イランはこれからどうなるのか | 新書野郎

イランはこれからどうなるのか

イランはこれからどうなるのか―「イスラム大国」の真実 (新潮新書)イランはこれからどうなるのか―「イスラム大国」の真実 (新潮新書)
春日 孝之

新潮社 2010-09
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別に宮田律をPHPにとられたからという訳ではないのだろうが、新潮の新書は毎日の下テヘラン支局長。発売時期も被っているので、宮田律を意識しているのではないのだろうが、なるほど、同じイランものでもタイプが全く違う。イラン報道がボーン・上田の最終候補になったというのがどんなものなのか分からないが、赴任当初はペルシャとアラブがどう違うのかも知らなかったという。アフガニスタンに関する著書でエッセイストクラブのこれも最終候補に残ったとのこと(素人じゃないんだから、略歴に最終候補とかは載せない方が良いんじゃないかな)で、学究的なものよりも普段着目線を得意としている人ではある様だ。そうした視点がイランの様な二面性のある国に対して効果を発揮したとは言えよう。言わば宮田律が表の顔を開設したのに対し、この著者は裏の顔を語ることを徹底している。革命防衛隊についての解説は全く無いし、そもそも改革派保守派の組み分けにも疑問を呈している。イランが「中華思想」の国というのは私も感じていたことなのだが、なるほど中国や小中華の国との類似点は多い。アメリカから脅威とされることで自国をアメリカと対等な国と思わせる。過去に侵略支配を受けたアラブを野蛮化して見下す。ペルシャ湾の名称にこだわり、アラビア湾表記は認めない。文化的に遅れているとみる湾岸諸国の経済発展は自分たちのおかげだと見ている。嘘をつくことを恥とする考えは存在せず、嘘と真実の違いが曖昧。等々色々とあるのだが、考えてみれば、共産党も宗教の一種であるとみれば、タテマエ上の宗教が絶対権力を握って、政体を揺るがす政治、言論、思想、少数民族の独立などは認めないものの、カネ儲けの自由は認めるというのもそっくりだ。娯楽が少ないイランではデモがエネルギー発散の場となっているといった記述には苦笑してしまった。イランと湾岸諸国の関係をみても、一見、イランの方が規制が厳しいようにみえるが、女性の職場進出や王族支配の硬直化した経済システムにイランの方に自由を感じる人は多い様で、これも何やら中国人の日本観との共通点が。イラン人はドバイに世界一の高層ビルが建とうと、あれは外国の設計で外国人労働者を使って建てたものだが、イランは核開発も自国でまかなえる(実際は違うが)という認識だそうで、日本が如何に経済的に発展しようと所詮は米国の属国、中国は宇宙開発も高速鉄道も全て中国国産(実際は違うが)という典型的な中国人の認識と瓜二つで笑った。
★★★