ちまちまと書き溜めてようやく書きあがりました。
実はこれ、去年の年末から書き始めてたんですよね・・・。
中々思うようにはかどらずに時間がかかりましたが、ようやく完成しました。
全部で5話ですので、よろしければお付き合いくださいませ。
それではどうぞ。
Lv.1 下準備
その日も特に変わりなくいつも通りに終わるはずだった。
LME社内で、看板俳優がストーカーに狙われてケガをしたという噂が流れるまでは。
噂の出所は定かではないが、社内ではその話で持ちきりだった。
当然、ラブミー部員たちの耳にも入っている。
「聞いた?敦賀さんの話。」
顔を合わせた途端、千織が話を振った。
それに奏江か答える。
「今どこに行ってもその話ばかりだから、嫌でも耳に入るわよ。」
2人の会話はまだ続く。
「それって本当の話なのかしら?」
「さあ・・・どうだか。
でも、事務所内での話だから信憑性はあるんじゃないかしら。」
「う~ん・・・、あっそうだ。
ねえ、京子さんは敦賀さんと親しいのよね。
何か聞いてない?」
「・・・・。」
思い出したように問いかけた千織だが、キョーコには全然聞こえていないようだった。
その顔色は青くなったり土気色になったり忙しい。
しばらくその様を眺めながら覚醒するのを待っていたが、一向にその気配がないので2人は諦めて放っておくことにした。
「・・・ねえ、前から気になってたんだけど・・・。
京子さんってもしかして敦賀さんのことが好きなの?」
千織の好奇心丸出しの問いに、奏江は首を捻った。
「・・・それがよく分からないのよね。
あの子ってメルヘン思考のくせに恋愛を毛嫌いしてるでしょ。
自分じゃ絶対に認めないし、行動も突飛過ぎるから分析できないのよ。
私の勘では、惹かれ始めてはいるんじゃないかと思うんだけど・・・。」
何かが起これば案外すんなりとまとまるんじゃないか―
そんな風に話していると、ドアをノックする音が聞こえた。
返事をするとドアが開き、顔を覗かせたのは椹だった。
「最上さんはいるかい?」
開口一番の言葉に、キョーコ以外が反応する。
「いるにはいるんですが、この有様で・・・。」
「まだ戻ってきそうにないんですが・・・。」
指を指された方を見てキョーコの様子を確認し、椹は困ったように呟いた。
「・・・社長がお呼びなんだが、これじゃ無理かなあ。」
そんな椹の様子に、奏江は息を吸い込むと思いっきりキョーコの背中を叩いた。
「いい加減に戻ってきなさい!!
椹さんが困ってるでしょーが!!!」
その場の誰もが耳を塞ぐような大声で叫ばれ、ようやくキョーコが覚醒した。
「えっ、何々?!」
キョーコが回りを見回すと、奏江はやれやれとため息をつき千織はまだ耳を押さえている。
椹も耳を押さえていたがキョーコの様子に安心したように笑顔になった。
「おおっ、ようやく正気に戻ったか。
じゃあもう一度改めて言うが、最上さん。社長がお呼びだ。
一緒に社長室に来てもらいたいんだが・・・。」
キョーコは少し不安そうにしながらも、椹の後をついて行った。
つづく