友人の紹介で病院の掃除夫をすることになった「ぼく」は病院に伝わる噂に則り、死期の迫った患者の願いを一つだけ叶えることにする。
人が最期の瞬間に抱くのは希望か絶望か。
本多孝好さんの連作短編集です。
氏の作品に多く登場する独特な希薄さを漂わせた主人公を通して、生死についての価値観が描かれています。
粗筋だけ読むと、よくある感動系のストーリーをまとめた作品かと思ったんですが、話によってはダークな結末に向かうものもあり、少々意外でした。
個人的なお気に入りは「FIREFLY」ですね。
正直ストーリー自体はありがちなんですが、作者さんの持ち味である語感の美しさを十分味わえるのではないかと思います。
まあ、言葉が綺麗すぎて中身が薄いような印象を受けてしまうことがあるかもしれませんが、それはそれで本多作品の良さであるような気がします。
生死観について、強い印象を与えすぎないような書き方がなされていることも、おそらく意図されたものでしょう。
他の本多作品を好きな方は本作も気に入るのではないでしょうか。
ホトケ的採点
ストーリー:15
登場人物:14
文章:18
その他の要素:15
総合:62