永遠のゼロで飛ぶための旅 フロリダ編
世界で1機の栄エンジン搭載の零戦での飛行の実現が見えてきた。
感動が覚めないまま、フロリダオーランドに来た。P51マスタングを見ると胸が高鳴る。
フロリダの空は宇宙まで透き通るほどきれいな蒼い色をしている。
「ヘイ・ヤングマン!」「ヘイ・オールドマン!」
スティーブ教官との再会に固い握手をする。整備士から運航管理一同温かく元気よく迎えてくれた。
自分で作ったチェックリストを出して、緊急操作など最終確認に10分間集中した。
完全にすべて頭に入っている。
今日からはT6Gテキサンで訓練する。
この飛行機は操縦が難しい。
T6はタイプごとに計器の配置など様々違う箇所が多い。
パラシュートを装着し、上からシートベルトを締める。
グローブをつけるとき、計器を左から順に同時にチェックする。そして、左右の足の踏み具合などを確認する。
機体と同化した瞬間だ。
そして前輪で着地して、尾輪をつけないまま、再度離陸する連続離着陸を行う。
平均4Gから6Gの力が身体にかかる訓練に、教官のスチィーブは朝の4時に起きて体を調整してる。
背面飛行からの失速訓練は、回復操作を間違えるとエンジン停止の危険もある。真剣勝負の訓練になる。
機体が熱くならないように、エンジンスタートぎりぎりで整備士のグレッグがトーイングする。
気温は30度を超えた。風は南西15ノット。
今日でT6での離着陸が300回を超える。
今回は教官席、後席での曲技、離着陸まで実施する。
ゼロでの飛行が目前に見えてきて気持ちが違う。
パイロットをしてきて、いろいろな飛行機で空を飛んできた。しかし、ウオーバードと言われる第2次世界大戦の航空機は、パイロットを夢中にさせる魅力がある。究極の飛行機たちである。
大空を飛ぶということはこういう事だと身体で実感する。
お金で買える物はたくさんある。この飛行機もお金で買える。お金さえあれば何でも買える。
しかし、この大空を飛ぶための追及はお金では買えない。
壮大なるロマンを追いかけて、世界で1機、当時の本物の零戦52型が翼を休めて僕を待っている。
42歳の誕生日に、2015年4月にロサンゼルスで飛ぶスケジュールが決定した。
誰のためでもない、自分のために頑張りたい。
愛とは、自分を愛することだと思う。
bluejet