お月見の日に月は見えなかった。昨日が満月だから、今日から少しずつ、月はカーブを描いてほっそりしてゆく。月の光を浴びると、きれいになれる。そんな話をどこかで、聞いたような気がする。手を広げ、全身に不思議な光と秋の夜風をひんやり受け止める。

ベランダから月を見る。聞こえるのは虫の音だけ。今年もあと2ヶ月半。走るように、季節は移り変わってゆく。そのはざまに、わたしは四十路を一歩踏み出す。

ふと、月とその光は、真珠とその輝きに似ていると思った。わたしが心惹かれてやまない真珠という宝石は海に抱かれて育つ。月も空という海にいる。柔らかく、しかし凛として光る月はやはり真珠のように美しい。