ネバーランド / 恩田陸 | 活字中毒

ネバーランド / 恩田陸

ネバーランドと聞いて想像したのはピーターパンのお話。大人になりたくなくてネバーランドにい続けるピーターパンと、大人になるために戻っていったウェンディ。この本のネバーランドはいったいどんなところなんだろう・・・とピーターパンを想像しながら読み始めました。


お話は、とある伝統的な男子高校の寮でおこった冬休みのできごとです。みんなが自宅へ戻っていく中、それぞれ事情をかかえた4人(寮生である美国、寛司、光浩に加えて、近くの自宅で1人暮らしている統)が寮に残ります。広い寮にたった4人で1週間。自由にのんびり過ごすはずだったのですが、イブの夜に始めた告白ゲームをきっかけに謎がの事件がおこります。そして、それぞれが隠していた秘密が次第に明らかになっていく・・・。


この4人はそれぞれ自宅に帰りたくない理由をかかえています。みんな細かくは違うけど、大雑把に分けると保護者が原因。


この中で美国のキャラクターが一番普通だったかなぁと私は感じています。そうですねぇ、普通キャラといってしまうと変かもしれませんが、やっぱり一番普通だったと思います。寛司はどちらかというと運動神経の良い人気者、光浩は勉強もできるし、少し大人びていて「あいつすごいよな」とちょっと一目おかれる存在。そして、統はおちょうしもので、やりすぎてみんなに引かれちゃうタイプ。こんな4人が1週間を一緒に過ごすんですけど、特別親しかったわけではない4人が、寮で過ごす冬休みという特別な空間のなかで急激に親しくなっていくんです。それはなんとなく懐かしい高校生のやりとり。親のこと、恋のこと、未来のことなど。夜にお酒を飲みながら始めたゲームの罰として、告白ゲームを始めるんです。これもなんだか高校生っぽいですよね。でも、中身はとても深刻。明るく見えた少年たちの本当の心の傷をお互いに見せ合うことで絆がとても深まっていく姿は、う~ん青春だわって感じです。見せ合うには光浩の傷はちょっと深すぎますが・・・。(^_^;)


彼らはピーターパンではなく、ウェンディでしたよ。少しづつ理不尽な気持ちと戦いながら大人になろうと努力している姿が見えて、とてもかわいらしい少年たちでした。読んでいて、ノスタルジックな気持ちと、彼らが大人になろうと努力している姿を微笑ましく見守った気持ちでいっぱいになります。きっとこの1週間は彼らにとって、一生の中でかけがえのないものになっただろうなぁ。

タイトル:ネバーランド
著者:恩田 陸
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