1回目の血液検査の結果は陰性だった。
でも、まだ血液検査をするには早すぎたのかも知れないと、また採血された。
こないだ採血をしてくれた先生ではなく、この日は院長と話しをした。
「風疹の抗体は出来ていないけど、きっと風疹でしょう。」
と。
「風疹にかかると、たぁたんさんの週数(7週)だと、80%の確率で『先天性風疹症候群』と言って、目・耳・心臓に障害のある子が生まれます。」
と言われた。
目は白内障、緑内障、耳は全く聞こえないか、殆ど聞こえない。ということ。心臓に関してはどんな障害かは言われなかった。
「産むか産まないか、ご主人と相談して下さい。産まないという決断をするなら、手術は早い方が母体の為にいいです。」
と。
「もし産むとしたら、ハイリスクになるんですか?」
この産院は受付に大きく『ハイリスク妊婦の受け入れはしていません!』と書いてある。だから、ふと気になって軽く尋ねた。
すると、急に院長の語気が荒くなった。
「こんなんハイリスク以外のなんでもない!目と耳と心臓に障害が出る確率が80%ってこの文献に書いてあるんですよ!?80%って、ほぼ100%だ!目も耳も心臓も悪い子どもをどうして産むのか!?こんなの、産む方がおかしい!私が貴方の旦那なら、こんなん絶対に産まさない!」
“まぁ、ご主人とよく相談して下さい。”とさっき説明された文献がコピーされた紙を渡され、次の受診日を指示されて、先生はさっさと部屋から出ていった。
何とか涙を堪えて、その部屋を出、次の診察を予約しようと予約機の前に立った。
次の受診の日は、丁度母親教室を予約していた日だった。
予約機で、母親教室の予約を取り消す。
次に、予約を取ろうとするけれど、予約の画面が出て来ない。
苛立ちと、さっきの院長の『産む方がおかしい!』の言葉が頭から離れない。
遂にこらえていた涙が溢れてきてしまった。
受付の人に
「予約が出来ないんですけど…!」
と泣きながら訴える。
ちょっと慌てながら、受付の人は
「午後からならいつでもあいてます。」
と言った。
「何時でもいいです…。」
どうでも良かった。
帰り際、その受付の人に
「おだいじに…」
と言われたけど、今、この子を殺せ!と言われたばかりなのに、「何が『おだいじに…』だ!」と思って、いつもなら「ありがとうございました。」と言って帰るけれど、その日だけは無言で産婦人科を後にした。
外は大粒の雨が降っていた。