「ノウン、俺ずッと! オマエの、ことが…」

「言うな!」

  アンノウンはエルをぎゅっと抱きしめた。

  エルの目が見開かれる。

「それを聞いてしまえば、お前は行ってしまうのだろう…!? いくな…消えないでくれエル…!!」

「ノウ、ン」

  エルの手がアンノウンの背にまわされる。

  二人は強く抱き合った_____











「…きめェ」

「私にしては傑作だと思わんか?」

「思わねェな」

  アンノウンの駄作を無造作に捨て、エルは鼻で笑う。

  敵同士である二人が恋に落ちて結ばれるなど、夢物語も甚だしい。

  アンノウンは笑いながら言う。

「もし出会いがありきたりで普通だったのなら、こうなっていたのかもしれないな」

  エルは無表情のまま言葉を返した。

「は、お前がUnknown=Storytellerである限り有り得ねェな」

「手厳しいな。 だが…ふむ、他のパラレルワールドでも私たちの関係があぁなることは未だ確認されてないな」

「ほらな。 俺たちの関係はかわらねェンだよ」

  沈黙。

  静寂。

  二人は合わせていた目を自然にそらした。

  そうして、また目を合わせる。

「世界を救いたいならその身を捨てて捧げればいい。私が欲するのはお前だけだ

「残念。 俺はそこまでオヒトヨシじャねェンで」

  エルは嗤う。

  そうして神器を身に纏う。

  アンノウンは目を閉じ、そうして開けると同時に白い本を開いた。

「愛しているよ、エル。 …これは恋などではなく、もっと重いものだ」

「俺はお前が大嫌いだよ。憎くて、殺したいほどに嫌いだ」

「ふふ、告白だな。これも一種の」

「ま、意味的には合ッてるなァ」

  敵同士である二人は、笑いあった。

  だがそこには親愛も友愛も情も何もない。

  あるのはただ、濁った感情だけ。

「さぁ、そろそろ死んでくれ」

「お前がな」

  異形はぶつかりあう。

  結末として、どちらかが死ぬのを望んで。