樹生かなめさんの2006年作品。

イラストは奈良千春さん。かなり懐かしい絵柄です。

ゆたかさんのレビュで興味を持ち、
探そうと思った矢先に新品で出会い速攻買ったもの。

コメディではなくシリアス。
痛さもありますが、それよりなにより展開のさせ方が絶妙!

そして、病んだ愛情という那義の大好物ネタもあり、
すごく好き!お気に入り!
ただ、明らかに読み手を選ぶ作品だと思うので、
那義的には★5つですが、レビュとしては1個減らしました。


もう二度と離さない 著者:樹生かなめ イラスト:奈良千春
X文庫ホワイトハート BL小説 2006年8月
★★★★

もう二度と離さない (講談社X文庫 ホワイトハート)/樹生 かなめ
¥578
Amazon.co.jp

◆あらすじ(裏表紙)
日本画の大家を父に持ち、美貌と才能に溢れる若き洋画家・佐伯渓舟は、助手であり恋人である相良司とともに暮らしている。 小さなトラブルが起こることもあるが、強い絆で結ばれているふたりは幸せな毎日を過ごしていた。 そんなある日、司の過去を知る男、そして渓舟の過去を探る男が現れたことにより、平穏な生活は少しずつ狂い始めていき……!? ◆

前半はとても甘々です。

高校時代にあった交通事故で
左足に後遺症の残る司は病弱でもあるため、
サナトリウムで暮らしている時、渓舟に出会います。

二人は惹かれあい一緒に暮らし始めますが、
すべてが司中心の生活なのです。
渓舟は司をあたたかく優しく包み込み、
一途に愛情を向けています。

渓舟の両親、渓舟が師事する画家・井伊、
幼なじみ・緒方、緒方の助手・邦彦らは

二人の関係を認めていて、
人気洋画家である渓舟を追い回す女性ファンや

マスコミから二人を守ってくれてもいます。

そんな幸せな恋人同士のエピソードが展開する前半に
唐突とも感じる設定が盛り込まれてくるんです。

これの意味するものが何なのか考えながら読んでいて、
その指し示すものに気づいた時、戦慄が走りましたよ!

予想した展開になりますが、
その内容は予想をはるかに上回る痛さを伴うものでした。

読んでて自分の内蔵の温度が下がっていくのを感じつつ
それでも物語に引きずり込まれて一気読み!

引きずり出される司の過去、渓舟の過去。
それによって、もつれ絡まった彼らの罪が明らかになっていきます。
その描写に胸の奥がどんどん落ちていくような鈍い痛みがありました。

登場人物がみな罪の意識を抱えていますが、
誰よりも重い呵責の念に捕らわれる司を守るべく動きます。

歪んで病んだ渓舟の愛情、
過去を知ってしまっても尚の司の強い想い、
二人を取り巻く登場人物たちの心情、
後半の怒涛の流れの中、それらを理解できるのも
前半の展開があればこそなので、
物語のこの構築の仕方はさすがです。

そして、登場人物との独特な距離感のある
樹生さんの文章ならではの味わいでもありました。

読み終えたあとでもう一度前半部分を読むと、
気づかなかった伏線が見えてきたり、
渓舟の愛情に、
ただの甘さだけではない深みを感じたり出来ていいですよ~♪

ひとつ残念かなと思うことは、
ホワイトハートだからなのか、
Hシーンにしろ、痛いシーンにしろ、
描写が控えめかなってところですね。
まぁ描写が濃くなると痛さが増してしまいますがw

物語にしろ、恋愛部分にしろ、本質的なところを抉ると
消し去ることの出来ない苦味の残る作品なので、
万人向け(腐女子のねw)ではないのでしょうね。
那義のツボと被ってる方にはオススメしたいですwww

どうでもいいことですが、
甘いシーンに猪の突進の音が響いてきて笑えました。
樹生さんらしい遊びの部分ですよね≧(´▽`)≦


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