華籐えれなさんの新刊です。

京都の能の世界のお話。
華籐さんのしっとりとした文章で紡がれた
艶のある和の情緒がたっぷりです。

表紙絵とカラー口絵、
北畠あけ乃さんの塗りのタッチが
本作の世界観を美しく表現してます。

特に表紙絵の
白い背景(雪の白です)と赤い寒椿は

作中に何度も心情描写の色づけとして
出てくるので、味わい深いです。
(受が女性に見えてしまうのがちょっとアレですが。)


執愛の契り 著者:華籐えれな イラスト:北畠あけ乃
BBN BL小説 2010年6月
★★★★

執愛の契り (ビーボーイノベルズ)/華藤 えれな
¥893
Amazon.co.jp

◆あらすじ(ノベルズ裏表紙)
「逆らうな、お前の躰は俺のものだ」 美貌の柏倉龍能楽師・颯希(さつき)は、誤解が元で別れた恋人で青年実業家の喬一郎と再会する。颯希は戸惑いつつも再会を喜ぶが、それは喬一郎に仕組まれた復讐の始まりだった!! 資金面で悩む柏倉流への援助を条件に愛人契約を要求する彼に、颯希は忘れられない恋心を隠し、流儀のために躰を差し出す。だが官能に溺れるほど責め立てられて淫らになっていく躰と、愛する男に陵辱される日々に苦しみ!? ◆



しんしんと雪の降り積もる京の都が美しいです。

京都出身(在住?)の華籐さんならではの
臨場感溢れる情景描写と、
そして、能楽、それに絡めて居合もあり、
静謐な和の世界が堪能できます。


能楽の柏倉流宗家の甥である颯希は
その生い立ちと宗家での立場から
自分の感情を押し殺し、
全て自分の中に抱え込み
柏倉流のためにだけ生きているような人。

宗家の一人息子で、
柏倉流の後継者となった雅弓(まゆみ)に
能の才能という点で
嫉妬・妬みといった負の感情を
ぶつけられています。

高校時代、颯希が初めて好きになって
恋人になったのが喬一郎です。
彼に誤解され別れる結果になった時も
柏倉流を守る為、その誤解を解くこともできず、
それが、7年後の
喬一郎からの陵辱に繋がっているのです。

儚げな見た目に反して、
口調がきつく、強がってしまう颯希なので
喬一郎の憎しみは増すばかり。

表題作とその続編『花鬼の恋情』の
二部構成になってます。

表題作は小bに掲載されていたものなので
颯希と喬一郎の愛憎劇が短めなのですよ。

これが1冊まるっと書き下ろしだったら
もっと濃く深くなっていただろうと思うと
ちょっと物足りない感じもしますが
書き下ろしには、二人のその後が
たっぷりあるのでそれで満足できるかと。

ただ、いろいろと悩み迷ってる颯希なので
二人の甘々シーンは少ないですが。

その書き下ろし『花鬼の恋情』には、
喬一郎への深い愛情と
颯希の核である能楽への想いが
えがかれています。

何もかもを自身のうちに飲み込んでしまって
喬一郎に甘え頼ることをしない颯希を
喬一郎がヤキモキしながらも見守っています。

喬一郎、俺様だったのに、
いまや颯希大好き状態で、
颯希が嫌なら自分は我慢、
颯希のためならなんでもしてあげたい
と、ちょっとヘタレ傾向の
尽くす攻めになっていきますwww
こゆのって那義のツボ!


Hシーンは、表題作での陵辱シーンすらも
華籐さんの文章が美しいので、素敵です。

那義のお気に入りは

颯希のひとりHのシーンです。
色っぽくていいですよ~!

それともうひとつ。
Hシーンではないけれど、
大晦日の夜、喬一郎を待つ颯希のシーンも好き。
この作品では珍しく
ちょっとコミカルなシーンになってて
颯希のセルフツッコミがほほえましいのです。


ヒール役である雅弓ですが、
単なる『嫌なヤツ』ではなく、
彼もまた、複雑なものを抱えているようなので
興味がわきます。

特に、書き下ろし終盤で
彼の内に秘めた情念というものが
匂わされているので、
雅弓で1冊読みたくなりました。



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