「空蝉の唐織りころも
なにかせむ
綾も錦も
君ありてこそ」

どんなに艶やかな織物も
貴方様がいらっしゃって
こそのものですのに


夫、徳川家茂公を失い、
夫が持ち帰るはずだった京土産の反物を
遺品として手にした和宮が残した悲しみの句。

朝廷から武家へ降嫁という例なき花嫁・和宮。
屈辱で始まった結婚生活でありながら、夫への
愛情はホンモノだった。
後に京へ帰らず天璋院篤姫と共に徳川家を守り、
夫の菩提を弔った和宮。

はじまりは屈辱的な政略結婚。
婚約者は後に敵となり、母、夫、兄を立て続けに
失った和宮。

それでも夫を愛することのできた彼女は幸せだった
んじゃないかなとさえ思う。
女は政の道具でしかなかった時代に生きて、翻弄
されながらも激動の波を駆け抜けた。

この句は偽りなき彼女の想いが詰まってる。
切なさと過ごした時間の短かさへの悲しみが時代を
超えて伝わってくる。

今、家茂と和宮は隣に並んで眠っている。
死して一緒になることしか叶わなかった2人を
引き裂くものはもういない。