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あれもこれも秘密? 秘密保護法案、問題点を考える
2013年10月26日05時00分


特定秘密保護法案や原発再稼働に反対する市民が25日夜、首相官邸前で相次いで集会を開いた。参加した東京都港区の女性(71)は「情報が与えられなければ、こうして動くこともできない」と話した=25日、東京・永田町、井手さゆり撮影

 安倍内閣が25日に閣議決定した特定秘密保護法案。機密を漏らした公務員らへの罰則が強化されるというけれど、「知る権利」「取材の自由」は確保できるのか。市民生活にはどんな影響があるのか。実際に記事化した取材を振り返り、また、市民に起こりえる事態を想定し、2人の弁護士とともに問題点を考える。▼1面参照


 ■報道現場で―― 隠れた事実、暴くには

 「『米が懸念』極秘公電」。今年1月3日の朝日新聞朝刊1面、シリーズ企画「プロメテウスの罠(わな)」の見出しは、東京電力福島第一原発事故直後の米政府の危機感を伝えたものだった。秘められた日米政府間のやり取りや自衛隊内部の動きを、板橋洋佳(ひろよし)、野上英文両記者が15回の連載「日本への不信」で掘り起こした。

 「米軍は4号機が危ないと考えている」「大統領は非常に心配している」――。公電にあった米軍トップの統合参謀本部議長の証言を報じた。米国務次官補が「数百人の英雄的な犠牲が必要になる」と駐米大使に伝えた、とも書いた。

 取材したのは外務、防衛省幹部、国会議員や米政府関係者ら100人以上。「国家公務員法違反になる」と口は堅かったが、関係者を説得するとともに、多方面の取材を重ね、事実を積み上げた。

 国家公務員法の守秘義務違反は懲役1年以下。対して、秘密保護法案は懲役10年以下と重罰化が際立つ。

 板橋記者は「(法案が成立すれば)機密に関わる取材のハードルが上がるのは間違いない。これまで以上の取材力と、情報源を守るための慎重さが求められる。事実を追う姿勢は何ら変わらない」と言っている。(編集委員・川本裕司)


 ◆役人が萎縮、取材の壁 江藤洋一弁護士の見方


 秘密保護法により秘密漏出の重罰化が進むことで、役人もマスコミも萎縮し、国家機密についての取材はより難しくなるだろう。

 法案の修正協議で「著しく不当な方法によるものと認められない限り」は正当な出版・報道の業務と認めたが、訓示規定にすぎない。「著しく不当な方法」を決めるのは当局だ。行政庁の告発や警察が独自に動くことも考えられる。

 秘密の要件があいまいで恣意(しい)的な逮捕に道を開きかねない。

 特に法案で配慮されていないフリージャーナリストは危険性が高い。裁判にならなくても、逮捕・勾留や捜索・差し押さえを受けるだけで大打撃だ。戦前の治安維持法でも国内の検挙者のうち起訴されたのは約1割といわれる。

 尖閣ビデオはずさんな管理で流出したが、情報がきちんと管理されれば公務員が漏洩(ろうえい)する例は少ない。重罰で国民やメディアを威嚇し、国民の知る権利が脅かされるのは本末転倒だ。

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 えとう・よういち 1950年生まれ。日本弁護士連合会秘密保全法制対策本部長代行。