現代ドイツ | 新書野郎

現代ドイツ

三島 憲一
現代ドイツ―統一後の知的軌跡
著者はドイツ思想が専門の人らしい。ということで、至る所にハーバマスの言説が登場したりするのだが、別に小難しい思想がテーマではなく、現代ドイツで繰り広げられている様々な論争を紹介するのがメイン。これが意外と面白かった。さて、親分に右に倣えで「ドイツを見習え」とか言ってるのは、今や中韓にイイ様に使われるだけのわが国の「進歩派」のみなさんだが、ドイツの進歩派は親米なのだとか。なんでも伝統的にドイツ左派はアメリカン・デモクラシーに多大な影響を受けているらしく、全体主義の専制国家や、国粋主義のウルトラ民族主義国家を崇拝する日本の左翼などは信じられないとチクリ。またスキンヘッズが駐独イギリス軍兵士由来だったというのも知らなかった。ドイツを見習えというなら、こんな連中も見習わなくてはならないのだろうけど、頻発しているらしいのに、なぜか一人の目撃者も犯人も現れないチマチョゴリ切り裂き事件なんか、ネオナチにかかったら冗談みたいなものだろう。ドイツ首脳が日本はこの問題を取り上げてこないので、気が楽だというのも、まあ皮肉なんだろうが、ドイツ同様、人種差別の国というレッテルを張られている日本にとっても、弁解しても、相手が聞く耳持たずじゃやりきれませんなあといったところか。実際、人種差別だとか声高に非難している国の人って、実はもの凄い差別意識を持っている場合が多いんだよね。これは差別が差別を生むではなく、自分たちの国は差別されていると思っているから、内なる差別には全く無頓着ということ。
★★★