一冊でつかめる!中国近現代史 | 新書野郎

一冊でつかめる!中国近現代史

一冊でつかめる!中国近現代史—人民と権力と腐敗の170年  激動の記録 (講談社プラスアルファ新書)一冊でつかめる!中国近現代史—人民と権力と腐敗の170年 激動の記録 (講談社プラスアルファ新書)

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上海生まれの荘魯迅という人が著者。よく分からんが中国ではシンガーソングライターをしていたらしい。これ一冊でつかめるかどうか知らんがアヘン戦争から天安門事件まで駆け足で。天安門や文革を重大視しているのは御用学者ではないこの世代の「知識分子」としては当然なのだが、それを含めての漢族史観だから、チベットとか中越戦争はスルー。抗日戦争は遠慮気味に書いているが、南京は数が問題ではないという「公式見解」に準じたもの。数が問題でなければ30万に固執することもないと思うのだが、どうだろう。ちょっと意外に思ったのが、毛沢東の彭徳懐弾圧は彭が毛岸英をわざと危険な前線に送ったとからだと匂わせている件。岸英は外でチャーハンを作っていたら空爆されたと言われているのだが、その最期に脚色を加えず報告したのがマズかったのだろうか。周恩来についても、日本や外国における高い評価を冷めた目で見ており、結局、周恩来が守ったのは毛沢東の権威であったとしている。こういう滅私奉公型参謀は独裁者を抱く体制には欠かせないもので、某学会が周恩来を持ち上げるのもその辺に理由があるかと思うが、文革時代に打倒されずに生き繋いだことは文革の加害者側からも被害者側からも複雑な心境を抱かせることになろうか。その意味では何度も失脚しながら復活して改革開放の道を開いた鄧小平が、この世代のヒーローなのだろうが、それだけに六四には大きな失望を味わうこととなる。周恩来も鄧小平もちょっと長生きし過ぎたのかもしれんが、毛沢東に関しては長生きしたからこそ、ソ連の広大な衛星国家とならずにすんだと言えるのかも知れない。
★★