狂王の庭 / 小池真理子 | 活字中毒

狂王の庭 / 小池真理子

昭和27年、東京都の下国分寺で広大な敷地に全財産を投じて華麗な西洋庭園を造った男・青爾。それも婚約者の姉である人妻・杳子にささげるためだけに。そしていけないと知りつつ、恋に落ちていく2人。あぁ、ここにも恋にどすんと落ちてしまった人間がいた。それも、とてつもなく深い深い恋に落ちてしまった感じ・・・。


青爾は旧侯爵家の流れをくむ財閥の御曹司で、ちょっと変わり者だと言われていた人。でも、とてつもなくいい男で誰もが見とれるタイプ。そんな青爾が人妻の杳子に一目ぼれしてしまい、彼女に一瞬でも会いたくて、たまたま持ち上がった杳子の妹・美夜との婚約話を受けてしまうんです。悲惨なのはその妹の方ですよね。もちろん青爾はものすごくいい男だから、美夜も一目ぼれするんですよ。だけど美夜がいくら好きになっても、青爾の心は揺れ動いてくれないんです。まさか婚約者が、自分の姉に恋をしているなんて疑いもしませんよね。杳子も最初は拒否しているんですけど、そんないい男から「あなたのために庭を造っている」なんて言われて愛の告白をされちゃったら、やっぱり女心は揺らぐものです。次第に本格的に青爾に惹かれていくんです。


青爾と杳子がはまってしまった恋は、夫だけでなく姉妹や親戚までもを裏切れるほど深いものだったんでしょうね。とても深い、でも静かな大人の恋です。あんな風にくどかれてみたい・・・と思わせる素敵な恋愛小説でした。恋愛物にどっぷりひたりたくなったら、ぜひ読んでみてもらいたいかも。

タイトル:狂王の庭
著者:小池 真理子
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