永遠のゼロで飛ぶための旅 フロリダ編その3 | ブルージェットの空からブログ|プライベートジェットの機長・航空会社社長ブログ

永遠のゼロで飛ぶための旅 フロリダ編その3

訓練は最終段階で、T6テキサンの教官席である後部座席での操縦過程に入った。


地上では前方が見えない。 実力の見せ所だ。零戦の免許を取得するには教官席の後部座席でのお手本のような操縦技術が要求される。アメリカは上級レベルになればなるほど格段に高いレベルをあたりまえのように要求される。出来ればすぐに上に進む、出来なければそれで終わる世界だ。


いよいよ、後席の教官席での試験になった。曲技も離着陸もすべての科目を実施する。

宙返りの頂点で背面飛行状態での失速は、前がまったく見えなくなるので注意が必要だ。


水平を示す計器はまったく役に立たない、方位もマグネティックコンパスのみで、液体の中にあるので振動で揺れてよく見えないので、コクピットにストップウオッチを貼って、速度と旋回角度で、旋回率を頭で計算しながら、自分の進む針路で水平飛行に戻す。前が見えないので、飛んだ時間、高度に対する速度を温度変化を加味して真対気速度を算出して、風を計算して、実際の対地速度を算出する。

日本の資格で言えば、プロペラ機の教官レベルの操縦教育証明のレベルが求められる。



キシミーエアポートから航法を開始する。24年前にあった群馬県の館林飛行場での関東地方で行った事業用操縦士の訓練が役立つ、関東地方を、原始的な航法計算で正確に飛ぶのは難しい。それと同じようにフロリダはどこも地形や景色が一緒なので、やはり基本の速度、時間、風を誤ると地図の判定も細かくないのでかなり狂ってしまう。



南に70マイルほど行ったバート飛行場で離着陸試験に入るが最終進入で飛行場が見えない。


世界大戦機の飛行機は尾輪式なので、通常現在の飛行機は3度の角度で進入するが、4度から最大6度の角度で進入する意味がよくわかってきた。


着陸は前輪2つをつけて、尾輪をつけずに連続離着陸に入る。スムーズなスロットル操作をしないとプロペラの回転ファクターで機体が左に曲がり、滑走路を離脱し、操縦不能になる。教官席での腕の見せ所だ。




着陸寸前一瞬、スロットルから手を離して、写真を撮った。前席パイロットのヘルメットの隙間から滑走路位置を把握して、横風が強いので機体が風見効果にまかせて傾いた状態から、ウイングローという手法で滑走路末端付近で機軸をまっすぐにさせて、接地に備える。前が見えないので、滑走路の両端が見える感覚を均等に保った場所が滑走路の中心線に機体がいるということを感じて操作する。


着陸後、「ヘイ、ヤングボーイ、インプレッシブ」教官から合格のサインを頂けた。

不思議と汗はまったくかいていない。訓練のたびにフライトスーツが徐々に汗で濡れなくなった。


教官はプレーンオブフェイムに電話してくれた。1月からのプレーンオブフェイムの2回に分けた訓練は必要ないということで、あとは最終訓練と、保険会社が要求する100時間のT6テキサンでの飛行時間を数時間満たすだけだ。






世界では5機の飛行可能な零戦が存在すると言われているが、そのうち4機はエンジンが違い、ほとんどの部分が設計図から新しく作られているので、世界的に本物は所沢に2年前に来日したプレーンオブフェイムの零戦52型の1機しか存在しない。


所沢に来た時も、日本人には操縦席には座らせなかった。


アメリカの財産、そしてアメリカの魂で大切にエンジンも当時のままで飛行を維持したこのゼロを、僕が操縦し、アメリカの空を飛ぶことを厳格に考えたい。


この飛行機の哲学と運命が、まさに自分の生き方のように哲学すると、この飛行が僕の人生の節目になると思っている。


誰のためでもない、僕は自分のために挑戦する。だから誰からもこの飛行の資金援助は頂かない。


強大な組織と大きな力が動き出した。そして、不思議な力が僕に味方している。


この飛行機の操縦席で何を見て、何を感じるのか。


名前は書けないが、僕を絶大に影から応援してくれている紳士に言いたい。


「お食事の御招待は、飛行後に、喜んで、私一人でお伺いします」


bluejet


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