榎田尤利さんの2002年クロスノベルズ『永遠の昨日』の新装版。

号泣でした。
でも、その涙は温かいと感じました。


永遠の昨日 著者:榎田尤利 イラスト:紺野キタ
白泉社 BL小説 2010年11月
★★★★★
永遠の昨日/榎田 尤利
¥1,470
Amazon.co.jp


ミッちゃん、
だいすきだ。
ずっと
そばにいるよ。
いつまでも、ずっと。 

(これ↑読んだだけで泣けてきます、どうしよう…(T.T)
◆あらすじ(帯)
 ひとりがいいと思っていた。ひとりじゃないと、よく眠れないと思っていた。なのにどうして浩一の腕の中は、こんなに居心地がいいんだろう。 浩一、おまえを失いたくない。
ミッちゃん、だいすきだ。 
 囁きが届くのは耳。そこから心に降りていく。 繰り返される陳腐な言葉。笑いたいやつは笑えばいい。知らなかったんだ。その言葉の本当の意味を。心にしか届かない響きを。浩一に会うまで、知らなかったんだ。 ◆



プロローグのようなもので始まりますが、
読み終えた後、これを読むと切なくてまた泣けます。
あの時の浩一だったんだとわかるので・・・。


第一章の冒頭から、とんでもない展開になり、
どう受け止めて読めばいいのかわからず…。
でも、榎田さんだから、たぶん、きっと、大丈夫。
と自分に言い聞かせて読みました。

読み進めるほどに、
行き着くであろう先が予想から確信に変わっていき、
そして否応なく結末を覚悟させられつつも、
そこまでにどんなドラマがあるのだろうと引き込まれ一気に読みました。

途中からティッシュの箱を傍に置いて…。

ファンタジーな展開なのですが、
そこに積み重ねられていくエピソードは
リアリティを持って心に響いてきます。


今、目の前にいる相手がいなくなってしまったら…。
ミッちゃん、好きだ、大好きだ、
と言ってくれる浩一がこの世から消えてしまったら…。


「生と死」という重いテーマですが、

序盤は浩一というキャラクターの持つ大らかさと温かさに
重苦しくなりすぎず話が展開していきます。

でも、中盤以降は浩一のそのキャラクター性が
逆に切なさを感じさせてくるんですよ。


生と死は対。

生まれた時から死に向かって進んでいる。
その現実を突きつけられた浩一と満が過ごす1週間。

ずっと孤独だった満が

浩一という存在によって愛する気持ちを知り、
失いたくないという想いは日に日に増すけれど
現実は無情に時を刻んでいくのがとても辛い。

第三章 das ewig Gestrigeは
時々涙で文字が霞んで読めなくなったほど。

終盤、とても自然な流れで身体を繋げる二人。
こんなにも感動し、こんなにも涙を誘われるHシーンははじめてかも。

そして、浩一と満の恋愛だけで閉じるのではなく、
家族としての愛にも話は繋がっていきます。
満と父、母のエピソード。

浩一が帰り着いた先。
これがあったからこそ、
このお話がさらに深く真摯なものとなっていると思います。

悲しみを癒す方法は、
最後まで提示されないけれど、
浩一を愛し、そして愛された事実は消えることなく、
満の人生に永遠に存在することに救われます。

ラストの、浩一に語りかける一文に、
満の「これから」を読み取ることができ、
次ページの桜舞うイラストに、また、涙……。


BLで死にネタは苦手な那義なのですが、
これはいわゆるBLにおけるNGネタではないと感じました。

死を描くことで、生を深く描写していますから。

これは、BLを超えた秀逸な文学作品であると思います。

BLというジャンルにだけ置いておくのはもったいない。
BLに興味のない人でも感動する作品だと思います。
うちの娘にも読ませたいくらい。


余談ですが、第三章のdas ewig Gestrigeの意味を調べてみました。

ドイツ語で『永遠の昨日』という意味なのですね。
この『永遠の昨日』というタイトルも深いですよね。。。


そういえば、旧版のイラストは山田ユギさんだったのですね。
那義は旧版持ってないので比較できないですが、
紺野キタさん、よかったですよー。

挿絵は少ないですが
作品の切ない雰囲気にとてもあってます。
そして装丁がとても美しくて、
読み終えた後に見るとこれまた涙…。

もう泣かされてばっかりですな。
魚住くんシリーズより泣いたもの(笑)


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