先日図書館から借りてきた、
『死体は告発する 毒物殺人検証』(上野正彦著・角川文庫)
を、ついさっき読み終えました。
上野正彦さんといえば、東京都監察医務院監察医としての経験を語った『死体は語る』『死体は生きている』などの「死体シリーズ」で有名な方です。
…著作のタイトルに毎回『死体』と入っているので、書店に並んでいるとインパクトが強いんですよね(笑)。
今回の作品では、主に『毒物』を扱った殺人・自殺・事故などについて記されています。
単行本は今から十年以上前の99年刊行ですが、ちょうど「和歌山砒素カレー事件」の時期にあたります。
あれは本当に衝撃的な事件でしたね…。
この大事件、当初は集団食中毒として報じられました。
後にそれが司法解剖の結果、青酸中毒に変わり、その後で砒素という当時の私たちには聴き慣れない毒物の仕業とされました。
なぜ発生当初はそのような間違いが生じてしまったのか、という点についてもこの本では解説されています。
この本の中では、他にも「地下鉄サリン事件」や「帝銀事件」などの事件が取り上げられています。
トリカブトや青酸、一酸化炭素や農薬などは素人の私たちでも『猛毒』と分かるものばかりですが、具体的に
「それらを飲んだり吸ったりすると、どのような症状が出てどのように死に至るのか」
は、あまり知られていませんよね。
そういった毒物について知るには最適の一冊と言えるでしょう。
これを読むと、
「ああ、こういう死に方は絶対に嫌だなあ…」
という気分になること間違いありません。
まあ、毒じゃなくても死ぬのは絶対に嫌ですけれどね…。
またこの本では、『監察医制度』についても繰り返し述べられています。
監察医は司法解剖を行い、その人がどのような原因で死に至ったかを明らかにする職業です。
この司法解剖により、自殺や事故死を装った殺人などを暴くこともあります。
逆に言えば、監察医がいなければそういった犯罪が闇に葬られてしまう可能性もある、ということですね。
この監察医制度ですが、現在は東京・大阪・神戸・名古屋・横浜のみで運用されているそうです。
しかも実際に機能しているのは、東京・大阪・神戸だけなのだとか。
事件捜査の上で、非常に重要な役割を担うこともある監察医が、全国でたったこれだけの地域でしか機能していない、というのは問題ですよね。
著者の上野さんも力説していますが、この文庫版が刊行された平成13年からもう10年近く経つのに一向に全国的な制度化をされる気配はないようです。
犯罪の抑止力ともなるので、ぜひ真剣に考えて欲しい制度ですよね。