鹿亭の毎週水曜日の夜に語られる奇妙な奇妙な物語の欠片たち。科学と化学と物理。ぷっと笑えて、ちょっとぶるっと身ぶるいして、最後はパーヴィスの意味深な言葉で幕。
このパーヴィスという男が白鹿亭で語られる話以上に謎な男。色々な経歴を持ち、色々な経験を持つが、どこまで真実なのかどこまでホラなのか分からない話を聞かせます。話し上手を自他ともに認めています。そして最後の意外な幕引きには唖然、絶句。
さて。わたし、このパーヴィスの話を聞きながら「どこかでパーヴィスみたいなのに会ったことあるなぁ」と思いました。さらに同じような形式の話を読んだことがあるなぁ。とも。読んで分かりました。あれだ。「ユニオン・クラブ綺譚」のグリズウォルドだ!!
話を聞いてもらいたくてたまらないところや、もったいぶるところが似てる! 話の進め方もおなじだし! 「ユニオン・クラブ綺譚」は推理がテーマだったけどSFもあったし、決定的に違うのは作者ぐらいだ!←
でもこういう集まりって楽しいよね。良いなぁ……自分も行きつけの店でこういう集まりに入りたいところです。まずはその店を探さないとダメですが( ̄▽ ̄;)
「白鹿亭綺譚」でした(・∀・)/
次はジュナとチャンプ、またまたお出かけでしょうか??(*^o^*)/~