最近、社内の有志を対象に両眼視機能測定の勉強会を始めました。
それなりに経験を積んだ社員でも、プリズム処方苦手意識がある、もしくは
適当に感覚で入れているケースがあるようなので。

今回アップする内容は、その勉強会で使ったテキストを、閲覧・保存のためにそのままコピペしてます。
読み物としては全くおもしろくありませんので、興味のない方は読み飛ばしてください(^^)

---ここから本文---

斜視・斜位の定量測定
※可能ならば、15~20分片眼遮蔽後にテストに入ると全量に近い斜位量が測定できる。
【#8 遠方水平眼位検査】モーガン期待値・1exo±1
【#13B 近方水平斜位測定テスト】 モーガン期待値・3exo±3
以下、種々の定量検査
・マドックス小桿(Maddox rod) ※融像除去眼位
・プリズム分離法(Von Graefe法) ※融像除去眼位
・ポラテスト(Pola test) ※一部融像除去眼位
・クロスリング ※一部融像除去眼位
・その他の方法 Hirschberg法、Krimsky法、PrismCoverTest(PCT、APCT)
#7Aの装用下で、上記のテストによって斜位定量を測定する。

施設によって使える視標や検眼器が違うためどのテストを選択するかは検者の自由ですが、それぞれのテストの長所短所と特徴を理解しておいてください。今回は、以後の学んでいくテストとの兼合いから、プリズム分離法とマドックス小桿テストを特に説明します。
 
《プリズム分離法》Von Graefe(フォングレーフェ)法
視表は最高視力に等しい視表かやや大きい縦一列文字視表を使用。
① フォロプターに測定眼にロータリープリズムの目盛り0を12時方向にセット
② 他眼に6PのBD(BUでも可)をセットし、融像を除去(視標を上下に分離させる)。視標がかぶるなど完全に分離しなければ、上下分離プリズム度を増す。
③ 視表が2つ見えることを確認後、縦一列に並ぶように水平Pを付加。縦一列になったところで被験者に合図させる。ここが水平眼位。必ず両方向から2~3回測定し、平均値を記録。
※テキストによっては、測定眼に10⊿BIいれてから測定スタートし⊿0方向へ移動させる、と記述しているものもある(根拠は後述の#11の項参照)
④ 近方の斜位量測定(13B)も基本的に手順は#8に順ずる。調節力による輻輳の変動が起こりやすいので、遠見測定以上に視標への固視を促すこと。
⑤ #13Bにおいて、被験者が老視の場合は、両眼同時に加入度をプラスしていき初めて視標が可読できる加入度で測定を行なう。
【プリズム分離法の注意点】
融像除去眼位の中では比較的融像が起こりやすいので、測定中断続的なカバーテストが必要、3秒程片眼カバーして融像を一旦除去したのち、アンカバーした瞬間の視標の位置関係を回答させる。また被験者は視標をしっかり固視するよう促す、ボーッと見ていたのでは、眼位は安定しない。

《マドックス小桿》Maddox Rod Test
融像除去眼位で測定が行なわれるので、全量に近い斜位量の測定が可能。また回旋斜位の発見にもつながる場合がある。被験者が答える点光源と線状光の位置関係は、下記の通り。
・正位・・・点光源と線状光は一直線上に並ぶ
・外斜位・・右目で見ている線状光が点光源の左側に見える(交差性)⇒BaseIn⊿負荷
・内斜位・・右目で見ている線状光が点光源の右側に見える(同側性)⇒BaseOut⊿負荷
① 視標は点光源を使用し、片眼に垂直線のマドックス小桿をセット。
② 反対側の眼に90°の位置にロータリープリズムをセット
③ 上記の位置関係に基づいて徐々にプリズムを負荷させ、点光源と線状光が一直線上に並ぶようにする
④ 断続的にカバー・アンカバーをしながら2~3回行い、その平均値を取る。
⑤ より正確な測定のために、プリズムを過剰に入れて戻していく方法を併用すると理想的。
【マドックス小桿テストの注意点】
・感覚性融像は働かないが運動性融像を生じる場合があり、Von Graefeまではいかずともや断続的にカバーしながら測定が必要。アンカバーした際に、融像が働く前に瞬間的に被験者に位置関係を回答してもらう。
・最初から線状光と点光源が一致している場合でも、一旦プリズムを負荷し分離させた上で測定を行なう。
・線状光が傾いているという訴えがあった場合は、頭部が斜頚していないかどうか確認し、それを直しても傾きが残る場合は回旋斜位測定テストを行なう。


輻輳力・開散力の余力の測定
#9・10 遠方内寄せテスト #9=ボケ(Blur)、#10=分離(Break)・回復(Recovery) 
モーガン期待値 #9(Blur)=9±2/#10=(Break)19±4/(Recovery)10±2  
視表はプリズム分離法と同じ縦一列視標
① 両眼ともロータリープリズムを12時方向にセット
② 視表がボケたとき、もしくは2つに見えたときに答えるよう指示し、両眼同時にBOプリズムを付加していく。1秒間に両眼で2~3Pくらいのスピードでおこなう。ボケ点、分離点を記録。
③ 分離後視表が1つに見えたとき答えるように指示。分離した時点からゆっくりBOプリズムを減らし、1つに見えた回復点を記録。
【注意点】
・一生懸命に視表を単一視するように被験者に指示しておくこと。
・回復点がBIの場合は(-)符号をつける。
・カルテには、例えばBlur Pointが10⊿、Break Pointが17⊿、Recovery Pointが14⊿なら、10/17/14のように記載。
・プリズム量の記載は全て両眼値の合計で。以下のテスト全てにおいて。

【付記 余力テストをBI(開散)方向から行う根拠】
米国式21検査項目の表記上は内寄せテストが先に来るが、内寄せテストを先に行うと人間の近見反応(調節・縮瞳・輻輳)に伴う調節が発生する恐れがあり、その調節性輻輳の介入による測定結果への関与を最小限にするため、以下の#11(開散テスト)を#8・9より先に行なうのが望ましい。(近方についても同じ)
#11 遠方外寄せテスト  モーガン期待値 (Break)7±2/(Recovery)4±1
 手順は、#9,10と同じ。付加するプリズムがBIとなる。
回復点がBOの時は(-)符号をつける。#11の検査ではボケ点は存在しない。理由は調節休止の状態(遠方視)なので、調節反応は起きてないはずだから。少々の過矯正ではボケないはずで、もしボケ点があった場合は、0.75D以上の近視の過矯正か遠視の未矯正の可能性があり。
カルテには例えばBreak Pointが7⊿、Recovery Pointが5⊿なら7/5のように記載。

#16A,B 近方内寄せテスト #16A=ボケ(Blur)、#16B=分離(Break)・回復(Recovery)    
モーガン期待値 #16A(Blur)=17±3/#16B(Break)=21±3/(Recovery)=11±4)  
#7Aのデータを使い、明室において近方最高視力に相当する視表(普通1.0)を使う。
① 両眼ともにロータリープリズムを12時方向にセット。
② 視表が1つに見えていることを確認後、視表がボケたとき、2つに見えたときを答えるよう指示し、両眼同時にBOプリズムをゆっくりと(毎秒2~3P)付加。ボケ点、分離点を記録。
③ 分離した点からゆっくりBOプリズムを減らしていき、視表が再度1つに戻ったときを答えてもらう。回復点を記録。
ボケ点がない場合は、×を付けます。回復点がBIまでいく場合は、(-)符号を前に付ける。  
遠見と同じように、Blur/Break/Recoveryの順で16/20/14 のように記載。

#17A,B 近方外寄せテスト  #7A=ボケ(Blur)、#17B=分離(Break)・回復(Recovery)
モーガン期待値 #17A(Blur)=13±2/#17B(Break)=21±2/(Recovery)=13±3
#16と同じ要領でおこなう。付加するプリズムがBIプリズムになる。
#16,#17どちらのテストも、測定時の注意事項は、被験者に一生懸命単一視できるように努力させること。

これらの内寄せ・外寄せ検査で何がわかるのか?
❏ BO負荷による内寄せ(輻輳)テスト
BOプリズムを負荷させて行くことにより輻輳を強制させ両眼単一明視の限界を求めるこの検査は、外斜位を自己補正した上でなおかつ残存する輻輳量を意味し、これを実性相対輻輳量(PRC=Positive Relative Convergence)と呼ぶ。この残存輻輳量(目盛り0からBlur Pointまで)は輻輳余力である。
❏ BI負荷による外寄せ(開散)テスト
内寄せテストとは逆に、BIプリズムを負荷させて行くことにより開散を強制させ両眼単一明視の限界を求めるこの検査は、内斜位を自己補正した上でなおかつ残存する開散量を意味し、これを虚性相対輻輳量(PRC=Positive Relative Convergence)と呼ぶ。この残存開散量(目盛り0からBlur Pointまで、遠見はBreak Pointまで)は開散余力である。

そして、上記の輻輳余力と開散余力と斜位の量から算出した数値が被験者に対するプリズム矯正の目安となり、後述するAC/Aと組み合わせて実際に眼鏡の処方に応用することになる。
今回の内容を前提に、輻輳余力、開散余力と斜位の関係、処方への換算式(シェアード・パーシバル)、グラフ分析を次回の勉強会にて学びます。

AC/A比について
AC/A比とは?
前述したとおり、調節と輻輳は常に連動して働く。また輻輳は、
・緊張性
・融像生
・調節性
・近接性
の4つの要素から成り立っているが、特に輻輳(両眼視機能)に関連が深いものが調節性輻輳(Accommodative Convergence略してAC)で、個人差が大きい。この調節性輻輳は、1Dの調節刺激(Accommodation略してA)に対しどの位調節性輻輳が働くか数値化することで、眼鏡の処方に反映させることができる。

AC/A比の算出 ※符号はExo(外斜位)=マイナス、Eso(内斜位)=プラス
グラディエント(Gradient)法
AC/A=(⊿n-⊿1)/D
⊿n 近見斜位量
⊿1 加入後の斜位量
加入度数
【手順】
Von Graefe法(プリズム分離法)にて測定。#7A(完全矯正)下で右眼眼前に6⊿BUにプリズムセット。0.6程度の縦一列視標を40cmにセット。ACTを繰り返しながら、左眼で水平方向に移動し、二つの像が垂直に並ぶよう調整していく⇒近見斜位量⊿n
次に両眼に+1Dを加入しその状態で再び水平斜位量を測定する⇒加入後の水平斜位量⊿1
上記のように両眼に+1D加入することにより、調節は1.0D分だけ弛緩されそれに伴い調節性輻輳も減少し、加入前に比べBI方向へ移動するはず。近接性輻輳の介入・影響を受けにくい利点がある。

ヘトロフォリア(Heterophoria)法
AC/A=(⊿N-⊿F)/D+PD
⊿F 遠見斜位量
⊿N 近見斜位量
測定距離に対する調節量
PD 単位(㎝)
※ 測定法はG法に順ずる。基本的にプリズム分離法がベストだが、他の測定法を行なう場合も遠見と近見が同じ測定法で行なわれること。
※ 遠見と近見の両方の斜位量を測定する。
※ 近見斜位量には近接性輻輳が含まれるが遠見時には含まれないため、G法とH法の差が近接性輻輳量と判断できる。
※ ヘトロフォリアの値は#8と#13Bの値を充てるが、この場合同じ測定方法で得られた値で行うこと。視標の都合で全く同じ測定方法が使えない場合でも、同じ融像除去眼位で得られた値なら整合性がある。遠見=一部融像除去眼位、近見=融像除去眼位など違う測定法で得られた値は整合性がないので使用するべきではない。

AC/A比の判定
得られたデータをもとに、下記の様に判定する。、
眼位(遠見・近見ともに)
・外斜位 Low
・正位 Normal
・内斜位 High
AC/A比
・6⊿超えるもの High
・4⊿~6⊿ Normal
・4⊿未満 Low