激闘の幕開け! ツール・ド・タ・マガーワ[第2話]
【今回の記事は、実話をもとにしていますが、あくまでフィクションです。登場する名称はすべて架空のものです。実在する団体、個人とは全く関係ありません!】
さらにレース展開も白熱するツール・ド・タ・マガーワだが、参加する強豪チームの中でも上位入賞を狙う「モースト・ピナレロ」チームの選手たちの“戦闘マシーン”、バイクサプライヤーの技術の粋を集めた最新鋭ロードバイクをいくつかご紹介したい。
![ピナレロ・ガリレオ赤](https://stat.ameba.jp/user_images/36/f3/10046552943.jpg?caw=800)
「モースト・ピナレロ・レッドストライプス」チームのチームカラーである赤を基調にカラーリングされたイヴァン・セイボンヌ選手のガリレオ・スペシャルバージョン。文字通り“レッドストライプ”のバーテープが、このバイクがただものではないことを主張する。パーツはもちろんMOstで統一される。ピナレロの特徴でもあるオンダフォークがセクシーだ。
これは非公式だが、このスペシャル・ガリレオ、市販バージョンのガリレオやFP2よりもフレームの剛性が高められ、しかも大幅な軽量化が達成されているらしい。表面はガリレオだが、中身は全くの別物…との噂はどうやら真実のようだ。重量はUCI規定の6.8kgを僅かに上回る6.9kgと発表されている。
![ピナレロガリレオ黒](https://stat.ameba.jp/user_images/c4/01/10046552917.jpg?caw=800)
このガリレオは、同じく「モースト・ピナレロ」チームのレドラー・ビット選手のもの。フレームはおそらくセイボンヌ選手のものと基本的には同一と思われるが、選手の好みに合わせ、若干のチューニングが施されている。情報ではフロントのオンダフォークが特注品だそうだ。強度が大幅にアップしただけでなく、超軽量とのこと。2009年モデルのピナレロ・プリンスに装着される予定らしい。
続いて、同チームのビーオ・バイクスキー選手のバイクもご紹介しておこう。
![ピナレロ・プリンス](https://stat.ameba.jp/user_images/e2/dd/10037531887.jpg?caw=800)
ご存知、ピナレロの最高級カーボンモデル、「ピナレロ・プリンス」。市販モデルはフレームだけでも約60万円という、ロードバイクの“フェラーリ”。コンポはもちろんカンパニョーロ・レコード…
あ、あれっ?
なんか違うゾ! 確かビーオ・バイクスキー選手のバイクは「アングリル」のはずだったのに…。
※当ブログの編集担当にミスがあったようです。ビーオ選手の正しいバイク写真は後日掲載いたします。大変申し訳ありませんでした。(「自転車で糖尿病を克服した!」編集長)
--+---+---+---+--
【前回からの続き】
★カンチェラーラvs.バサドの一騎打ち
レースもいよいよ中盤戦に入る。
集団はタ・マガーワ・サイクリングロードを抜け、一般交通が完全にシャットアウトされた一般道へと出る。
一般道へと出る直前には、最大斜度15パーセントという“激坂”がコースに含まれていたが、日頃鍛えられた選手たちには何ほどのことはない。選手全員が涼しい顔でその激坂を登りきったことはあえて書くまでもないだろう。
一般道へと舞台を移してからの約10km区間は、比較的フラットな道が続く高速走行区間となる。ここでは「チーム・フラットバー・パワー」と「ペプシ・バルセロナ」の間で壮絶な駆け引きが展開された。
まず、「ペプシ・バルセロナ」のタカ・カンチェラーラ選手が単独逃げを決めようとアベレージスピードを大幅に上げてきた。一般の自転車では到底追いつくことのできない超ハイペースだ。もちろん原付の制限速度を上回る“違法速度”での巡航だ。
これにすぐさま反応したのが、「チーム・フラットバー・パワー」のエース、オムアリ・バサド選手。
スタート当初から、タカ・カンチェラーラ選手を徹底マークする作戦を取ってきたオムアリ選手は、ずっとタカ選手の“付き位置”を決め込んで走ってきた。もちろん先頭交代などするはずもなく、ハイスピードではあるがまだ余裕を持って走るタカ選手の後ろで体力を温存しつつ、いつアタックされても対応できる体制でレースを“観察”してきた…と言ってもいいだろう。
いきなり2割増の速度で走行しはじめたタカ選手だったが、後続のオムアリ選手もさすがエース、ピタリと車間を保ったまま、通常フラットバーを装着された自転車では困難と思われる高速で付いていく。
このとき、風は向かい風が吹いていた。タカ・カンチェラーラ選手といえども、ほどなくスローダウンするだろう…という周囲の予想に反し、一向にその速度は衰える気配を見せない。
それどころか若干のアップダウンを利用し、タカ選手はさらに速度を上げてきた。この風とゆるい勾配を逆利用し、ここで一気に逃げを決め、第二ステージの勝負をあっさりと着けてしまおう…という作戦ともとれる。
タカ・カンチェラーラ選手のハイアベレージ走行はさらに続く。平坦路での高速巡航能力に秀でたカンチェラーラ選手ならではのタイムトライアルばりの単独高速走行だ。
これにはさすがにオムアリ・バサド選手も対応できなくなってきた。フラットバーを握る両手に力が入る。余裕の表情が若干だが苦しそうになる。
徐々に車間が開く。
20メートル…30メートル…35メートル…
このままタカ選手に逃げられてしまっては、この先レースは大変なことになってしまう…。なんとしてでも逃がすわけには行かない!
そう思ってか、オムアリ選手は前傾姿勢を強め、さらにペダリングに力を込めるが、高速巡航能力の差はいかんともし難い…。次回のステージからこのチームに供給される予定のアンカーのドロップバー付き高速バイクがあれば…という「チーム・フラットバー・パワー」関係者たちの思いも虚しく、さらにタカ選手との距離が開く。
★思わぬ協力体制
もはやこれまでか…
そんな気配がただよう中、別のとあるチームがこの状況を打破すべくある行動に出る。
「モースト・ピナレロ」チームだ。
絶対に上位でフィニッシュする…というチームオーナーの至上命令を守るため、ここでタカ選手に逃げられてしまうわけにはいかない…ということで、オムアリ選手との利害が完璧に一致した「モースト・ピナレロ」のビーオ・バイクスキー選手がオムアリ選手に協力を申し出たのだ!
先頭交代!
そう、チームが共同して先頭交代することで、タカ選手の独走を許さない!という作戦だ。
一旦は後方集団最後尾まで順位を落としてしまったビーオ・バイクスキー選手だが、その後の変速スタート制度による混乱を逆利用し、また、チームメイトの協力もあって、ここにきて3番手まで順位を回復してきていたのだ。
ビーオ選手がオムアリ選手の前に出る…
タカ選手との距離が大きく開きかけていた小集団が活気を取り戻す。
向かい風の中、信じられない高速巡航を続けてきたタカ選手にも疲れはあったろう…
やがて、なんとか速度を上げてきたオムアリ選手をはじめとする小集団にタカ選手は再び吸収される。
またもや振り出しだ。
先頭を行くタカ・カンチェラーラ集団。そして約1kmの距離を置いて先頭を追いかける後方集団。
再びレースは安定モードに入る。
★「チームCJF」の秘策
だが、この時点で別のチーム、「チームCJF」こと「キャノン&ジェイミー・フェルト」が密かに前方へ前方へと集団を移動しはじめていた。
このあとほどなくして“サコッシュタイム”、つまり補給ポイントが現れる。多くの場合、サコッシュ(=補給食)の受け渡しポイントでは速度が落ち、ちょっとした混乱が起きる。
これを利用し、その後に控える、第二ステージのクライマックス、「L!alpe Petit」(=ラルプ・プチ、日本語名「プチ峠」)での戦いを有利にしようという作戦だ。
チームCJFが擁する山岳スペシャリスト、ブガル・ピエポリ選手の山岳でのアタックを前提にした、非常に効果的な作戦だ。うまくはまれば、ここで勝利を決定的なものすることができる。
チームCJFの選手3人、ブガル・ピエポリ、トッシー・アームストロング、パオロ・ゴッシーニはサコッシュを受け取りながら、お互いに目を合わせ、軽く頷くと他のチームから見たら“不気味”とも思える笑みを見せる。
勝算は充分にあった。ブガル選手は“さぁ勝負どころだ!”とばかりにサングラスの位置を右手でちょっと直し、大きく息を吐き出した。
「最低でも山岳賞ジャージはいただく!」
そんな独り言を言ったのか、言わないのか…、集中力をさらに高めたチームCJFの3人はペースを上げ、ラルプ・プチへと急ぐ。
先頭はやはりタカ選手が引く。「モースト・ピナレロ」のイヴァン・セイボンヌ選手、ビーオ・バイクスキー選手も負けじと峠を目指す。
さぁ、今回のステージ最大の山場、まさに勝負どころ! 厳しいラルプ・プチはもう目の前だ。沿道を埋めるファンの数もだんだん増えてくる。
緩い上り坂をハイペースで登る選手たちの息づかいも荒くなってくる。
だが、このすぐ後に驚愕の番狂わせが起きることになる…。そのことをまだ選手たちは知らない。
【次回へ続く!】
--+---+---+---+--
さぁ、大変なレースになってきたゾ! 勝利は果たして誰の手に!?
[ 前の記事へ | 次の記事へ ] [ 自転車で糖尿病を克服した!目次 ]![](https://hbb.afl.rakuten.co.jp/hsb/07584ed9.d874d724.07584ee0.3f60f5fb/)
さらにレース展開も白熱するツール・ド・タ・マガーワだが、参加する強豪チームの中でも上位入賞を狙う「モースト・ピナレロ」チームの選手たちの“戦闘マシーン”、バイクサプライヤーの技術の粋を集めた最新鋭ロードバイクをいくつかご紹介したい。
![ピナレロ・ガリレオ赤](https://stat.ameba.jp/user_images/36/f3/10046552943.jpg?caw=800)
「モースト・ピナレロ・レッドストライプス」チームのチームカラーである赤を基調にカラーリングされたイヴァン・セイボンヌ選手のガリレオ・スペシャルバージョン。文字通り“レッドストライプ”のバーテープが、このバイクがただものではないことを主張する。パーツはもちろんMOstで統一される。ピナレロの特徴でもあるオンダフォークがセクシーだ。
これは非公式だが、このスペシャル・ガリレオ、市販バージョンのガリレオやFP2よりもフレームの剛性が高められ、しかも大幅な軽量化が達成されているらしい。表面はガリレオだが、中身は全くの別物…との噂はどうやら真実のようだ。重量はUCI規定の6.8kgを僅かに上回る6.9kgと発表されている。
![ピナレロガリレオ黒](https://stat.ameba.jp/user_images/c4/01/10046552917.jpg?caw=800)
このガリレオは、同じく「モースト・ピナレロ」チームのレドラー・ビット選手のもの。フレームはおそらくセイボンヌ選手のものと基本的には同一と思われるが、選手の好みに合わせ、若干のチューニングが施されている。情報ではフロントのオンダフォークが特注品だそうだ。強度が大幅にアップしただけでなく、超軽量とのこと。2009年モデルのピナレロ・プリンスに装着される予定らしい。
続いて、同チームのビーオ・バイクスキー選手のバイクもご紹介しておこう。
![ピナレロ・プリンス](https://stat.ameba.jp/user_images/e2/dd/10037531887.jpg?caw=800)
ご存知、ピナレロの最高級カーボンモデル、「ピナレロ・プリンス」。市販モデルはフレームだけでも約60万円という、ロードバイクの“フェラーリ”。コンポはもちろんカンパニョーロ・レコード…
あ、あれっ?
なんか違うゾ! 確かビーオ・バイクスキー選手のバイクは「アングリル」のはずだったのに…。
※当ブログの編集担当にミスがあったようです。ビーオ選手の正しいバイク写真は後日掲載いたします。大変申し訳ありませんでした。(「自転車で糖尿病を克服した!」編集長)
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【前回からの続き】
★カンチェラーラvs.バサドの一騎打ち
レースもいよいよ中盤戦に入る。
集団はタ・マガーワ・サイクリングロードを抜け、一般交通が完全にシャットアウトされた一般道へと出る。
一般道へと出る直前には、最大斜度15パーセントという“激坂”がコースに含まれていたが、日頃鍛えられた選手たちには何ほどのことはない。選手全員が涼しい顔でその激坂を登りきったことはあえて書くまでもないだろう。
一般道へと舞台を移してからの約10km区間は、比較的フラットな道が続く高速走行区間となる。ここでは「チーム・フラットバー・パワー」と「ペプシ・バルセロナ」の間で壮絶な駆け引きが展開された。
まず、「ペプシ・バルセロナ」のタカ・カンチェラーラ選手が単独逃げを決めようとアベレージスピードを大幅に上げてきた。一般の自転車では到底追いつくことのできない超ハイペースだ。もちろん原付の制限速度を上回る“違法速度”での巡航だ。
これにすぐさま反応したのが、「チーム・フラットバー・パワー」のエース、オムアリ・バサド選手。
スタート当初から、タカ・カンチェラーラ選手を徹底マークする作戦を取ってきたオムアリ選手は、ずっとタカ選手の“付き位置”を決め込んで走ってきた。もちろん先頭交代などするはずもなく、ハイスピードではあるがまだ余裕を持って走るタカ選手の後ろで体力を温存しつつ、いつアタックされても対応できる体制でレースを“観察”してきた…と言ってもいいだろう。
いきなり2割増の速度で走行しはじめたタカ選手だったが、後続のオムアリ選手もさすがエース、ピタリと車間を保ったまま、通常フラットバーを装着された自転車では困難と思われる高速で付いていく。
このとき、風は向かい風が吹いていた。タカ・カンチェラーラ選手といえども、ほどなくスローダウンするだろう…という周囲の予想に反し、一向にその速度は衰える気配を見せない。
それどころか若干のアップダウンを利用し、タカ選手はさらに速度を上げてきた。この風とゆるい勾配を逆利用し、ここで一気に逃げを決め、第二ステージの勝負をあっさりと着けてしまおう…という作戦ともとれる。
タカ・カンチェラーラ選手のハイアベレージ走行はさらに続く。平坦路での高速巡航能力に秀でたカンチェラーラ選手ならではのタイムトライアルばりの単独高速走行だ。
これにはさすがにオムアリ・バサド選手も対応できなくなってきた。フラットバーを握る両手に力が入る。余裕の表情が若干だが苦しそうになる。
徐々に車間が開く。
20メートル…30メートル…35メートル…
このままタカ選手に逃げられてしまっては、この先レースは大変なことになってしまう…。なんとしてでも逃がすわけには行かない!
そう思ってか、オムアリ選手は前傾姿勢を強め、さらにペダリングに力を込めるが、高速巡航能力の差はいかんともし難い…。次回のステージからこのチームに供給される予定のアンカーのドロップバー付き高速バイクがあれば…という「チーム・フラットバー・パワー」関係者たちの思いも虚しく、さらにタカ選手との距離が開く。
★思わぬ協力体制
もはやこれまでか…
そんな気配がただよう中、別のとあるチームがこの状況を打破すべくある行動に出る。
「モースト・ピナレロ」チームだ。
絶対に上位でフィニッシュする…というチームオーナーの至上命令を守るため、ここでタカ選手に逃げられてしまうわけにはいかない…ということで、オムアリ選手との利害が完璧に一致した「モースト・ピナレロ」のビーオ・バイクスキー選手がオムアリ選手に協力を申し出たのだ!
先頭交代!
そう、チームが共同して先頭交代することで、タカ選手の独走を許さない!という作戦だ。
一旦は後方集団最後尾まで順位を落としてしまったビーオ・バイクスキー選手だが、その後の変速スタート制度による混乱を逆利用し、また、チームメイトの協力もあって、ここにきて3番手まで順位を回復してきていたのだ。
ビーオ選手がオムアリ選手の前に出る…
タカ選手との距離が大きく開きかけていた小集団が活気を取り戻す。
向かい風の中、信じられない高速巡航を続けてきたタカ選手にも疲れはあったろう…
やがて、なんとか速度を上げてきたオムアリ選手をはじめとする小集団にタカ選手は再び吸収される。
またもや振り出しだ。
先頭を行くタカ・カンチェラーラ集団。そして約1kmの距離を置いて先頭を追いかける後方集団。
再びレースは安定モードに入る。
★「チームCJF」の秘策
だが、この時点で別のチーム、「チームCJF」こと「キャノン&ジェイミー・フェルト」が密かに前方へ前方へと集団を移動しはじめていた。
このあとほどなくして“サコッシュタイム”、つまり補給ポイントが現れる。多くの場合、サコッシュ(=補給食)の受け渡しポイントでは速度が落ち、ちょっとした混乱が起きる。
これを利用し、その後に控える、第二ステージのクライマックス、「L!alpe Petit」(=ラルプ・プチ、日本語名「プチ峠」)での戦いを有利にしようという作戦だ。
チームCJFが擁する山岳スペシャリスト、ブガル・ピエポリ選手の山岳でのアタックを前提にした、非常に効果的な作戦だ。うまくはまれば、ここで勝利を決定的なものすることができる。
チームCJFの選手3人、ブガル・ピエポリ、トッシー・アームストロング、パオロ・ゴッシーニはサコッシュを受け取りながら、お互いに目を合わせ、軽く頷くと他のチームから見たら“不気味”とも思える笑みを見せる。
勝算は充分にあった。ブガル選手は“さぁ勝負どころだ!”とばかりにサングラスの位置を右手でちょっと直し、大きく息を吐き出した。
「最低でも山岳賞ジャージはいただく!」
そんな独り言を言ったのか、言わないのか…、集中力をさらに高めたチームCJFの3人はペースを上げ、ラルプ・プチへと急ぐ。
先頭はやはりタカ選手が引く。「モースト・ピナレロ」のイヴァン・セイボンヌ選手、ビーオ・バイクスキー選手も負けじと峠を目指す。
さぁ、今回のステージ最大の山場、まさに勝負どころ! 厳しいラルプ・プチはもう目の前だ。沿道を埋めるファンの数もだんだん増えてくる。
緩い上り坂をハイペースで登る選手たちの息づかいも荒くなってくる。
だが、このすぐ後に驚愕の番狂わせが起きることになる…。そのことをまだ選手たちは知らない。
【次回へ続く!】
--+---+---+---+--
さぁ、大変なレースになってきたゾ! 勝利は果たして誰の手に!?
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