【共謀罪】テロリスト側の朝日新聞【特定秘密保護法】 | 独立直観 BJ24649のブログ

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そういう想いのブログです。

 今国会では共謀罪(に相当する法律)の制定が審議されるようだ。

 わが国はテロ対策の法整備が遅れている。

 国際的なテロ対策のための条約も締結できないようなお粗末な状況だ。

 国際標準の法整備が不可欠だ。

 「スパイ天国」の状況を脱していくことが、テロ対策となるのだと思う。

 

 

「「共謀罪」改正案 五輪への備えに必要な法整備」 産経ニュース2016年8月27日

http://urx.red/ycDe

 

「 前回の廃案から10年あまりを経て、ようやく具体的議論の兆しが見えてきた「共謀罪」。議論再燃は、昨年から続く大規模なテロや、開催まで4年を切った2020年東京五輪への備えが待ったなしだからだ。

 昨年11月のパリ同時多発テロでは計130人が死亡し、7月にはバングラデシュで日本人7人を含む20人が殺害された。国民の「安全」の状況は、10年前とはまったく異なっている。

 こうしたテロや国際的な組織的犯罪に対処する犯罪防止条約は、約180カ国・地域が締結。主要7カ国(G7)で未締結は日本だけだが、締結には共謀罪に相当する国内法の整備が不可欠だ。テロ対策の国際協調の中でこのままでは「日本が抜け穴になる可能性がある。恥ずかしい状況」(法務省幹部)だった。2年以内に施行される司法取引などと組み合わせて、テロ対策へ“国際標準”の備えが必要とされている。」

 

 

 しかし、今回も朝日新聞が反対キャンペーンを張る可能性が高い。

 わが国では他国やテロリストのスパイのような連中が大きな発言力を持っている。

 

 

http://urx.red/ycD6

 

http://urx.red/ycDa

 

 

 テロ対策の法整備としては、3年前に制定された特定秘密保護法も挙げられる(http://urx.red/ycD2)。

 朝日新聞などのマスメディアによる反対キャンペーンによって、「なんとなく恐い」と思っている人もいるだろうが、「特定秘密」の中には「テロリズムの防止に関する事項」が含まれている(同法3条1項、別表4号、http://ur0.work/yf0C[Q4])。

 テロ対策情報を保護する必要性が高いことは疑いない。

 本来であれば、マスメディアはかかる情報の保護のあり方について、諸外国の例を参照するなどして、議論を深めるべきであったのに、朝日新聞などは情緒的に同法の恐怖を煽るばかりで、議論はさっぱりと深まらなかった。

 たとえば、朝日新聞平成25年12月8日付朝刊の「天声人語」は、「戦争に駆り立てられる」などと書き、恐怖を煽った(潮下記160ページ)。

 それにしても、あれだけの同法反対キャンペーンが張られた割には、「特定秘密保護法違反で市民が次々と言論弾圧されている。暗黒時代の到来だ。」という報道がなかなか出てこないことを、不思議に思う人もいるのではないか。

 それもそのはず。特定秘密保護法は、国家公務員法の特別法に位置づけられると解される(http://ur0.work/yf0C[Q5]、http://urx.red/ycDl参照。過去記事としてhttp://urx.red/ycDo)。

 一般人が普通に生活している分には特に関係のない法律だ(http://ur0.work/yf0C[Q17])。

 こういうことからも、朝日新聞をはじめとする同法反対派のメディアの胡散臭さがわかるであろう。まるでテロリストの味方をしているようだ。

 朝日新聞などの同法反対派メディアの報道のひどさについては、潮匡人「ウソが栄えりゃ、国が亡びる 間違いだらけの集団的自衛権報道」(KKベストセラーズ、2014年)や、西村幸祐「マスコミ堕落論 反日マスコミが常識知らずで図々しく、愚行を繰り返すのはなぜか」(青林堂、平成26年)が参考になる。

 

 朝日新聞などによると、特定秘密保護法によって「知る権利」が侵害されるとのことだ。

 しかし、そもそも「特定秘密」について「知る権利」など存在するのだろうか。

 3年前、私はこの憲法論について記事を書いた(http://urx.red/ycDr)。

 反対派は憲法違反だと言うのだから、賛成派は憲法違反ではないと、憲法論で反論すべきだったと思うが、私が知る限り、賛成派メディアは憲法論を避けてしまっていた。


 

 いわゆる「知る権利」は、これを具体化する法律によってはじめて具体的な権利となる抽象的権利だ。

 そして、この権利を具体化する法律としては、行政機関情報公開法が挙げられる(http://urx.red/ycDz)。

 同法5条は不開示情報を列挙する。

 同条3号・4号を見ると、特定秘密保護法の「特定秘密」のようなことが規定されている。

 そう考えると、「特定秘密」を「知る権利」などそもそも存在しなかったということになり、そして、存在しない権利を侵害するということもあり得ない。

 とすれば、朝日新聞などによる「「知る権利」の侵害だ」という批判は成り立たないということになる。

 リブログ元の記事ではこういうことなどを論じた(http://ur0.work/yf1Cから一連の記事)。

 

 では、朝日新聞は行政機関情報公開法の不開示情報についてどう考えているのだろうか。

 テロ対策情報も「知る権利」を充足するためにどんどん開示せよという立場なのだろうか。

 偶然見つけた「岩波ブックレット」にその一端が書いてあった。

 これは行政機関情報公開法が制定される前に書かれたもので、「どのような情報公開法が生まれるべきなのか」を提言している(http://urx.red/ycDB)。

 先に述べておくと、朝日新聞に期待されるような(?)素っ頓狂な物言いではない。

 「不必要な秘密主義」を批判するものの、「防衛情報」の保護そのものは否定していない。

 特定秘密保護法を巡る最近の論調からはちょっと意外だ。

 

 

朝日新聞社会部メディア班「岩波ブックレットNO.404 情報を市民に! ―公開法制定の論点―」(岩波書店、1996年) 37~40ページ

 

防衛情報 ―秘密主義の網、自治体に

 

(中略。那覇市と相模原市の事例が取り上げられている。)

 

 <論点> 「国益」判断、どこまで踏み込める?

 防衛、外交など「国益」が密接にからむ情報の場合、そもそも情報公開法の対象には含まない方がいい、という議論さえある。その意味では行政情報公開部会が中間報告の中で、防衛庁、外務省を含む、国のすべての行政機関を対象にしたのは評価できるだろう。

 一方で同部会は、防衛、外交、捜査に関する情報について「支障を及ぼすおそれがあると認められる相当の理由がある」(※下線部は原文では傍点)場合を非公開とする規定を置いた。法人情報など他の除外規定が「支障」や「侵害」の具体的な「おそれ」を要求しているのと比べると、非公開の範囲がかなり広い。不服審査会や裁判所が、どの程度踏み込んで外交、防衛上の「国益」を判断できるかも、不透明なままだ。

 同部会はまた、請求対象の文書があるか、ないかすら明らかにできない情報があることを認めた。外務省や防衛庁、警察庁などが持つ情報について、乱用されないか、批判の声が強い。

 那覇市、相模原市の例からは、国は不必要な秘密主義をとっているようにみえる。「国益」の無定限な拡大解釈は、情報公開の本来の趣旨を大きくゆがめてしまう恐れがある。」

 

 

 

 

 最近の朝日新聞を思うと、「防衛情報を保護すると戦争になる。防衛情報を不開示情報に含めてはいけない。」くらいのことが書いてありそうだと期待してしまうが、20年前はそこまで反知性ではなかった。

 とはいえ、「法人情報」と比較して「非公開の範囲がかなり広い」と批判するのはイチャモンの域を出ない。

 情報を公開した場合の弊害に比例して要件が厳格になるのは当然だ。

 むしろ、「法人情報」と「防衛情報」の保護の仕方が同じの方が問題だ。

 こういう書きぶりからも、もっともらしいことを言いつつも、朝日新聞が「防衛情報」の保護を軽視している(漏洩を望んでいる)ことが窺い知れる。

 

 特定秘密保護法にしても共謀罪にしても、国防や、テロ対策を含む公安のために必要だ。

 しかし、わが国は肝心な法整備を欠いている。

 いわゆるスパイ防止法だ。

 特定秘密保護法は、「スパイ防止法への布石」であるとしても、スパイ防止法そのものではない(西村上記48ページ)。

 依然としてわが国は「スパイ天国」なのだ。

 「スパイ天国」の放置こそ、ソ連のスパイによってソ連に備える軍隊を南進させてしまい、また、日米衝突をもしてしまった「戦前回帰」のおそれありだ。

 特定秘密保護法やスパイ防止法に反対する朝日新聞などの「左派陣営」こそ、「戦前の反省」ができていない。

 第二次大戦時のスパイの暗躍について、最近出た本では、江崎道朗「アメリカ側から見た東京裁判史観の虚妄」(祥伝社、2016年)が参考になる(http://urx.red/ycDH)。

 

 

中西輝政 「国民の覚悟 日本甦りの道」 (致知出版社、平成23年) 154~172ページ

 

「 歴史が示すインテリジェンスの重要性

 

 国として求められる情報活動のことを「インテリジェンス」といいます。ここでは、このインテリジェンスの重要性について述べていきます。

 私は、二十歳代半ばでイギリスに留学しました。そのときたまたま向こうでついた先生はなんの変哲もない普通の学者のように思えたのですが、二年くらい付き合っていると、ある日突然、その人が男爵(正確には男爵)になりました。ごく普通の労働者の家に生まれた人なのに、女王様から爵位をもらって貴族になったわけです。

 どうしてだろうと思っていたのですが、やがてその理由がわかりました。

 

 第二次世界大戦では、前述のようにイギリスは当初、ヒトラーのドイツ軍に完膚なきまでに叩かれていました。しかし、戦争の途中で、ドイツの暗号を全部解読できるようになり、そこから盛り返していきました。

 イギリスは、軍事力ではドイツにあらゆることで劣っていたのですが、暗号解読だけはすぐれていて、ドイツの最高軍事暗号を全部解読してしまいました。それ以降、ドイツ軍の動きが、ほとんど手に取るようにわかるようになったのです。「明日ロンドン空襲にドイツ軍の飛行機が何機来る」というところまでわかるようになりました。こうなれば戦争には非常に有利です。その結果、イギリスは、ギリギリのところを乗り越えてなんとか戦勝国になれたわけです。

 

 実は私の先生は、戦時中そういう仕事をされていたのです。大戦が始まった一九三九年、彼はまだ若いケンブリッジ大学の三年生の時に、自分は嫌々情報部に入ったとのことです。「軍隊に行くか情報部に行くか」という二つしか選択肢が

なく、自分はドイツ語がよくできたので情報部に行き、そこで暗号解読の仕事をしたのだそうです。

 といっても、彼の仕事は、暗号の解読そのものではなく、解読した情報を暗号解読の部署から各司令部に持っていくというものでした。解読した内容を実際に無線で知らせると、それが今度はドイツ側に傍受され暗号解読されていることを知られてしまうおそれがありますから、よくスパイ映画に出てくるように、自分の腕とアタッシュケースを手錠でつないで、解読した書類を絶対盗まれないようにして戦場の司令部まで運んでいく。そういう役割を受け持っていたのです。

 そのときに南太平洋にあったマッカーサーの司令部にも行ったようです。先生に最初に会ったとき、社交辞令で「先生は日本へ行かれたことがありますか」と聞いたら、しばらく考えてから、ニコッと笑って「日本の上には行った」と変な言い方をしました。後で聞くと、それはニューギニアのマッカーサー司令部に情報を持っていって、「いま日本軍はああですよ、こうですよ」といったことを知らせた後、東京空襲に向かう爆撃機に便乗して日本の上空を通ってソ連を通過してイギリスへ帰ったという話だったのです。

 

 一九七〇年代半ば、戦後三十年以上たって、イギリスが当時の機密を初めて公開し、そのときの資料が読めるようになりました。そこで、私の先生が戦時中は実は大変な活躍をして、国の存立に大きな貢献をした、ということを発表できるようになったのです。

 それで、イギリス政府は、この功績で彼を貴族にするということで、先生をバッキンガム宮殿に呼びました。その際、女王様から、剣で肩を叩かれる儀式があるのですが、先生に、本当にそのようなことをするのですかと聞いたら、そうだといっていました。それで先生は貴族になれたわけです。

 要は、イギリスという国は、功績があったら、一人の庶民を一躍、貴族にするほど、インテリジェンス、情報活動を重視しているということなのです。

 しかし、それほどインテリジェンスを重視している国は何もイギリスだけではないのです。イスラエルや中国、ロシアもそうです。アメリカはよくインテリジェンスで「チョンボ」をやる国ですが、とにかく情報活動に賭ける執念はやはりすごいものです。大きく見れば、日本の防衛費の二倍くらいの予算をアメリカは情報機関に出しています。

 

 明らかにされたスパイ活動

 

 近年、世界で大きな話題になったスパイの話では、「ヴェノナ文書」というものがあります。

 第二次大戦から戦後にかけて、アメリカの陸軍情報部はアメリカ国内にいたソ連のスパイがモスクワのソ連諜報部との間でやり取りしていた暗号通信を解読していたのですが、当然、そのことは厳重に秘密にしていました。一九九一年にソ連が解体した後になってやっと、CIAはその解読内容を公にしました。それが「ヴェノナ文書」(「ヴェノナ」というのは暗号名で、アメリカの解読当局がつけた名前)です。

 つまり、アメリカにいるソ連のスパイが、暗号でモスクワに報告電報を打つ。それをアメリカの軍当局が傍受して解読していたのです。しかしソ連暗号の解読は難しく、一九四三年から一九八〇年まで延々四〇年もかけて続けていました。

 一方、ソ連のスパイは、解読されているなどということは知りませんから、なんでも本当のことを書いて送っていました。アメリカ政府の偉い人で、たとえば、「財務次官補のホワイトさんは実は我々の同志で、彼はアメリカ政府の中に入っているソ連の有力スパイの一人です」などということが分かる通信文を書いて、モスクワに伝法で送っていたのです。それをアメリカが傍受し、解読していました。しかもこの解読の事実は、五十年間隠されていました。

 暗号解読の結果、大戦中から戦後にかけてアメリカ政府の中で活躍していた高級官僚、政治家、ジャーナリスト、全部アメリカ人ですが、実はソ連のスパイだったということがわかっていたわけです。なかにはFBIに捕まった人もいます。

 実はその頃、マッカーシー上院議員による「マッカーシー」旋風が吹き荒れて、誰でも彼でも共産主義者だ、と非難するいわゆる「赤狩り」を行い、何かあると、「ソ連のスパイだ」といって罪を擦りつけることが大きな問題になりました。こういった人たちは、”マッカーシズムの犠牲者”とされ、無実の罪をきせられた人だ、ソ連のスパイなどやっていなかったのに、と長くいわれてきました。

 有名な原爆スパイ、ローゼンバーグという夫妻もそうです。原爆製造などの機密情報をソ連に売った容疑でFBIに逮捕され、裁判で無罪を主張しましたが、死刑となりました。彼らも「マッカーシズムの犠牲者」だといわれてきたのです。みんなそれを長い間信じてきました。そして以後、半世紀にわたって、世界中のマスコミ特に左翼メディアや運動家たちが「冤罪だった」と叫び続けてきたのです。

 

 ところが、この「ヴェノナ文書」が一九九〇年代半ばに初めて公開され、そこに書かれているのを見ると、ローゼンバーグ夫妻をはじめ”マッカーシズムの犠牲者だった”といわれていた人はほとんど全部、間違いなくソ連のスパイだったのです。戦後「マッカーシズム」のアメリカを批判してきた日本のマスコミ、左翼の学者たちは顔色なしの状態でした。彼らは今、うんともすんともいいませんが、歴史は書き換えられたのです(詳しくは中西輝政監訳『ヴェノナ』PHP研究所、二〇一〇年刊を参照)。

 それはともかく、この文書を見ても、アメリカという国が、いかに秘密を厳守して、必死になって、血の滲むような努力をして暗号を解読してきたかということがよくわかります。

 ソ連の暗号は絶対解読できないといわれていたのですが、何千人という人を投入して、最盛期は一万人くらい投入して解読したのです。しかもその結果を、暗号解読していることを知られないよう外部には五十年近く秘密にし続けてきたのです。これはすごいことです。日本が戦争に負けたのは当然のことでした。

 

 ちなみに、尖閣事件でも暗号解読が大きな鍵を握っていました。

 あの中国漁船が日本の巡視船にぶつけた後、周辺にたくさんいた中国の漁船の一つが中国本土に無線で報告していたのですが、それを自衛隊とアメリカ軍の暗号解読班が傍受し、解読していたということです。ぶつかってきたのは「中国漁船」といっていますが、実は中国の海軍と一体となった民兵組織であり、完全に中国側の意図的、組織的な行動だとわかり、「これは悪質だ」ということで、海上保安庁が捕まえたのです。

 インテリジェンスというのは、それほど重要な、国の支えになる活動です。

 太平洋戦争時の日本を見れば、その重要さはさらによくわかるでしょう。日本はミッドウェー海戦以来やられっぱなしになっていきましたが、それはアメリカに日本海軍の暗号がほとんど全部解読されていたからなのです。山本連合艦隊司令長官が乗っていた飛行機が撃墜されたのも、日本の暗号が事前に解読されていて、アメリカ軍機が山本長官の飛行機を待ち伏せしていたからです。

 

 絶対に必要なインテリジェンスの強化

 

 「インテリジェンス」というのは、何も暗号解読だけではありません。情報活動全般の話です。

 日本の政治でいちばんいけないことは何かというと、政治と金の問題や権力争いでもありませんし、利権や派閥というようなことでもありません。外国の工作に動かされるような政治家がたくさんいるということです。

 はっきりいえば永田町は外国の工作機関の草刈場になりつつある、あるいはすでにずっと前からそうなっているといってもいいでしょう。

 霞ヶ関の主要官庁の中には、たくさん外国の工作員が(もちろん表面は日本人として)入っています。しかし日本ではそれをチェックするFBIのような機構がありません。特に目立つ人は、警視庁公安部というところがある程度マークしていますが、処罰はできません。

 日本はこれほど危険なのです。全くの「情報亡国」です。インテリジェンスがこの国はあまりにも欠如しているということであり、このままではいずれ国は滅んでしまいます。

 今回の尖閣の危機でも、新聞などを見ていて驚いてしまうのは、「日中のパイプがないから民主党は駄目だ」、「自民党の時代はそれぞれ中国と親しい政治家がたくさんいて、こういう問題が起こると裏パイプで話ができるから、こんな騒ぎにはならなかったはずだ」などと書いている人がいることです。これはインテリジェンスの欠如の最たるものといえるでしょう。

 そんなパイプを不用意につくれば、必ず怪しげな「対日工作のパイプ」となり、中国がいいように日本の政治を動かすことになってしまうのは明らかです。ですから、「裏で」などというのはいけません。

 日本の外交としては表でしっかり交渉できるということが、まず何より大切なのです。

 

 日本の外務省でも同様のことがいえます。北朝鮮の「ミスターX」と交渉して、小泉首相が訪朝するときに事前に裏交渉をまとめた、などといわれる日本の某外交官がいますが、ミスターXというのは、もうおわかりのとおり北朝鮮のジェームズ・ボンドみたいな人ですから、表の外交官は、そういう人と「お付き合い」してはいけないのです。このように、インテリジェンスに関わる、外交のイロハすらわかっていない官僚が、霞ヶ関にはいるということです。

 これは知識の問題であり、ほんのちょっとした常識さえわきまえてもらえれば、このようなことはなくなると思うのですが、こうしたインテリジェンスに関わるごく常識的な知識のことを私は「インテリジェンス・リテラシー」といっています。この「インテリジェンス・リテラシー」が、日本人には官民問わず著しく欠如しているのです。ですから、日本が今の苦境を乗り越えるためには、まずわれわれ国民全体がインテリジェンスについて知識を深めること、これが他の何にも増して大切なのです。

(中略)

 

 インテリジェンスに無防備な日本

 

 (中略)政治の世界に限らず、ビジネスの世界でも、「ビジネス・インテリジェンス」という分野があります。入札や特許・開発中の技術にかかわる経済インテリジェンスです。

 ある商品見本をつくって、その営業で海外出張し、ホテルに泊まっていると、何かちょっとおかしい。スーツケースの番号を、朝出て行く時にはこういうふうにしたのだけれど、変わっているということがたまにあるでしょう。

 また、向こうでビジネス交渉をやると必ず盗聴されていますし、予定外の人が突然参加したりします。そうすると「これはちょっとくさいな」と、「何かあるぞ」と、警戒しなければなりません。奇妙に親切で情報を教えてくれる人が中国などに行くとよくいますが、そういう人は何か背景があるかもしれません。それを知っていて対応するのと、知らないで対応するのとではまるっきり結果が違ってくる場合があります。

 先端技術を扱う企業が海外に進出して、いつの間にか、その技術をコピーされていたということや、知らない間に技術譲歩を盗まれ、先に特許を取られてしまったということも実際にあるのです。近年は、ハッカー攻撃や各種の「サイバー・スパイ」が日本企業の悩みの種になっています。

 このようなインテリジェンスについて、外国の企業や人は必死で勉強しています。向こうの本屋に行くと、そのような本が山のように並んでいます。経営学や経済学の本よりたくさん並んでいるほどです。外国では、それほど「インテリジェンス」を重視しているということです。

 問題は、日本人はその点への関心がかなり大きく欠けているということです。

 

 先ほどはアメリカの秘密文書を紹介しましたが、旧ソ連にKGBという組織がありましたが、その秘密文書も近年、少しずつ明らかになってきました。ソ連が崩壊したものですから、イギリスなどにどんどん持ち出されて、イギリス政府がその文書を管理していたのですが、最近その中のある部分を少しずつ公開し始めています。

 その文書を「ミトローヒン文書」といい、私のケンブリッジ大学での同級生だった研究者がこの分野の専門家ですので、彼がイギリス政府に頼まれてそれを読みました。クリストファー・アンドリューというケンブリッジ大学の教授ですが、このアンドリュー教授が『ミトローヒン文書』(ペンギン・ブックス、本邦未訳)という本を書きました。あんな人もこんな人も実はソ連のために働いていた人だという事実を二冊の本にして出したのです。その中の一冊に日本のことも詳しく書いてあります。

 

 それによると、外務省の大変なエリート外交官で、その後日本の外交を動かすような高い地位についた超エリートの外交官が一九六〇~七〇年代、実はモスクワに二度も駐在したことがありました。その二回ともハニートラップにかかり、女性に誘われて恥ずかしい写真を向こうのスパイ機関に撮られたようです。この本には、同じ国で「ハニートラップに二度もかかった、なんとも珍しい人」というように載っています。

 ところが、本来このようなことは、日本の国家に関わる大事なのですが、この事例への日本のメディアの全くの無関心ぶりには驚きます。ここからもわかるように、日本は実に不用心で、この例からもわかるように国の一番の奥座敷まで手に取るように外国に完全に把握されているのです。

 この外交官の事例は、日本は上から下まで全く無防備で政府も外国によるインテリジェンス工作に対して真剣に対処していないし、国民もまるでインテリジェンス・リテラシーがないということを、われわれに教えてくれています。繰り返しますが、なぜか日本のマスコミはこうしたことを全く取り上げようとしないのか、理解に苦しみます。そのため、多くの国民は知るすべもないのだと思います。そういうことを、なぜ日本では誰も問題にしないのか全くわかりません。

 日本の周辺の国は、どこもスパイ活動やインテリジェンスに世界中で最も熱心な国々です。ロシア、中国、北朝鮮、これらはほとんどつねに工作活動で対日関係を動かしている国です。ロシアのプーチンは、まさに工作員だった人です。

 このような国がすぐ近くにあり、大変危ない環境にあるのに、日本のインテリジェンスは実にお粗末で、その重要性の認識もありません。戦後の日本はインテリジェンスを完全におろそかにしてしまい、現在は、それに対するきちんとした法律も組織もなく、全くの「スパイ天国」なのです。

(以下略)

 

櫻井よしこ編 「日本よ、「歴史力」を磨け 「現代史」の呪縛を解く」 (文藝春秋、2007年)

 

※ 櫻井よしこ氏、伊藤隆氏、北村稔氏、瀧澤一郎氏、中西輝政氏の座談会

 

119~123ページ

 

日本軍にもいたコミンテルンのスパイ

 

 伊藤 『マオ』を読むと、共産主義が浸透した時期が日本と中国ではほぼ同時期だったということがよくわかりますね。毛沢東が共産党に入党したちょうどその頃、日本では大正時代の中期で、東京帝大の「新人会」をはじめ「革新」運動団体が続出し、その中から日本共産党が出来ています。日本では一九二五年に治安維持法が制定され、官憲によって共産主義が抑圧されたため、共産主義のシンパは「革新派」と名を変え、”隠れ共産主義者”になる。彼らは官僚や軍人、ジャーナリスト、学者の中に忍び込んで、確信的にあるいは無意識的にソビエトの利益に適うような活動をするようになります。

 中西 ゾルゲの最大の協力者、尾崎秀実はその典型でしょう。尾崎は東大の大学院に一年行ったあと、朝日新聞に入社しますが、その時点ですでに共産主義者になっていた。

 伊藤 尾崎はゾルゲ事件で死刑になりますが、逮捕されるまでは近衛政権の中枢に食い込み、近衛新体制を支える最も先鋭的な理論家として知られていましたから、コミンテルンの影響力が権力の中枢にまで食い込んでいたわけで、中共のスパイに侵食されていた国民党蒋介石政権をとても笑えませんよ。

 中西 ゾルゲの諜報活動より、政権中枢に入った工作員としての尾崎の行動のほうが日本国家にはるかに大きな害を及ぼしたのは間違いありません。情報漏洩だけでなく、陸軍を北進論から南進論に転換させて、ソ連ではなく英米と戦わせる方向に追いやることに成功したわけですからね。だから、当初あの事件は「尾崎事件」と呼ばれたのです。あれを「ゾルゲ事件」と呼ぶようになったのは、こうした真相を隠そうという意図からだったかもしれません。いずれにしても、日本にあの戦争の惨禍をもたらした最大の「A級戦犯」は誰かと問えば、尾崎は確実にその一人でしょう。

 尾崎をはじめとする「東大新人会」などの人脈は、官界にも入って行き、やがて「昭和研究会」という隠れ共産党員を含んだ近衛内閣のシンクタンクを組織して、近衛政権のブレーンに収まる。彼らはかつては大正デモクラシーに染まったリベラル派であるはずなのに、わざと軍人を煽って中国戦線の拡大を図っていきます。「上海だけではダメだ、南京をとれ」と煽り、南京を陥落させたら、「次は漢口作戦だ」と徹底して拡大路線の音頭とりまでやる。その頃の『中央公論』や『改造』を読むと、毎号のように尾崎とその仲間たちが派手に戦線拡大をブチ上げています。その強硬さにむしろ軍人が乗せられてゆくのが手にとるようにわかります。日本を泥沼の戦争に引き込む上で、彼らが果たした役割は決定的だった。彼らにしてみれば、日中戦争を長びかせ米英との戦争に結びつけて日本を破綻させることが「日本革命」の早道だったからです。

 これはゾルゲ=尾崎事件を取り調べた調書に出てくるゾルゲの言葉なのですが、「日本という国は、動物にたとえればカニだ。最初に入っていこうとすると、殻がものすごく固くて入りにくい。しかし、一旦端っこから中に入ると、ハサミの先端まで何の抵抗もなく行ける」と。つまり、日本は一度エリートの社会に入り込んだら、御前会議まで全部の情報が入ってくる。スパイにとってこんな楽な国はない、というわけです。

 伊藤 独ソ戦が始まったとき、日本はドイツを助けてソ連を攻撃するか、あるいは石油などの資源を確保するために南方に進出するかという大きな岐路に立たされます。この北進論か南進論かという議論のなかで、非常に強く南進論を主張したのが尾崎をはじめとする多くの言論人でした。北進論を唱えたのは、佐々弘雄くらいでした。

 櫻井 佐々淳行さんのお父さんですね(※)。

 伊藤 そうそう。ゾルゲと尾崎にとって最も重要な任務は、日本を南進論に導くこと、そして日本の決断をいち早くソ連に伝えることだったわけです。

 中西 私は先の大戦でどこに分岐点があったかといえば、北進論か南進論かというただ一点を問えばいいと考えています。つまりドイツがフランスを打倒した昭和十五年(一九四〇年)夏から、独ソ戦が始まり日本が結局、南部仏印進駐を行った十六年(一九四一年)七月にかけての一年の決断が、あの戦争の勝者と敗者を分けた。この一年の間、世界の列強はどこも乾坤一擲、自国の運命を決める最終決断をしたわけです。

 四〇年五月にヒトラーがヨーロッパ戦線で西部大攻勢をかけると、パリは一ヵ月で陥落し、イギリスはダンケルクで追い落とされてしまいます。ソ連を除く全ヨーロッパがドイツの支配下に入ったわけですね。それを見て、日本人は正常な判断力を失ってしまいます。それまでは米内内閣もシナ事変の和平を成立させる方向で動いていていたのに、「バスに乗り遅れるな」の掛け声とともに、再び近衛と共に尾崎らが官邸に戻ってきて三国同盟と南進に向かってひた走ってしまった。

 櫻井 この判断ミスは悔やんでも悔やみきれませんね。

 中西 日本の判断を決定的に誤らせたのは、尾崎=ゾルゲ・グループをはじめとする、政権中枢に入った工作員たちによって国策が歪められ、謀略として捏造された情報です。そうした故意に歪められた情報のパーツを基にして、日本の最高指導部は現実とはまったく違う世界へと誘導されたところがあります。

 私がまったく意図的に歪められた情報の典型として注目しているのが、南方の石油に関する企画院(首相直属の政府機関で統制経済を推進する部署)の情報です。当時、南進論者の主張で、「南に行けば石油が手に入る」というものがありましたね。当時、それを裏付けるために、企画院が何度も南方の石油見積もりの調査をやっています。そして極めて歪んだ蘭印の石油情報を繰り返し報告している。

 ところが開戦後、占領してからの調査で分かったのは、蘭印の石油は、重質油で硫黄分が多く、航空燃料にはまったく適していない、ということでした。パレンバンなどにあった製油所では他からもっと質のいい石油を買ってきて精製し、航空燃料として輸出していたのです。

 ところが、改選前の企画院の最終報告書には、何故かそうした事実は記されておらず、実際には百万トン程度の埋蔵量も、三百万トンと水増しされていた、というのです。だれが現地データを改竄したのかは今も明らかになっていませんが、昨年イギリスで刊行された『ミトローヒン文書』(Mitrokhin Archive Ⅱ、未訳)などから、ソ連のスパイであったと確定された勝間田清一らが企画院のメンバーだったことを考え合わせても、そこには明らかに日本を南に向けるための作為があったと推測できる。つまり、霞が関の中枢にもコミンテルンの息のかかった勢力が多数入っていたのです。

 

※ 関連書籍として、佐々淳行「私を通りすぎたスパイたち」(文藝春秋、2016年)。

 

中西輝政 「情報亡国の危機 インテリジェンス・リテラシーのすすめ」 (東洋経済新報社、2010年)

 

17,18ページ

 

「 冷戦終焉後、一時、「もはや情報機関などいらない」という議論が起こったが、逆に九〇年代の議論を通して、先進民主主義諸国においては、情報活動は民主主義の価値観に則り、「なくてはならない本来的な国家の機能」であるとされ、国民の「知る権利」や民主主義の説明責任と両立すべきもの、として広く容認されるようになった。

 

171~174ページ

 

「 機密保護法の手本は各国にある

 

 日本の政治家の無責任の最たるものは、世界のいかなる国も制定している機密保護法制にいまだに手をこまねいていることだ。しかもこれは同盟国アメリカが繰り返し求めているのに、自民党も民主党も政治家は全く取り組もうとはしない。実は、一九八〇年代に一度、自民党は「スパイ防止法」の法案を国会に提出したことがある。当時、世論は全体として比較的好意的だったと記憶している。

 しかし、「戦前の特高警察を連想させる」とか「戦前に逆戻りするのか」「国民の知る権利を侵す」といった一部左派陣営の議論に、政府自民党が立ちすくんでお蔵入りになってしまった。

(中略)

 少なくとも機密保護法制定だけは焦眉の急であり、すぐにも前進させることが必要である。

(中略)

 これについては、イギリス、アメリカ、ドイツなどの機密保護法を参考に議論を進めるべきだろう。

(中略)

 もちろん、それぞれの国柄があるから、一概にお手本にできるものではないし、簡単に輸入するわけにもいかない。しかし日本の場合、国益に関わる機密の保護という点で、およそいかなる先進国と比べても、話にならないほど杜撰なままである。これは、今のまま放置すれば、必ず取り返しのつかない国家的な破局を招くことになろう。」

 

 

 「「国民の知る権利を侵す」といった一部左派陣営の議論」には、朝日新聞も含まれる。

 のみならず、公明党もスパイ防止法に反対していた(http://urx.blue/yee5)。

 さらには、自民党の谷垣禎一前幹事長も消極姿勢のようだ(同上)。

 

 既に「スパイ天国」状態で長年過ごしていることから、わが国でスパイ防止法を制定したならば、「マッカーシー旋風」以上の衝撃となるかもしれない。

 同法制定には、政界、官界、マスメディア、さらには学界からも著しく強い抵抗が予想される。

 しかし、特定秘密保護法を制定し、共謀罪制定にも取り組むことができる安倍政権だからこそ、スパイ防止法の制定にもいずれは取り組んでほしいと思う。

 そのためには、特定秘密保護法や共謀罪について建設的な議論をせずに情緒的に不安を煽る反安倍勢力こそ、他国やテロリストのスパイのようなものであり、信用できないということを、国民が理解する必要があるのだと思う。

 国軍保持のための憲法9条改正に反対し、安全保障がザルであることを望み、国家国民を危険に晒すことを良しとする人たちの安全保障に関する発言など、信用に値するわけがない。

 朝日新聞は、信じてはいけないメディアの最たるものだ。

 我々は、今一度、北朝鮮の工作員に拉致された被害者に対して朝日新聞が冷淡な態度を取ってきたことを思い返すべきだ(井沢元彦「「拉致」事件と日本人 なぜ、長期間黙殺されたのか」(祥伝社、平成15年)参照)。

 そして、拉致被害者救出に熱心に取り組み、5人の被害者を救出した中心人物は、安倍晋三官房副長官、今の内閣総理大臣だ。