
この問いに対する私の答えは、多少ずれているかも知れないですね。
というのは、私が話しをしようとしているのは『一番泣いた映画』ではなく、『一番泣いてしまう映画』だからです。
つまり、今観ても、多分ボロボロになりそうな映画なのです。
それは、小津安二郎監督の『東京物語』。
昭和28年(1953年)の作品ですから、大多数のブロガーさんの生まれる前の作品。
私がこの世に生を受ける直前で、『ゴジラ』の第1作目の作品が上映された頃のことです。
子どもたちに会うため、中国地方(尾道)から上京した老夫婦の1週間を描くもので、老父役の笠智衆と、戦死した次男の嫁役の原節子が好演しています。
上京した老夫婦を温かく迎え入れてくれたのは、実の子どもたちではなく、本当なら無関係となっている次男の嫁だった。しかし、その嫁もなんらかの悩みを抱えている。が、あくまでも明るく義父母につくす姿。
詳しくはインターネットで『東京物語』を検索すればわかりますから割愛しますが、50年以上昔の映画なのに、今でも十分共鳴、感動をする場面ばかりです。
なんでもない1週間を切り取っただけなのに、人の生き方みたいものを考えさせてくれます。
世界的に見ると、日本最高の映画作品(世界一と評価されたこともあるらしい)と評価されるのも納得できます。
ラストシーン。
妻の葬儀を終え、子どもたちが東京に帰ってしまったあと、笠智衆が、こんな一言を誰にともなく言って幕が閉じます。
「今日も暑つくなりそうだなあ」
妻が亡くなり、子どもたちは去って行った。
しかし、太陽はいつも通り昇ってくる。
そんなメッセージなのでしょうか。
とにかく、一度観てください。
私が初めて観たのは、確か小学生の時。
大人になってからは、フランスで『東京物語』を観るために作られた映画も見ました。
フランス人の映画好き、評論好きを差し引いても、そんな映画が作られること自体が、『東京物語』に人すべてに共感を与える何かがあることを物語っています。
ぜひ、ご観覧を。
(記事を書きながらも、いろいろなシーンが回想され、鼻水が垂れてきています)
追記
「今日も暑くなりそうだなあ」
で尾道のまぶしい太陽と海のきらめき、ポンポン船の音で幕が閉じる。
私の『東京物語』のラストシーンはそんなイメージだったのですが、インターネットであらすじを見たのですが、「今日も暑くなりそうだなあ」の台詞が見当たりません。
私の記憶違いでしょうか。
追々記
やっぱりありました。
ただし、幕が閉じる数分前。
妻を亡くした朝、日の出を見ながらの台詞でした。
「今日も暑うなるぞ……」