中間型アウトリーチ

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もう前にブログ書いたのがいつかわかんないくらいお久しぶりです(笑)

最近も相変わらず眼鏡とロービジョンの二足のわらじです。


ロービジョンケアに際して最近僕が力を入れているのが、タイトルにもある『中間型アウトリーチ』

中間型アウトリーチって何?って話をすると、
『視覚リ ハに関する専門職が、視覚障害当事者が日常よ く訪れる各種施設(眼科など)に出向いて視覚 リハに関する相談や情報提供を行うことを指す』
(仲泊 , 2012a ; 仲泊 ,2012b)

僕ら視覚補助具の業者が、視覚障害者の方に機器を試してもらうにあたってはいくつかの方法があります。

例えば、お店や展示会に来ていただく方法。これだとこちらも腰を据えて色んな機器を説明し体験していただけますが、車の運転ができない視覚障害者の方にとってはまずそこに行くのが難しい、というアクセスがネック。そもそも、このような支援機器やサービスを提供すら施設がある事をご存じない方も多いです。

逆に我々が機器を持ってご自宅に訪問すること(アウトリーチ)もよくやりますが、この場合持っていける機器の数に限界がありますから、ニーズや環境がわからない初対面の方の対応には不向きです。たまに女性の一人暮らしなんかで自宅には来て欲しくないって方もいますしね…それに当然眼に関して得られる情報はどうしても断片的。

そんな中で、お店や展示会には行けないけど病院にはいつもいってるから行けるよ、という当事者の方の都合と、ご自宅にはあまりたくさんの機械は持って行けないけど病院ならスペースが広く色んな機器を持ち込めて、かつ患者さんの目の情報をその場で教えてもらえる、という我々の都合と、自院の見えにくさで困ってる患者さんのケアをしたいけどスキルも時間も足りない眼科の都合と、眼科内でロービジョンの相談を行うのは全ての立場においてメリットが多いんですね。
学会などでもよくこの支援者による中間型アウトリーチの報告がありますが、実際に取り組み始めるとその効果を実感します。


で、今回はある眼科内でのロービジョン相談会で、かなり有意義な相談ができたので一例としてご報告を。



網膜色素変性症の60代男性。
手帳は2級、眼科検査では中心視力は0.7あるも視野は5度未満。

事前の聞き取りでは、
・今持っている眼鏡や拡大鏡では文字が見にくくなったが何か方法がないか
・テレビやパソコンも見辛くなり、楽しみはラジオしかない。
・外に出るのが怖くなり、ほとんど一日中家にいる。

つい最近遠方からご両親のいる福岡に来てこの病院にかかりはじめた、との事だけど、この方が本当に機器や福祉サービスの事を全くご存知ない。


国リハ式近見チャートで文字を見てもらうと、チャートの文字の2倍はなんとか読めるが逆に3倍を超えると視野内に文字が入りきらない。拡大よりもコントラストを高める方が効果的が高そうですね、拡大読書器をいくつか試していただくことに。
紙の文字を追う際にも自分の指で指しながらでないと見失う様子。アクロバットは使い方が難しいか、XYテーブルのある据え置き型でラインを出して読むか、携帯型か。
ご本人は白黒反転時のコントラストが強い携帯型のルビー5HDが気に入られたご様子。
ただ、問題は手帳が視野障害だけなんですよね…
視力障害がついてない場合、日常生活用具として拡大読書機の給付が受けられない可能性があるので、その場合の次善の策として比較的安価な電子ルーペやiPadでも同じような事が出来ることを説明しておく。
また罫プレートやサインガイドも試していただくと、読み飛ばしが少なくなり良好。書くことも多いとの事で、サインガイドは「すぐ作る!」と言われてました。

その他、音声時計や音声パソコンにもすごく興味を持たれてました。
以前はかなりパソコンをされていたそうですが、見えにくくなりもうパソコンはできないものと諦めて最近は使ってないとのこと。
Windowsには拡大鏡やハイコントラスト機能が標準で付いているのでその使い方、スクリーンリーダーでの音声読み上げやマウスカーソル位置への十時線表示機能の説明、またスクリーンリーダーは2級だと日常生活用具で補助が受けられる事を説明すると、『パソコンをXPから買い換えなきゃ!』との反応が年長者に対して失礼ながら微笑ましい😊


そして一番問題だったのが歩行と移動。
同行援護は知ってはいるが利用してない、基本的に移動が必要な際は家族に介助してもらっていて、見え方が落ちしかも引っ越して間もない福岡では勝手がわからず、最近は自宅のごく近所でも一人では外には出ない、とのこと。
白杖を持っているとの事で見せていただくと、なんとまぁ立派なサポートケーン!もちろん足元は悪くなく普通に歩かれる方ですよ(笑)
ロングケーンとサポートケーンの使用目的の違いを実際にロングケーンを触ってもらいながら説明した上で、市内の施設で歩行訓練を含めた生活訓練が無料で受けられる事を伝え、連絡をしてもらうことに(ここはかなり強く念押ししました)。

また色んな当事者団体に入ることで情報が得られやすくなる、また当事者同士の交流やイベント参加など楽しみも増える事をお伝えしいくつかの連絡先を提供。

あまり全ての情報をお伝えするとオーバフローになるのでとりあえず今日はこの辺りで。
ここまでやりとりするとその方の状況はこちらも把握できたので、あとは直接ご自宅を訪問してのサポートも可能ですね、これから長いおつきあいになりそうです(^^)


一つ何かを説明するごとにこの方の顔つきが変わり、姿勢が前のめりに変わっていくのが嬉しく印象的でした。
と同時に、これがいわゆる「ロービジョン難民」なんだよなぁ、と実感する複雑な気持ちも。

お話の中で言われてた印象的だった言葉は「見え方が落ち自分の出来ることがどんどん減り、楽しいことは何もなかった」「家族は高齢の両親しかおらず、先立たれた際にどうしたらよいか不安だった」と。

実際にこのような方が実はまだまだたくさんいらっしゃるであろう現実。

そんな中で、この病院がすくい上げて支援の輪につないでくれたおかげで、おそらくこの方の今後の人生に対する不安は少しでも軽減されたはず。

この、また支援の輪に入ってない、情報を持っていない患者さんと福祉をつなぐ、というのが一番出来るのが眼科であり、この中間型アウトリーチの意義だと思います。
この患者さんを見つけ繋いでくださった今回の眼科様は素晴らしいと思いますし、さらに広がってくれたら、と感じた1日でした。
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