貫井徳郎「悪党たちは千里を走る」
私は毎朝時計替わりにテレビをつけます。
大抵どの局でも似たようなニュースを似たような切り口で似たような時間帯に放送を
していますよね。ここ数日だと記録的豪雪とライブドアショック。
そして明日の朝はホリエモン逮捕のニュースがトップの話題になるでしょう。
それにしても、昨今は本当に悲しいニュースが続いています。
幼い命を殺める事件も多くあります。
どんな事情があるのか知らないですけど、人の命の終焉に他人が関与しちゃいけないと
思います。本当に。
さて。今日ご紹介するのは、詐欺師3人組の話。
彼らはそれぞれの手口で詐欺を働いていますが、互いが騙すつもりの地方のとある屋敷で鉢合わせ。
そんな不思議な縁?は、ある少年との出会いにより、1つの作戦を練ることになります。
それは「人道的且つ絶対安全な」誘拐!
悪党たちは千里を走る | |
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<登場人物>
1:「徳川埋蔵金もびっくりなお宝を発掘するから是非援助を!」
巧みなトークで地方成金を唆す男性詐欺師(+とその助手。少々頼りない)
2:男性詐欺師曰く「カラーコピー」であるリトグラフを売りつけ、
小金を稼ぐ超美人詐欺師(でも少々トウが立ってきた。今一番言われてむかつくこと)
3:見るからにお金持ち、そして非常にクレバーなご子息。
まじめでけちな父親とペットへ無類の愛情を注ぐ母親へは愛想をつかし気味。
この3人が企てていたのは「狂言誘拐」。
でもちょっとした手違いから、何故か少年は本当に誘拐されてしまった!
警察や親に真実をばらしたら少年の命はない。
成功しても取り分なし、失敗したらその罪は全て彼らの頭上に降ってくる!
そんな中、詐欺師たちが企てた計画とは...。
著者貫井氏は「慟哭」でデビューした作家さん。
個人的な印象としては社会問題なんかを巧みに取り入れた作品を生み出す作家だなぁと思っております。
そういう意味ではこの「悪党たちは千里を走る」も昨今の情勢を映しているのかもしれません。
またはずれが少ないなぁという印象もあります。
それにテーマは重かったりして、ずしっとくる文体が非常に好きです。
そんな彼の新作ですが。
ちょっとテイストはいつもの感じをイメージしていると肩透かしを食らうかも。
非常にポップで軽い印象を受けます。
対した恩もないし、そこまで義理堅くもないと自負している主人公の男性詐欺師が
少年を助け出す為に半ば強制的に救出劇に足を踏み入れるあたりも、なんとなく薄い情景が
目に浮かんでしまいました。
主犯も、ある程度感のいい人であれば、中盤あたりで気づくのでは?
でも、苦しくないミステリーです。
純粋に「ああ、ここに気づいて!」と思いながら本を読み進めるパターンかもしれません。
ミステリー好きな方が読みながら犯人を追いつめるイメージを描くにはちょうどいいかも。
なにより、主人公のキャラがリアルな人の心を移しているのかもしれません。
最近はちょっとさわやか路線を狙っているのか、明るい文体のものが多いような印象を
受けますが、皆さんどうでしょうか?
こういったものが好きな方には、オススメかもしれません。
何しろ、傷つく人がいない話ですからね。(犯人?まーそれはおいておいて)
重い貫井徳郎に出会いたい方は、過去作品をどうぞ!