月宮を乱す虎 著者:和泉桂 イラスト:佐々成美
幻冬舎リンクスロマンス BL小説 2008年6月
★★★★
月宮を乱す虎―神獣異聞 (リンクスロマンス)/和泉 桂
¥898
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白虎に守られる国、馨の王子である翠蘭は、父の名代で赴いた地で、6歳年上の奎真と出会う。
翠蘭は彼の人柄に惹かれ、自分の学友にと都に呼び寄せ幸せなひとときを過ごした。
『人を絶対に信じてはならない』というのが父である王の教えだったが、翠蘭は優しい奎真だけは嘘をつかないと信じ慕っていた。だがある日、仕事で国に帰るという書置きを残して奎真が消息を絶ってしまう。
 奎真の行方を気にかけていた翠蘭は6年後、思わぬ形で再会するのだが…。


憎しみと愛情が絡まりあう重いお話でした。
翠蘭は、信じていた奎真が自分についていた嘘を知り、愕然とします。
横領の罪で捕らえられている養父の処刑を取りやめてくれるよう、翠蘭に頭を下げる奎真ですが、養父は処刑されてしまい、奎真の心にも翠蘭への憎しみが芽生えます。

その後、翠蘭の父である王に、奎真は反旗を翻し、翠蘭はその奎真に囚われの身となり、凌辱される日々になってしまいます。

二人とも相手への憎悪が激しいのですが、その心の底には消し去ることの出来ない愛情が見え隠れして、二人ともそれにもがき苦しんでいます。
ただ憎むだけの方がどれだけ楽だったろうと思いました。

憎みながらも、生きること、生かすことを選び、苦しむ二人。
苦しみの中に捨てきれない想いを抱えているのが痛いほど伝わってきます。
根っこの部分に愛情があるからこそさらに憎しみを増してしまうのかもしれないですね。

あとがきで作者が「心理描写に手こずり頭を抱えた」とありますが、理性でも感情でも御しきれない、もつれてしまった二人の心の中が深くえがかれていたと思います。
読み応えがありました~



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