ちょっと引っかかる記事を読んだんですよ。
韓国の芸能マネジメント業界が近代化するために公正取引委員会が奴隷契約にメスを入れる、みたいな論旨ではあるんですけど、その中身が、ちょっとどうなの?って思う内容だったんです。

ソウル経済1月9日の記事より抜粋です。
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[韓流ロードが開かれる]
"マネジメント社登録制誘導して乱立遮断…人権侵害防ぐ標準契約書席を占めなければ"

ソウル経済2012-01-09 16:55

~前略~

スターを養成してデビューさせて海外市場で拡張して韓流に連結しようとするならば、強大な資本力が要求される。したがってデビュー前に100%投資だけされてデビュー後も外国での成功まで追加投資が必要なので、損益分岐点が高まるはずだ。アイドル グループをデビューさせて大衆的成功を収めて損益分岐点を渡すまでは、平均5~7年がかかると知られている。当然投資金回収および安定した活動支援のためには'長期契約'が避けられない。

~後略~
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同じことを取り上げた別の社の記事です。(全部丁寧に読むほどのこともないです)
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韓流の後姿 '雑貨屋式エンターテイメント産業' 手入れする
韓国日報2012-01-06 02:41

公正委、システム大々的改善に出る
マネージメント社優越的地位不公正行為・横暴蔓延
登録制誘導して乱立防止 … 権利保護ガイドライン推進

韓流に乗って次世代国家成長動力にまで浮び上がったエンターテイメント産業(以下エンタメ産業)は、 少なくない親たちが幼い子どもたちに芸能人になるのを奨励するほど羨望職種になったが、産業観点での業界システムは相変らず雑貨屋水準だ。極少数のスターの後ろでは幾多の芸能人志望生たちが '奴隷契約' 企画社の横暴に呻いている。政府がこのようなエンタメ産業の不公正慣行を改善しようと研究用役結果を土台に制度改編に出た。

エンタメ産業の構造的問題点
公正取引委員会が韓国競争法学会に依頼して 5日提出を受けた 『芸能マネジメント産業実態と競争政策的評価』 報告書によると、国内エンター産業は看板だけ派手な雑貨屋に近い。1990年代に入って放送社の外注製作が増えながら活性化した芸能マネジメント産業は 90年代後半大型化とともに芸能人発掘・育成、マネジメント、コンテンツ製作、キャラクターなど付加産業に至るまで全方向で領域を確張したし最近には活動範囲もグローバル化している。

しかし中を見ればあちこちで悪臭がする。何よりスターに過度に寄り掛かるシステムがいろいろな副作用を量産している。スター一人を育てるために出て行く莫大な教育費(ボーカルトレーニング・演技指導・宿泊など)が初期には全面的に芸能マネージメント社の負担なので、各種便法を使ってこれを演習生、非人気芸能人、甚だしくは製作会社にまで転嫁している。

芸能学院は演技ㆍ歌手志望者に過度の教育費と接待などを公然と要求する。芸能マネージメント社は人気のない芸能人に"再契約"を口実に賃金の放棄、夜間ㆍ休日労働などを頻繁に迫るが、弱者境遇の人気のない芸能人や練習生は抵抗する手段がない。

最近では大型化の波に乗って芸能マネージメント社が発行元までの合併、垂直系列化を成し遂げて、芸能人を保護する義務(マネージメント)と最大限に活用したい誘惑(製作会社)を同時に持つ矛盾も生まれている。だから、芸能人の優越的地位はますます大きくなり、大型社間の出演料の固定、中小規模の製作会社の排除などの不公正な取引も横行している。報告書を作成した中央大学ジョソングク教授は「契約より認定を優先する、お金のためならば、過去の縁は簡単に捨てるなどの倫理意識の不在、わい曲された男性中心の性文化がエンタメ産業を大きく害している」と診断した。


被害阻む制度は
公正委は報告書が提案したエンタメ産業制度改善方案を綿密に検討している。まず無能力で非倫理的な芸能マネージメント社乱立を阻む進入規制。現在は税務署に事業者登録さえすればどんな制限もなしに芸能企画事業ができるが、これからは最小限の資本、関連施設などを取り揃えて '登録制'で誘導する方案だ。欠格事由を法で決めて周期的に検査する案も提案された。同時にマネージャーたちに対する資格試験制度を取り入れて質を高めようという意見も出た。

奴隷契約を阻むためには公正委の既存標準約款を大幅に補強して、業界が守ることができるガイドラインを決めて施行しなければならないという指摘だ。未発表曲の権利も企画社に帰属されるとか契約終了後債券・債務を芸能人に押し付けるなど不当事例を禁止條項で盛ろうというのだ。女性芸能人には別途の保護装置を置いて性接待強要やプライバシー侵害を積極保護するガイドラインも必要だ。

このほか、米国の映画俳優組合(SAG)のようなアーティストたちの団体交渉力を高める組織を新設して、演芸マネージメント社の垂直系列化を防ぐための制度的装置も提示された。また、現在、芸能学院には学院法、モデルエージェンシーは職業安定法、専属契約では約款法の適用を受けるなど、まちまちな法律を統合し、芸能産業全般を規律する新しい法律を作らなければならないという指摘だ。

シンヨンソン公正委市場監視局長は 「まず芸能界の不公正約款や取引業者地位濫用など公正取引法の関連部分を補ってこの法を脱する部分は関係省庁と協議して改善を検討中」と言った。
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後者の方がまだ本来の公取委の言わんとすることを少しはくみ取っていると思います。
(公取委の言っていることが総花的なので、なにに主眼を置くかによって書きようが違ってくると思いますが)
前者は抜粋した部分で「芸能人をひとり育成するのに莫大なお金がかかるので儲けを出すまでは数年かかる」ということを認めているところが、違和感がありました。

去年日本のバラエティ番組に韓国の大手企画社の社長が出演して
所属のあるグループをデビューさせるのにひとり何億ウォン?とやらかかったとか言うことを得々として自慢していたようですけど、それって自慢できることですかねえ?

そもそも素質も容姿も一般人とどんぐりの背比べだから、それだけ投資しないとデビューさせられないんじゃないの?
ジャニーズやアクターズスクールが今まで「ひとり育てるのにいくらかかった」とか言ったことがあるだろうか?
莫大なお金をかけなければ売れないということは、それだけ魅力がないということの裏返し。
自慢するよりむしろ恥ずかしいことでは?

そして長期に活動してもらおうと思ったら、信頼できる処遇をして契約更新すればいいことで。
最初から「投資金回収のため長期契約が避けられない」という言い分自体を正しい前提とすることが間違ってると思います。

だいたい人口も少なくCDやDVDもたいして売れない国で、少々テレビに出て儲かるわけがない。
最初から海外進出目指して、日本をターゲットにしてるんです。
まんまと乗せられるどころか、企画社の言い分を鵜呑みにして
「デビューまでにお金がかかってる」=そのシステムが優れていると思うなんて愚の骨頂。

それに大手企画社のオーナーがどんなに大金持ちか、それもよく知られた事実ですが。
損益分岐点とか言う前に、社長の取り分、つまり収益の配分がおかしいことに気付かないのかな。

後者の記事にあるように、いまだに公に「性的接待の強要からの保護」なんて語られるような仕組みなんですよ。「自作曲の権利が所属社に帰属する」のもまだ改善されてないんですね。
一見まともな記事みたいに見えるけど、結果なにが改善されるでしょうね?
まあ、韓国の記者自ら「システムは雑貨屋水準」と認めたことは特筆できるでしょう。
そんなシステムを褒めちぎる日本人、超あほらしいですね。