まず1つ目はカホル様のリクです。
“聖女か天使っぽいもの”でしたので、クリスマスも近づいてきてますし天使の話にさせていただきました。
最初はキョーコちゃん天使バージョンで考えてたのですが、思い付かずこういう話になっております。
カホル様、お気に召しましたらお持ち帰り下さいませ~。
ダメでしたら再チャレンジいたしますね。
願い事一つだけ
それはある日突然やってきた。
「こんばんは、キョーコちゃん。
俺は神様の使いの久遠だよ・・・今日は君の願いを叶えるためにやってきたんだ。
1つだけなら叶えてあげられるから言ってごらん?」
眩い光を身に纏い神々しい笑顔で空から降りてきた背中に羽が生えた男を、少女は動じることなく冷めた瞳で見つめながら口を開く。
「いえ、私には願い事などありませんから結構です。
わざわざご足労いただきありがとうございました。」
そう言い頭を下げて何事もなかったかのように歩き出そうとした後姿に向かい久遠は声をかける。
「小さい頃の君の願いは“お母さんに振り向いてほしい”で、その次は“ショーちゃんが私のことを好きになってくれますように”だったよね・・・。
いつしか叶わないことに絶望して諦めてしまったようだけど、本当はずっと心の奥底に閉じ込めてた願いがあるんじゃないのか?」
背中を向けたままその言葉を聞いていたキョーコは、何かを堪えるようにぐっと下唇を咬みしめた。
その脳裏には思い出したくもない過去が甦る。
仕事が忙しくて見向きもしてくれなかった母や、家政婦扱いした挙句あっさりと自分を捨てた昔好きだった幼馴染みのことなどが・・・。
彼女は首に巻いたマフラーに顔を埋めるように俯いてしまう。
「そうね・・・確かに昔は強く願えば叶うと信じてた・・・。
でもどんなに願っても叶うわけないって、それが間違いだって分かってからはそんな愚かな行為はしなくなったんです。
思いを込めれば込めた分だけ後が虚しいだけですから・・・。」
だから今の自分に願いなんてないと呟く姿を、久遠は苦笑しながら見つめ話し出す。
「君は本当に頑張り屋さんでいつも努力してきたよね。
素直で純粋で・・・作った雪だるまが解けて消えたことにも涙を流すくらい優しいのを俺は知ってる・・・。
そういうことだから俺の前で虚勢を張っても無駄だよ。」
「なっ、貴方何でそんなことを・・・。」
言われたことに驚き目を見開いて振り返ったキョーコに視線を合わせ、彼は慈しむような優しい笑顔になった。
そんな表情のまま話を続ける。
「それはね、俺がその解けて消えた雪だるまの化身だから・・・。
作る時に話しかけたりしてキョーコちゃんが愛情持って接してくれたおかげで魂が宿って、解けた後も神様の使いとして働けるようになったんだよ。
それからずっと君のことを見守ってたんだけど・・・どんどん感情を押し殺して人形のようになっていくのを黙って見ていられなくなったから神様に頼んで今夜こうしてやって来たんだ。
今の俺ならどんなことでも君の願いを叶えてあげられるよ・・・さあ望みは何?」
頑なに拒絶していた彼女が優しい声に促されるようにいつも胸に秘めていた思いを口にすると、宙に浮いている久遠の体が更に眩い光に包まれていく。
その輝きはすぐに収まり彼は地面に降り立ったのだが・・・。
先程までの綺麗な金髪と碧眼は漆黒の闇のような黒色に変わり、格好も白いローブのような服からコートを羽織った今風のものに変わっていた。
何よりも一番の変化は背中に生えていた羽が消えていることだった。
彼はそんなことにはお構いなしにキョーコに近づくとそっと抱き寄せて囁く。
「これで間近で見守ることが出来るようになった・・・君の願い通り俺が絶対に“ずっと傍にいて1人ぼっちにしない”から安心して・・・。」
抱きしめられた彼女はようやく強張っていた全身から力を抜くことが出来、彼の方に体を預けながら頷くと嬉しそうに微笑んだ。
すぐ傍でその愛らしい様を目にした元天使で現在人間の男は、一層笑みを深めて大切な存在を放すまいとするかのように両腕の力を強めるのだった。
天上でこの様子を見ているであろう神に感謝しながら・・・。
そんな2人の耳に“たまにはこういう奇跡もいいもんだろう”という笑い交じりの呟きが届いたのは少し後の話である・・・。
おわり
“聖女か天使っぽいもの”でしたので、クリスマスも近づいてきてますし天使の話にさせていただきました。
最初はキョーコちゃん天使バージョンで考えてたのですが、思い付かずこういう話になっております。
カホル様、お気に召しましたらお持ち帰り下さいませ~。
ダメでしたら再チャレンジいたしますね。
願い事一つだけ
それはある日突然やってきた。
「こんばんは、キョーコちゃん。
俺は神様の使いの久遠だよ・・・今日は君の願いを叶えるためにやってきたんだ。
1つだけなら叶えてあげられるから言ってごらん?」
眩い光を身に纏い神々しい笑顔で空から降りてきた背中に羽が生えた男を、少女は動じることなく冷めた瞳で見つめながら口を開く。
「いえ、私には願い事などありませんから結構です。
わざわざご足労いただきありがとうございました。」
そう言い頭を下げて何事もなかったかのように歩き出そうとした後姿に向かい久遠は声をかける。
「小さい頃の君の願いは“お母さんに振り向いてほしい”で、その次は“ショーちゃんが私のことを好きになってくれますように”だったよね・・・。
いつしか叶わないことに絶望して諦めてしまったようだけど、本当はずっと心の奥底に閉じ込めてた願いがあるんじゃないのか?」
背中を向けたままその言葉を聞いていたキョーコは、何かを堪えるようにぐっと下唇を咬みしめた。
その脳裏には思い出したくもない過去が甦る。
仕事が忙しくて見向きもしてくれなかった母や、家政婦扱いした挙句あっさりと自分を捨てた昔好きだった幼馴染みのことなどが・・・。
彼女は首に巻いたマフラーに顔を埋めるように俯いてしまう。
「そうね・・・確かに昔は強く願えば叶うと信じてた・・・。
でもどんなに願っても叶うわけないって、それが間違いだって分かってからはそんな愚かな行為はしなくなったんです。
思いを込めれば込めた分だけ後が虚しいだけですから・・・。」
だから今の自分に願いなんてないと呟く姿を、久遠は苦笑しながら見つめ話し出す。
「君は本当に頑張り屋さんでいつも努力してきたよね。
素直で純粋で・・・作った雪だるまが解けて消えたことにも涙を流すくらい優しいのを俺は知ってる・・・。
そういうことだから俺の前で虚勢を張っても無駄だよ。」
「なっ、貴方何でそんなことを・・・。」
言われたことに驚き目を見開いて振り返ったキョーコに視線を合わせ、彼は慈しむような優しい笑顔になった。
そんな表情のまま話を続ける。
「それはね、俺がその解けて消えた雪だるまの化身だから・・・。
作る時に話しかけたりしてキョーコちゃんが愛情持って接してくれたおかげで魂が宿って、解けた後も神様の使いとして働けるようになったんだよ。
それからずっと君のことを見守ってたんだけど・・・どんどん感情を押し殺して人形のようになっていくのを黙って見ていられなくなったから神様に頼んで今夜こうしてやって来たんだ。
今の俺ならどんなことでも君の願いを叶えてあげられるよ・・・さあ望みは何?」
頑なに拒絶していた彼女が優しい声に促されるようにいつも胸に秘めていた思いを口にすると、宙に浮いている久遠の体が更に眩い光に包まれていく。
その輝きはすぐに収まり彼は地面に降り立ったのだが・・・。
先程までの綺麗な金髪と碧眼は漆黒の闇のような黒色に変わり、格好も白いローブのような服からコートを羽織った今風のものに変わっていた。
何よりも一番の変化は背中に生えていた羽が消えていることだった。
彼はそんなことにはお構いなしにキョーコに近づくとそっと抱き寄せて囁く。
「これで間近で見守ることが出来るようになった・・・君の願い通り俺が絶対に“ずっと傍にいて1人ぼっちにしない”から安心して・・・。」
抱きしめられた彼女はようやく強張っていた全身から力を抜くことが出来、彼の方に体を預けながら頷くと嬉しそうに微笑んだ。
すぐ傍でその愛らしい様を目にした元天使で現在人間の男は、一層笑みを深めて大切な存在を放すまいとするかのように両腕の力を強めるのだった。
天上でこの様子を見ているであろう神に感謝しながら・・・。
そんな2人の耳に“たまにはこういう奇跡もいいもんだろう”という笑い交じりの呟きが届いたのは少し後の話である・・・。
おわり