夕方、掃き掃除をしようと外に出ると、ねこ が勝手口を出たあたりから一目散に「趣味の菜園」の方へ走っていく。「キャキャキャキャキャ」という声も ねこ の走っていく方角へ同時に移動していく。


筆者はあわてて ねこ のあとを追った。ねこ は「菜園」の真ん中に座り込んで何かしている。「キャキャキャキャキャ」の声もまだしている。


ねこをつかまえて口の両脇から指を入れようとしたちょうどそのとき「キャキャキャキャ」の声が止んだ。


少しばかりの抵抗のあとで ねこ は口を開き、くわえていたものを地面に落としたのだが。


ねこ は口を開かせようとしている最中にとどめを刺してしまったらしい、5センチぐらいの小さなモグラだった。数秒遅かったか、と。


まず、ねこ を玄関から家の中に入れ、チリトリとホウキを持って取って返し、モグラをチリトリに乗せたころ、ねこ は母屋の猫専用出入り口から外に出てきて、筆者の顔を見上げて「ニャー」と挨拶し、エモノを放したあたりを探し始めた。


飼い主はチリトリを持って勝手口に回り、薪で焚く風呂釜の前に置いてあった新聞の折り込み広告の紙に包み、釜の中に入れる。紙の厚み越しに、こと切れているモグラの小さな体のまだ温かい体温が伝わってくるのが痛々しい。


どこで捕まえたものか、ハタケのモグラ退治はありがたい働きなのだが、しなくてもいい殺生をしているような気がしてあまり気分のいいものではないのだがなぁ、などと。