地下鉄に乗って / 浅田次郎 | 活字中毒

地下鉄に乗って / 浅田次郎

2006年秋に映画公開された「地下鉄(メトロ)に乗って 」の原作です。堤真一、岡本綾、常盤貴子、大沢たかおがこの作品の4人の主要人物を演じています。映画の告知を見たとき、このタイトルに記憶があるなぁと思っていたのですが内容が思い出せませんでした。そこでさっそく図書館でチェック。読み終わったらやはり再読でした。途中から内容を思い出しましたが、それでも楽しく読むことができましたよ。


この本は現代、そしていくつかの時代の過去で構成されています。

主人公・小沼真治は1代で大企業を築き上げた父・佐吉に反発して、高校生の時に縁を切って家を出ている。ある日、久しぶりに出席した同窓会の帰り道、真治は永田町の駅で地下鉄を待っていた。事故のため列車が遅れることになり、違う線で自宅へ帰ろうと永田町の駅構内を歩いていると見知らぬ出口があった。気になり昇ってみると、そこは昭和39年の東京・新中野の駅だった。そして、その日は偶然にも死んだ兄の命日。地下鉄へ飛び込み自殺をする直前の兄と会うことができた。

その後も真治は愛人であるみち子と共に、幾度となくタイムトラベルをするようになる。時代は様々で戦時中や戦後など。そこで真治は若かりし頃の父と出会い、初めて父の気持ちや、真実の姿を知ることになる。


この本で真治とみち子は若かった頃の自分の親に会うんです。昔、両親がどんな人間だったのか、そして嫌っていたはずの父が実は自分が思っていた人間とは違っていたとしたら・・・。自殺してしまった兄に会うことができ、自殺を止めることができたなら・・・。誰しも持っている「過去に戻りたい」と思う瞬間へ、真治とみち子は時空移動しているんです。


確かに過去のあの瞬間に戻れたらなぁって思うことはあります。でもね、この本を読んで感じたのはやっぱり運命は変えられないんだろうなぁというのが私の結論。過去を変えようと努力したって、多少の変化はあってもやっぱりなるようにしかならないんですよね。あとは自分が真実を知ってどう生きてくのかというのが問題。だけど、それだって必ずしも真実を知ることが良いこととは限らないわけです。だから、やっぱり過去に戻るなんてこと、考えちゃいけないんだなって思いました。


あなたは父になる前の父親を知っていますか?

あなたが生まれる前の母親に会いたいですか?


これは映画の公式サイトで表示されたメッセージです。

私はNO。

好奇心という意味では覗いてみたい気がするけど、それは父と母だけの思い出。

私が覗いてはいけないもののように感じます。

あなたは覗いてみたいですか?


タイトル:地下鉄(メトロ)に乗って
著者:浅田 次郎
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