代理出産 | 新書野郎

代理出産

代理出産―生殖ビジネスと命の尊厳 (集英社新書 492B)代理出産―生殖ビジネスと命の尊厳 (集英社新書 492B)
大野 和基

集英社 2009-05-15
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著者はこの問題をもう20年近くもアメリカで取材してきた人らしい。そこで、ニューヨーク初の代理出産家庭となった一家の話を軸に展開していくのだが、この一家は積極的に取材を受け入れているらしく、代理母から生まれた20歳の息子もちゃんと露出している。下のこどもは双子で、こちらは受精卵を代理母に移植して生まれたこどもとのこと。つまり上は代理母の遺伝子を受け継いでいるが、下は夫婦の遺伝子を受け継いでいる。共に代理母との関係はうまくいっている様だが、著者は母親の長男に対する愛情とと下の双子に対する愛情が微妙に違っていることとの指摘。著者の関心は代理出産の是非ではなく、生まれてきた子どもたちがその後どの様に育てられ、成長していったかというところにあった様だが、結局、その辺のツッコミは浅い。成人してから親を批判する論文を書いたこどももいるとのことだが、その論文は入手できなかったのだろうか。ちなみに有名なベイビーMも成人して大学生となっているそうだ。初期の頃の代理出産は、採取した父親の精子を代理母に注入するという単純な方式だったらしいが、医者に拠らず、自分で注入して妊娠するなんてことは可能なのか。兄の後に風呂に入った妹が妊娠したというのは都市伝説だが、妹だか娘だかに注射器で妊娠させようとした母親だか姉だかが逮捕されたという話は最近ニュースにあった。大きなニュースとなったのが向井亜紀やインド代理出産事件だが、アメリカでもインドでも代理出産はビジネスとして完全に制度化されている。そこで向井亜紀(元ミスDJ)が日本の後進性を訴えるのだが、この面でも先進的であると思われているはずのヨーロッパでは多くの国で違法であるらしい。人権的これは「人身売買」であると看做されている様だ。ならば、中絶の是非で国を二分するアメリカで代理母が認可されているのも変な話だが、子種に恵まれない親の人権を認めているのか。インドやアメリカで盛んというのは、あくまで人助けというタテマエではあるのだが、正に「オンナは産む機械」を地で行っているんじゃないかな。
★★