【ほんとうのことしか知りたくない 子どもたち】

司書という職業柄、利用者の(本に関する)質問に答える場面は一日に何度もありますが、
勤め先で子どもたちから、ふいに、本当にふいにむずかしい問いかけをされることがよくあります。


彼氏にふられて落ち込む女の子は、涙目で問いかけます。

「好きと言ってくれていた人から好きと思われなくなるのはどうして?」

4人の9歳児がこちらの目を覗き込むように問いかけます。

「サンタクロースなんて、いないんだよね?」


予期せぬタイミング・数々の問いかけは、そのまま私自身への問いかけとなります。

子どもたちの目は「ほんとうのことしか知りたくない」と語ります。

彼らの納得する「ほんとうのこと」ってなんだろう?

ピリッとする瞬間。

どうする私?


* * * * *


先日「サンタクロースなんていないんだよね?」と問いかける子どもたちの顔を見て、『星の王子さま』の冒頭場面が頭をよぎりました。


不時着した砂漠の真ん中で目を覚ました飛行士に
「ね・・・・・・ヒツジの絵をかいて!」と話しかける星の王子さま。

王子さまには描かれるどのヒツジも気に入りませんが、なげやりになった飛行士が
「あんたのほしいヒツジ、その中にいるよ」と描く“箱”の絵に、はじめて

「こんなのが、ぼく、ほしくてたまらなかったんだ」と喜びます。


王子さまのヒツジは、王子さまにしか見えないヒツジでした。


* * * * *


「ほんとうのこと」しか知りたくない子どもたちに答えるべきは、私の思う「ほんとうのこと」なんだろうな。

これをあらためて認識させられる(テストのような)時間は恐ろしくもあり、でもやっぱり有り難いものだと思うのです。


(☆『星の王子さま』サン=テグジュペリ 作 内藤濯 訳 岩波書店)



絵本コーディネーター 東條知美