アイザック・アシモフ No.31◇ユニオン・クラブ綺談◇ | 星よりも大きく、星よりも多くの本を収納する本棚

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君にこの謎が解けるか? アシモフとグリスウォルドからの30の難問!

 
 
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◇ユニオン・クラブ綺談◇ -The Union Club Mysteries-
アイザック・アシモフ 池央耿 訳
 
 
クラブの談話室で三人のメンバーが雑談に花を咲かせていると、傍らで微睡んでいたグリズウォルドがやおら目を覚まし、奇想天外な挿話を語りだす。優れた洞察力で事の真相を見抜いたという自慢話に終始するのだが、聞いている三人には皆目見当がつかない。さて、賢明なる読者は如何? アシモフが満を持して読者に挑戦する30の難問奇問。
 
 
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1.逃げ場なし
   (No Refuge Could Save)
   ……「当のスパイどもからしてからが、スパイのことは何も知らないのだから」
 
 
2.電話番号 
   (The Telephone Number)
   ……「以前の仲間に、どんな番号も一度見たら忘れないという男がいたよ」
 
 
3.物言わぬ男たち
   (The Men Who Wouldn't Talk)
   ……「指導者というのは、時に誰か分からないことがある。そんな場合はどうするね?」
 
 
4.狙撃
   (A Clear Shot)
   ……「だからきみたち三人は安心だろうが、わたしは一度テロリストに狙われたことがあるよ。あれは一九六九年……」
 
 
5.艶福家
   (Irresistable to Women)
   ……「わたしは女が靡かずにはいられない男というのを知っているよ。魅力があるなしの話じゃあない。ただそこにいるというだけでまわりに女が群がってくる人物だった」
 
 
6.架空の人物
   (He Wasn't There)
   ……「ある意味では、現代のほうが姿を隠すのはやさしいと思うがね。最近の社会はとみに雑多になっているし、人間はますます自分のことしか考えなくなっている。人間同士の繋がりが稀薄で、ただ機械的に動いていく社会の中で、人一人がひっそり姿を消したところで誰が気に懸けるものかね。以前わたしの役所で、もともといもしない人間を血眼で捜したことがあったけれども」
 
 
7.一筋の糸
   (The Thin Line)
   ……「わたしがこの国から一歩も出たことがないと思ったら大間違いだ」
 
 
8.殺しのメロディー 
   (Mystery Tune)
   ……「もちろん、犯人が報いを受けることを願っているさ。ただし、警察の手によってではない。ギャングの復讐に期待をかけるのだよ。その方が確実だからね。暗黒街には沈黙の掟というものがある。これが守られなければ彼らの実態は明るみに出て、暗黒街は具合の悪いことになる。いつだったか……
 
 
9.宝さがし
   (Hide and Seek)
  
……「きみたち、当てこすりを言ってわたしから何かを聞き出そうとしているらしいが、それは時間の無駄というものだ。今の話にしても、ことは法律の問題であるよりも、思慮分別の問題でね。これは国家の安全にかかわることであると判断を下せる人間から然るべき指示が出ていれば、家宅捜査ぐらいで咎めを受けることはなかったはずなのだよ。令状がなかったことよりも、きちんと権限を掌握していなかったところに間違いがあるんだ。いいかね、きみたち。組織にとっては法的規制よりも、そこにいる人間の精神構造のほうがはるかに厄介な首枷である場合がある。組織というものは、時に愚者の集団だからねぇ。例えば……」
 
 
10.ギフト
   (Gift)
 
……「暗号などというものは、どだい無用の長物だよ。頭の切れる人間なら、平文でメッセージを送って暗号以上に人を困惑させることができる。ただし、受け手が同じように頭の切れる人間であれば、たちどころにその意味を読み取るはずだがね」
 
 
11.高温 低温 
   (Hot or Cold)
 
……「耄碌の話でぱったり声が止んだところを見ると、どうやらきみたち、その鈍い頭でわたしのことを考えているな。それは無駄というものだ。きみたちから見れば、わたしの明晰な頭脳は驚嘆の的でもあるだろう。しかし、君たちはどんなに長生きしたところでわたしのような知者にはなれないと知るべきだよ。もちろん、人間はいつか不老不死を実現するかもしれない。あるいは、少なくともいくらかはその可能性に近付くだろうね。いや、案外すでに実現されているのかもしれないんだ。ただ、これについては……」
 
 
12.十三ページ
   (The Thirteenth Page)
 
……「わたしはすでに隠居の身だからね。わたしの現役時代にもずいぶん失敗があったよ。特に異例の状況で、わたしに声がかかるのが遅きに失したような場合にね。例えば……」
 
 
13.1から999まで
   (1 to 999)
 
……「わたしにとって何よりも忘れ難い今際の手掛かりは、殺しとは全く関係がなかったよ。自然死だったし、そのヒントというのがちょっとした罪のない悪戯だったからね。しかし、そんな話できみたちを退屈させることもないだろう」
 
 
14.十二歳 
   (Twelve Years Old)
  
……「十二歳の利発な子供は、こっちが知的に同じ水準であるとわからせることができれば、実によく話が通じるよ。ということは、まず、きみたちには無理な注文だろうがね。わたしの場合は……」
 
 
15.知能テスト
   (Testing, Testing!)
  
……「情報の仕事に優秀な頭脳はまず必要がないからだよ。情報工作というのは、あらかたは気が遠くなるばかりの退屈で地味な仕事でね、工作員はひたすら与えられた役割を忠実に守らなくてはならない。それには埋没の精神を持った感受性の鈍い人間のほうが向いている。実際、わたしの知っている最も優秀な工作員は薄のろを絵に描いたような男だったよ。その男が、ここぞというところでわたしを試験したのだ」
 
 
16.アプルビーの漫談
   (The Appleby Story)
  
……「きみたちはどうしてその二種類の犯罪が、どこまで行っても別物だと思うのかかね? 性質のいかんにかかわらず、犯罪は犯罪を呼ぶものだ。わたしはかつてそういう例に出交したことがある。もっとも、きみたちには興味のないことだろうがね」
 
 
17.ドルとセント 
   (Dollars and Cents)
  
……「場合によっては情報管制を破らざるをえない状況がある。夕方のラッシュアワーにホテルを一軒空っぽにして、街じゅうの消防自動車を動員しなくてはならないという時に、どうしてそれを秘密にしておけるものかね?」
 
 
18.友好国 同盟国
   (Friends and Allies)
  
……「いや、つまりね、イギリスにはイギリスの行き方があるということだよ。(中略)アメリカにもアメリカの行き方がある。二つの道は平行に走っているかもしれないが、決して同じ一本の道ではないのだな。その意味では、非友好国だの、敵国だのいうものもない。その時々の食い違いでしかない」
 
 
19.どっちがどっち?
   (Which is Which?)
  
……「わたしは一度、私人による逮捕というのをやったことがある。警察官もその場にい合わせたのだがね、手も足も出なかったよ」
 
 
20.十二宮
   (The Sign)
  
……「あにはからんや、星占いにまつわる話ならお誂え向きのがある。五十セント払いたまえ」
 
 
21.キツネ狩り
   (Catching the Fox)
    ……「そうではない。ただ、その筋から相談を受けたことがあるだけだ。わたしはあちこちから協力を求められたからね。麻薬取締極もそういう中の一つだったにすぎない。どうせきみたちには関心のないことだろうがね」
 
 
22.組み合わせ錠
   (Getting the Combination)
  
……「ゼロ(zero)があるだろう。ひとつ、数字にまつわる話を聞かせるとしようかね」
 
 
23.図書館の本
   (The Library Book)
  
……「わたしも貢献者の一人だ。(中略)マイクロチップの開発に貢献した一人だと言っているのだよ」
 
 
24.三つのゴブレット
   (The Three Goblets)
  
……「老ぺてん師としては、そんなことを信じるのはよっぽどご念の入った無知蒙昧な人間だけだと思っているよ。まぁ、きみたちはその資格充分だがね……。警察はきちんと機能している。それは今も昔も変わりない。ただ気の毒なことに警察の犯罪捜査というものは九十九パーセントが地味で目立たない、しかも、報われない、型に嵌った日常作業なのだね。ごく稀に、輝ける頭脳の閃きに俟たなければ解決しない事件がないでもない。そこで初めて能力のある個人が正当な評価を得るのだよ。例えば……」
 
 
25.どう書きますか?
   (Spell It!)
  
……「影……シャドウは警察を意味するから、何か警察に知られたくないことがあったのだろうと想像するがね、それだけでは若い二人が何を言い合っていたのか、わたしには見当が付きかねるよ。たしかに、わたしはこれまでにいろいろと不思議な場面に出交したことがある。裏があるというか、特に犯罪が絡んでいるわけではないにしても、どうもおかしいという状況も多々あった」
 
 
26.二人の女
   (Two Women)
  
……「しかし、まあ、たいていはわたしが助け舟を出すのだがね。その反対はめったにない。つい数年前にわたしのほうから警察に協力を求めたことがあったけれども、どうせきみたち、聞きたくもないだろう」
 
 
27.信号発信
   (Sending a Signal)
  
……「いくらきみたちだって、多少は現実の世界というものを知っているだろう。人の言葉、動作、わずかな筋肉の痙攣からわずかな舌のもつれに至るまで、すべてこれ信号ならざるはない。こんなことは何も今にはじまった話ではないよ。きみたち、まさか人は正規の言葉だけで石を疎通すると考えているわけじゃあないだろうね。賢い人間は何事によらず、解釈ということを知っていなくてはならないのだよ」
 
 
28.音痴だけれど
   (The Favorite Piece)
  
……「わたしが音痴であろうとなかろうと(中略)サー・アーサー・サリヴァンの思い出に経緯を表する者は、その作品を汚すような真似をしてはならないことに変わりはない」
 
 
29.半分幽霊
   (Half a Ghost)
  
……「時折、拝み倒されてね。そういえば、幽霊の尻尾を捕まえたことがあるよ。幽霊というほどでもないかも知れないが、まあ、半分は幽霊だ」
 
 
30.ダラスのアリス 
   (There Was a Young Lady)
  
……「その中で、人はそれぞれケース・バイ・ケースで状況に対処していかなければならないのだよ」
 
 
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「ユニオン・クラブ綺談」です(・∀・)
アシモフの推理小説短編集です。
 
 
雑誌「ギャラリー」というお色気雑誌の連載小説として掲載された作品を集めたものです。ユニオン・クラブのメンバー3人と戦争中、諜報機関で活躍したらしい老人グリスウォルドが主人公です。
 
 
この作品たちは「黒後家蜘蛛の会」と同じ時期に書かれたのですが、この話が書かれている間、「黒後家蜘蛛の会」の執筆は止まってしまいました(両方やることはできなかったんですね……)。おかげで黒後家蜘蛛の会ファンから心配の手紙が殺到したとか。黒後家蜘蛛の会ってこの時、超人気だったんですね……
 
 
というか多分、ユニオン・クラブ綺談のネタで黒後家蜘蛛の会、書いてよ! と思ったファンもいたと思います。自分もちょっとそう思ったし(苦笑)
 
 
そんな本書はユニオン・クラブを舞台に3人の若者が老人グリスウォルドの過去話を聞く形で進行します。
しかしこのグリスウォルド、3人の若者をこき下ろしたり、話を勿体ぶったりとなかなか曲者です。
ヘンリーとは大違いだ……! まぁ、ここで人物像が似ていたらユニオン・クラブ綺談の意味がないですね。 
 
 
でも決定的に違うのはそこだけで類似点の方が多いんです。
舞台は閉鎖的な場所ですし、登場人物も限られています。てか4人以外は過去の人物ですし。話パターンも決まって若い3人が話をしているところで微睡んでいるグリスウォルドが起きて過去の冒険話を聞かせる。という形です。
 
 
事件内容は主にスパイ、諜報、冒険ものですが、真実はほんのちょっとした閃きの中にあるんですね。こんな簡単なことだったんだ!? と言わずにはいられません。
 
 
「ユニオン・クラブ綺談」でした(・∀・)/
次はエラリー・クイーンでエドワード・D・ホックが登場します(*^o^*)/~