【経済】あえて竹中平蔵教授のいいところを挙げてみる | 独立直観 BJ24649のブログ

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「「雇用破壊~日本人の給料が奪われる」(三橋貴明×古谷経衡『月刊三橋』より)」YouTube2014年4月24日
https://www.youtube.com/watch?v=IsJZZaD-rPQ

「竹中平蔵氏と価値観」三橋貴明ブログ2014年5月8日
http://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/entry-11844543898.html



 大前提として、竹中平蔵教授は、最終的に、「悪法も法なり」というわけのわからない理屈で消費税増税を容認してしまった、情けない男である(倉山満「増税と政局・暗闘50年史」(イースト・プレス、2014年)119ページ以下)。
 

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<2017年6月27日追記>

https://twitter.com/Fu_tujin/status/879223581804158977

「ケケ中の増税時の発言の非難も気持ちわかるんだがw
財務官僚経験者のすでに「決まったこと」を無しにする困難さを知っている人からすれば一番実現性高い事を言っているに過ぎないだけなんだ。8%は止めるのも無理だから我慢して社会保障の支出を減らして(10%阻止)だったからな。」

 
 
 まだ消費税増税は止められると考えている倉山氏から見れば竹中氏は情けないという評価になるが、竹中氏はもはや増税は止められないと見切り、次の展開を見越して発言をしていたと考えられる模様。
<追記ここまで>




 
 
 三橋貴明先生は、「経済の自虐主義を排す」(小学館、2013年)84ページで、竹中教授を名指しで批判する。
 上記動画でも、竹中教授の労働政策を批判している(http://youtu.be/IsJZZaD-rPQ?t=5m35s)。




 
 
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 竹中教授と言えば、郵政民営化だ。
 郵政民営化を巡って、保守派の重鎮である平沼赳夫衆議院議員が自由民主党から出て行くことになった。
 そのためか、竹中教授は保守層からかなり恨まれている。
 竹中教授を重用した小泉純一郎内閣総理大臣も、同様に恨まれている。

 ただ、竹中教授にもちょっといいところがあるので、紹介しようと思う。
 出典は、「日本経済こうすれば復興する!」(アスコム、2011年)だ。
 この本は、三橋先生の「震災大不況にダマされるな!」(徳間書店、2011年)と一緒に買った、私にとってのはじめての経済本だ。
 当時は経済本の選び方など全く分からなかったので、学者と実務家の本を一冊ずつ買おうと思い、店頭でいろんな本を見比べた。
 学者は、実務家よりも豊富な知識を持っているが、時として独自説に走るおそれがある。他方、実務家は、学者よりも知識は少ないが、穏当な見解をとる傾向がある。なので、学者と実務家の本を買い求めた。
 学者の本は、小泉政権で政権運営を担った竹中教授のものが信頼性が高そうな気がした。実務家の本は、三橋先生の本が無理なく通読できそうな気がした(三橋先生は中小企業診断士)。
 それで、この2冊を購読した。
 
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● 竹中教授は、実は、民主党政権での公共事業削減を批判していた。

 竹中教授と言えば、「小さな政府」主義者であり、公共事業削減の権化のように思っている人もいるだろう。
 小泉竹中の市場原理主義に基づく公共事業削減が日本のデフレを長引かせたと考えている保守系の人は多いのではなかろうか。
 その竹中教授が、民主党政権の公共事業削減を批判しているというのは、意外だろう。

「民主党が18%も削ることができた理由は、マクロ経済のマネジメントをやっていないからです。マクロ経済のマネジメントを考えていれば、18%もの削減など、恐ろしくて到底できません。公共事業の18%削減は、思い切った決断や大英断といえる代物ではなくて、何も考えていなかった証拠と見るのが正解でしょう。」(153ページ)

 ちなみに、竹中教授は、小泉政権で公共事業を3%削っている。
 竹中教授は、デフレ脱却と財政再建を同時に達成しようとして、支出削減をしようとしていると見える。
 この考え方は批判されてよいだろう。アベノミクスの考え方とは違うところがあるだろう。
 ただ、竹中教授も、「公共事業削減=正義」とは考えていないのだ。



● 竹中教授は、実は、民主党政権でのTPP参加に不安を感じていた。

 竹中教授は、TPP推進派に位置づけられる。
 では、菅直人がTPP参加を表明したとき、竹中教授は諸手を挙げて賛成したのだろうか。
 実は、そうではないのである。

「 民主党政権は、競争政策、開放政策、規制緩和政策などに従来まったく無頓着でした。それが、いきなりハードルの高いTPP(Trans-Pacific Partnership=環太平洋戦略的経済連携協定)への参加を打ち出したので、私は「冗談だろう。本気か?」と思いました。
 勉強する様子がまったく見えなかった学生が、突然「俺は東大を受ける」と言い出したようなものだったからです。」
(110ページ)

 民主党政権は、国益を守るという思考回路がなかった。
 竹中教授は、TPP参加そのものには賛成しているのだが、民主党政権の交渉力に不安を感じ、TPP参加表明に諸手を挙げて賛成したわけではなかった。
 竹中教授はアメリカン・スタンダードを日本に持ち込んで日本の文化を破壊しようとしている、などと考えている人もいるだろうが、そうならば、民主党政権のTPPに賛成して、日本の打ち壊しを望むはずである。しかし、それは竹中教授の望むところではないのだ。
 現在、安倍政権は、TPP参加交渉でタフ・ネゴシエーターぶりを見せ、安易に米国に妥協しない。竹中教授が望むTPP参加交渉とは、こういうものである。



● 竹中教授は、実は、日本文化の振興のための補助金を増やすことを提案している。

 竹中教授は日本文化をぶち壊そうとしてる、竹中教授は歳出削減一辺倒だ、などと思っている人は多いだろう。
 しかし、竹中教授は、日本文化を振興するために補助金を増やすべきだと言っている。

「文化というのは、何らかの経済的な支えが必要だということです。これは文化経済学の重要なエッセンスの一つです。
(中略)文化の生産性は向上しません。
(中略)文化のコストはどんどん高くなっていきます。
(中略)この状況を放っておくと、文化は一部の金持ちしかエンジョイできなくなります。だから、多くの人びとに文化を享受してもらうためには、国が補助金を出すなり、金持ちが寄付をするなり、何らかの支えが必要なのです。
(中略)日本は国の補助金が不十分で、しかも民間が寄付する制度も整っていません。」
(51~53ページ)

 竹中教授が経済財政諮問会議でこういう提言をしておればよいのだが、実際はどうなのだろうか。
 竹中教授は、大阪維新の会の経済政策のブレーンを務め、橋下徹大阪市長と経済観が近いと思われているだろうが、文化事業予算を削った橋下市長とは、この点で全く異なる。



● 竹中教授は、実は、消費税増税に反対していた。

 ということは、知られていますわね。

「いま日本で増税をして景気がよくなることは絶対にありません。「増税で景気がよくなる」は大ウソです。」(137ページ)
「消費税の税率を引き上げても、低成長とデフレという状況が続けば税収は増えません。これを放置したまま消費税の税率を上げても税収は増えないことを、97年から今日までの歴史が証明しているともいえます。
 右のような安易な増税への反対論は、自民党から出てきてもおかしくないはずですが、残念ながら自民党はまったく逆の増税論に傾いています。麻生政権がバラマキ型の経済政策に転換したままですから、そこに民主党が食いついているわけです。
 実際、菅直人さんと谷垣禎一さんの主張には、大きな違いはないでしょう。小泉時代の構造改革派を新自民党、それ以外を旧自民党とすれば、いまは民主党と旧自民党が増税路線で結束しています。では、新自民党は何をしているのでしょうか。改革派のある参院議員がこう言っていました。「私はいま、野党の非主流派に属しています」と。
 名目成長率1%を続けながら消費税を引き上げてもムダで、それは97年以降の税収額を見れば明らかだというのは、マクロ経済の視点からごくごく常識的な見方です。OECDの先進国は、名目成長率4%程度が普通の状況と考えています。そんなマクロ経済の視点が一切語られないことが、日本の不幸なのです。」
(139,140ページ)

 麻生政権云々のところには賛否両論あるだろうが、その他の部分については同意できるだろう。
 それにしても、増税三党合意をした谷垣禎一は、一体何なのか。菅直人と同レベルの経済観しか持ち合わせていないのか。
 まぁ、菅直人も谷垣禎一も、財務大臣を経験したときに、財務官僚のご説明に洗脳されたのかも。当時の財務事務次官は勝栄二郎だったか。



 いかがだろうか。
 意外な内容があったのではないか。
 竹中教授を批判するのも結構だが、こういう面があることも知っておかないと、保守の敵というイメージが増幅して、的外れな批判になってしまうおそれがある。
 気をつけたいものである。