家守綺譚 / 梨木香歩 | 活字中毒

家守綺譚 / 梨木香歩

この話は100年ほど前のお話。主人子の綿貫はあまり売れていない物書きです。湖でボートに乗っているときに行方不明になってしまった友人「高堂」の父親に頼まれて、空き家になった高堂家に住むことになります。その旧高堂家には様々な木々・花々が植えられており、池もある立派な庭があるのですが、その庭の木や池に来た河童などと主人公が交流する様子がほのぼのと描かれています。


木が話しかけてくる、死んだはずの友人が家の掛け軸から現れる、池に人魚が現れる、タヌキに化かされるなど。現代ではおとぎ話と言われてしまいそうなことが、次々に主人公の周りで起こります。隣家の主婦や周りの人間もそれを当然のこととして受け止めている辺りが時代の違いなのかもしれません。現代と違って河童や人魚の存在・木々は生きているということが普通に受け止められ、生活に溶け込んでいた時代のよさを感じます。貧乏だけど、とてものんびりした雰囲気の中で暮らす主人公がうらやましくなるような作品です。


時代感を出すためなのか、古めかしい文体や難しい漢字が文中に出てきます。が、それもこの作品の雰囲気を作っているような気がします。ドキドキワクワクするような本ではありません。でも「日本ってやっぱりいいなぁ」とノスタルジックな気分にさせてくれるような本です。


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*村田エフェンディ滞土録

*りかさん


著者: 梨木 香歩
タイトル: 家守綺譚

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