パーク・ライフ / 吉田修一 | 活字中毒

パーク・ライフ / 吉田修一

第127回芥川賞受賞作です。吉田修一さんの作品は初です。図書館で芥川賞等の賞を受賞した作品をずらーっと並べて飾ってあり、この本の表紙の雰囲気が気に入って手にとってみました。


この本には表題のパーク・ライフとflowerの2作品が入っています。賞を受賞した「パーク・ライフ」は主人公が電車で知り合いと間違えて知らない女性に話しかけてしまったところから始まります。とっさの機転でまるで知り合いだったかのように相槌をうってくれた彼女と偶然再会したのは、いつも仕事の途中で休憩に行く日比谷公園。名前も知らない彼女と会えるのが楽しみになり・・・。

パーク・ライフは、主人公の生活の一瞬を切り取ったような作品です。何も大きな変化や展開もなく話が進められていきます。でも、そのストーリーはとてもリアルで、なんだかちょっと不思議な笑いが含まれている感じ。そうですねぇ、笑いといっても明るいやつじゃなくて「くすりっ」と笑う程度のものかな。出会った見知らぬ男女が恋愛関係になり・・・なんてありきたりの展開になるのか、ならないのかすら最後までわかりません。なにかが始まったのかなー、始まってないのかなーという程度の関係のまま終わってしまいます。なので、実は私は初めて読んだとき「なんだ、この本??」と不思議な気持ちになりました。でも、しばらくおいてから再読してみたら、なかなかおもしろい。淡々としていて、不思議な面白さでした。出てくる人間がみんな不思議な雰囲気なんです。特別変な人たちというわけじゃないんですよ。でも、なんだか独特の世界をもっている気がします。


ちなみに「う~ん、まさにを切り取ったような作品だぁ」と感じたのは、主人公の受信したメール。主人公の分身が旅をして、あちこちからメールをくれるという話があるんです。これ!私がまさに数年前に遊んだネットサイトだったので懐かしいぃぃぃ♪と叫んでしまいました。美穂の旅 というものです(久しぶりにサイトをみたら、まだあってびっくりです)。この作品が書かれたのが平成14年で、今から5年ほど前。私が遊んでいたのっていつ頃だったかしら・・・なんてことを考えてしまいました。


デビュー作の「最後の息子 」という作品は、私の大好きな山田詠美さんが絶賛していたと本に書いてありました。今度はこれを読んでみようかなぁ・・・。


タイトル:パーク・ライフ
著者:吉田 修一
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