アン・ペリー No.3◇娼婦殺し◇ | 星よりも大きく、星よりも多くの本を収納する本棚

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9年間の海外古典ミステリ読破に終止符を打ちました。

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娼婦殺しの裏に上流階級ありーーー警視ピットと妻シャーロットたちの活躍!

 
 
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◇娼婦殺し◇ -Pentecost Alley-
アン・ペリー 浅羽莢子 訳
 
 
ヴィクトリア朝のロンドンの貧民街で娼婦が絞殺された。現場から「フィンレイ・フィッツジェイムズ」という名が刻まれたバッジとカフスボタンが発見された。大物銀行家の一人息子フィンレイの犯行か? 上流階級を巻き込んだ怪事件の捜査にピット警視がのりだした。容疑を否認するフィンレイの周辺を探りながら、事件の核心に迫る。イギリスの人気作家がピット警視夫妻の活躍を描く歴史ミステリー・シリーズ初登場。
 
 
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娼婦の遺体に上流階級の名前が記されたバッチとカフスボタンが見つかったーーーそう言われてピット警視は娼婦殺害事件に関わった。ピット警視は立場ゆえに貴族、上流階級が関わる政治的に厄介な事件でないと調査には乗り出さないからだ。
 
 
記された名前は〈業火クラブ〉というクラブ名と大物銀行家の息子の名前だった。もちろん、本人フィンレイは否定し、クラブのメンバーも解散したゆえにバッチの行方は知れない。ピット警視は娼婦たちやその周囲の人間から粘り強く聴き込む。
 
 
一方、フィンレイの妹タルーラは兄の無実を信じるが、アリバイの立証がもはや出来ないことに悩んでいた。そんな彼女と知り合ったエミリーはなんとかしようとバッチを偽造してしまう……
 
 
果たしてフィンレイの無実は証明され、娼婦殺しの犯人は捕まり、処刑されたーーーと思った。第2の娼婦殺しが起こるまでは!
 
 
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「娼婦殺し」です(・∀・)
相変わらずジュナとチャンプはやって来ず、読書の循環は寄り道中。まぁ、それも一興です。この機会に再びアン・ペリーです。
 
 
本書はモンク警部とは別の警察官、ピット警視シリーズの1冊です。舞台はヴィクトリア王朝後期のロンドン、主人公はピット警視と奥さんシャーロット、さらにその妹で社交界で顔が広いエミリーたち家族、身内とあとその他たくさんの知り合いが話を盛り上げます。
 
 
ピット警視はモンク警部と違って愛する奥さんと子どもがいて、身内とも仲は良好だし、上司との仲も悪くないです。てんで正反対ですね← でも2人とも警察官として揺るぎない信念と人間性を持っています。
またピット夫妻の活躍! という割にはシャーロットの活躍少なくないか? と思いましたが、終盤にでっかい花火を打ち上げます。ヴィクトリア王朝時代にしては型破りな夫婦ですが、めっちゃカッコいいです。シャーロットはシャーロットで手がかりを掴むところが! 
 
 
そして。ピット警視もまた上流階級というしがらみに雁字搦めにされます。もうマジで面倒くさい! その一方、社交界のエミリーとタルーラが身を投じる展覧会、博覧会、品評会はまさにリアルです。このリアルさと生々しさがペリー作品の醍醐味です。
 
 
事件の真実にガツンと来ました。こう来るか! こんなミステリーを書きたい! と思いましたよ!
……とはいえ、本書もやはり上流階級の闇部を見ました。大英帝国の1%にも満たない上流階級。その特権を振りかざしての傲岸不遜の振る舞い、その代償、その代償の払い方……あまりにも身勝手すぎて虫酸が走る!
「縛り首にされる!」……今の君ほどそれに似合うものはないよ! そもそもあの時ならなかったのが忌々しいぐらいだよ!!
あーもう! 真相はこんなに胸糞悪くて重苦しいのにそこに至るまでページをめくる手は止まらない!
 
 
ペリー作品を通してみると、ほとんど上流打撃や報いを受けますが、そこには何か意味があるのでしょうか……ニュージーランドでの一件がまだ彼女を苛んでいるのでしょうか……ふと、女友達との仲を引き離そうと1番躍起になったというカンタベリー大学長の父親の姿が、世間体を気にしてあらゆる隠蔽工作を行った上流階級の当主と重なりました。
 
 
 
このシリーズは英国では相当人気があるらしく、本書はなんと16巻目。日本では本書と「十六歳の闇(シリーズ6巻目)」しか出ていませんが、96年ならいざ知らず、今の日本ではヴィクトリア王朝時代は人気があるので翻訳されるのも高望みでないと信じてます! せめて「カーター街のの首吊り人」だけでも!
 
 
「娼婦殺し」でした(・∀・)/
次回もアン・ペリーです(*^o^*)/~