「桜姫」 新作映画 今日の試写室 | 永田よしのりの映画と唄と言霊と  映画批評と紹介記事など 

「桜姫」 新作映画 今日の試写室


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                C 2013「桜姫」製作委員会

「桜姫」


6月29日公開
95分
配給 SDP
監督 橋本一
出演 日南響子、青木崇高、麻美ゆま、徳井優、風祭ゆき、合田雅史ほか

 江戸時代の狂言作家・鶴屋南北の原案「桜姫東文章」をモチーフにして、現代風アレンジを施し、色味も派手にかなりマンガチックに構築した一本。
 舞台は江戸時代。名家の一人娘・桜姫は屋敷に家宝の掛け軸を盗みに入った男・権助に処女を奪われてしまう。だが、その夜のことと男のことが忘れられなくなった桜姫は家を出て、遊郭の遊女・風鈴お姫となってひたすら権助がいつか店にやって来るのではないか、と期待しながら幾千もの男に抱かれていた。やがて現れる権助。お姫の客となった権助はお姫の正体を知り、その短絡さに呆れながらも恋に落ちていくことに。
 「探偵はBARにいる」シリーズや、「相棒」シリーズの東映社員監督・橋本一が監督。時代劇ということから東映太秦出身の橋本が監督を担当することに。
 その世界観はこれまで橋本が担当してきたものとは全く異なるアバンギャルドなものに。
 その主役・桜姫を演じたのはモデルの日南響子。彼女自身こうしたコスプレのような世界観が好きで、まさに本作品への出演は願ったり叶ったりだったようだ。
 当然遊郭を舞台にした物語なので、濡れ場も多いが、そこはひと昔前のにっかつロマンポルノのような処理で想像させながら見せていく手法(人物の手前に何か置かれて肝心な部分が隠されているというような)が取られている。
 なので、全裸シーンを堂々と披露するのは、AV出身の麻美ゆまがメイン。
 かつてのにっかつロマンポルノ黄金期を支えた女優・風祭ゆきが出演しているのもロマンポルノ・ファンには懐かしいのではないだろうか。
 そうしたキャスティングもかなりマニアックに傾倒しており、真面目にふざけたものを作ろうという気概に溢れている。
 まあ、とにかく「ありえないだろう」という設定や展開で、この映画を観て「ふざけてる!」なんて怒ってはいけない。
 こういうアバンギャルドなものが好きな好事家は世にたくさんいるわけで、昔のミュージカル時代劇など(「鴛鴦歌合戦」という名作がある)は異端扱いされていたのだから。
 とにかく、生真面目に観ると、全てに裏切られるので、最初から〃トンデモ映画〃として認識した方が良いだろう。その世界観を楽しめる人には最近あまりない映画として貴重な1本になるだろう。