二週間ぶりに連載再開だぜー!とワクテカしてたらテラおやがもうすぐ最終回と言われテンションの持って生き方が迷子になっている。
さすがに小吉があの状態じゃ地球編をスピンオフは難しそうだしなあ。
※以下本誌ネタばれですのでご注意願います。
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今週のテラフォ。
人工島での戦いから一週間、アメリカ軍に保護された彼らは事情聴取という名のもとに国際社会の波から逃れ、カリフォルニアにある基地にて保護されていた。
そこで行われたのは今後に向けての会議──というには異色なものだった。
『新章開始!
物語は、鍋から始まる──!』
火星から帰還した後、2620年の6月。
未だ傷癒えぬ彼らは一警護のというよりはダン中尉の厚意により日本食店を貸し切っての食事会となったが、その始まりの雰囲気は重いものだった。
地球に帰還したからこそ自分達が断たされている立場を知らされ、その後どうするかという現実を考えなければならないと同時に、失われた人間達という過去とも向き合わねばならないのだから。
それでも、かつてミッシェルが言った通り彼らが兵器などではなく、一人一人の人間である以上生きるためにはその感情に無理やり蓋をすることなく「今」を生きるために。
己が出来ることをしなければならない。
それは彼らが人間であるが故に、そして今後も人間であり続ける為に。
ダン中尉からすれば、年下である彼らが様々な想いを持ちつつ、それでも笑う強さを見習いたいと思ってしまう程に。
大切な人を奪われたこと、捕らわれていた一般人を救った事、そして出会えたはずの小吉が追うなという言葉を残して遠ざかっていったこと。
それでも、現実は続いていくのだ。
だからこそ、無理やりにでも休み、食い、笑い、進むしかない。
進むために、前を向き続ける為に。
少なくとも今回の任務において、彼らが得たのは絶望だけではなかったのだから。
テラフォーマーが地球に来てからその数は増やしつつも、人間の目に晒されることを好まず生きてきた。
最初から人間との全面戦争を狙っての事ではなく奴らには計画があってこそ、その手段を選んだのだろうけれど、だからこそまだ対等に戦える余地がある。
どう足掻いても人間の、テラフォーマーと戦えるだけの人間の数は圧倒的に足りていないのであれば、少人数でも叩けるうちに叩く必要があり、今ならそれがまだ可能だという事。
少なくとも今は。
この今だからこそ小吉の事、そして今回国際問題となるだろう人工島の戦いを各国の政府がどう始末をつけるのかが人間達としては重要となる。
対外的には中国にアメリカが軍事介入したという事になってしまうが、テラフォーマーという存在を秘匿したまま互いに兵器を使うことなくどちらの国民も納得させなければならないという慎重な外交があっての上だろう。
時間通り中国政府からの会見が始まろうとするその時、メディアに映し出されたのは<祈る者>だった。
世界は、音を立てて変革していく。
同時刻、太平洋宮崎県沖にて海上保安庁が発見したのは密漁船ではなく、不審船。
東シナ海の人工島の件もあり、国際情勢がさらに不安定になりつつあるこの状況で日本に迫りくるのは「艦隊」。
どの国でもなく、どの艦でもなく、巨大な生物により構成された、異種族が組み上げた「艦隊」。
内閣総辞職中であり、総理大臣という日本のトップが居ない今、何故問いはするが、それは今だからこそ。
既に20年も前からこうなる事を予測していた人間がいるほどに、計算された今だからこそ。
20年前、ラハブの事もA.E.ウィルスの事も、表面的にではなく全てを理解していた人間が一人だけ居た。
アレクサンドル・G・ニュートンという、バグズ二号の責任者にしてラハブにその頭脳という意味で最も近しい存在。
彼は、こうなる事を既に予測しており、その全てを一冊の本にまとめていた。
予言の書ともいえるだろうそれは、たった一人の後継者に受け継がせるべく、ジョセフ・G・ニュートンという人類の到達点へ託すためだけに書き上げられたもの。
全ては決まっていたのだ。
ラハブが火星にではなく、地球に種を蒔いた遥か昔から人間達が何をし、どうなるかを、そしてこれから起こるだろう厄災も、彼らが何を目的として地球に、人間に関与したのかも。
ラハブという存在は滅んでなお、神として人間とテラフォーマーの上に立ち続けている。
まるで神のように。
そして日本に異種族の艦隊が迫りくるその時、既に閉鎖された人工島にはアメリカ軍がその内部を調査するために侵入していたが、数十人は居るだろう軍人が、防護服を身に付けた人型の生き物を確認した直後に、たった一体の存在を確認したその直後に手を触れられることもなく全滅する。
『「侵略」、開始。
物語(テラフォーマーズ)はいよいよ核心へ──!』
人であり人でなく、テラフォーマーでありテラフォーマーでないもの。
人に近く、けれど決して人ではないその生き物を、何と形状すべきなのかわからぬほどの、不気味の谷の奥底。
ヒッって声でた。
・物語は鍋から始まる
何だこのアオリ。
しかも鍋の字だけ妙に緩いフォント使ってるし。
いや文字通り鍋から始まってるんですが。
なぜか卓上コンロが微妙に未来的なデザインなのがちょっとだけ600年後感。
燈がミッシェルさんの隣を頑なに確保して満面の笑みで酌をしているのが可愛いし微笑ましいけれどマルコスは何でそんなところに座っているんだ。
ちゃんと加奈子の隣に座りなさいよ。
加奈子がちょっと拗ねてるじゃないか。
鍋が普通に美味そうなのはさておきアレックスマルコスはまだ未成年のはずなのだけれど飲酒は良いのか?
実は飲酒ではなく彼らはジュースなのか?
そして慶次くんは何処へ行ったんですか?
走ってるの?
・2620年6月
ナスチャさんが居る!
ナスチャさんが!!居る!!
本当ロシアの二人が本編に出て来るのはいつですか……。
しかしダンさん、彼らの為にわざわざ店を借り切ってあげて、食べ放題飲み放題プランとはなんという太っ腹。
当人たちは未だ火星から帰還したが故の肉体的精神的疲労をむしろ今実感している様な状態ではあるけれど、それはここにいるべき、いて欲しいと願う人間がいない事、そして彼らは火星という遠い地に置いてきてしまったと思っているこの状態であれば仕方ない。
仕方がない事ではあるのだけれど、ダンさん……頑張り過ぎです……。
楽天カードマンじゃないですかというかカードの上限額を上げようとして審査落ちたってどれだけ限度額上げようとしたんですかダンさん。
一警護はかなり給料良いような気がするんですが。
なにせ民間軍事会社だし、彼は前線に立っている人間だし。
ちなみに民間軍事会社であっても前線に立つ人間と後方支援として配属される人間はかなり給料が違うらしい。
あと多重債務マンはアウトです色々と。
ところでここにも慶次くんが居ないんですが。
いや、アレックスと慶次くんは恐らくこの時点でまだ療養中だったという事ですよねそうですよね。
・ドロドロ丼
これ日本人の感覚からすると普通に美味しそう。
・火星という地獄
ここまで深刻に捉えるような事ではないのかもしれないけれど、こうなってもおかしくは無かったこともまた確か。
もちろん八恵子自身にも覚悟があっただろうけれど、少なくとも軍人でもなんでもない看護師を目指していた「普通の女の子」である彼女があの星に行ったことは、想像以上の地獄を体感することになった。
けれど自らの命の危機を、そしてアレックスの命の危機を乗り越えて八恵子自身が強くなったことでこうして地球で笑い合うことが出来るというのは、以前マルコスが言っていた「覚悟」が彼女の中に強烈なほどに根付いていたというのもあるのだろう。
・美味い
美味いんか。
というか八恵子がアレックスに抱いているだろう想いを知っているからだろうけれど、「心が壊れた人間」が作った食べ物をためらいなく食べてあげるマルコスは良い奴だ。
ダンさんの渾身のネタは駄々滑りでしたがこういう狙わないネタの方がうけたりするのはままある事ですね。
・ウナギのカバヤキと肝
エヴァの中のアドルフさんがえっ?って言いそうなチョイス。
エヴァもドイツの子だからか、かなり豪快にビール飲んでますね。
・ラッパ飲み
そしてそれを上回るロシアの子が居るんですが。
ジョッキとかコップとかそういうものは不要だと言わんばかりに瓶から直に呷ってる子が居るんですが。
さすが酒飲み大国ロシアの子……。
いや子っていう年齢でもないんですがと言ったら多分ナイフで刺されそうな気がする。
これやけ酒とかではなくナスチャさんの平常運転だと思う。
いや、少しぐらいやけ酒のつもりでもいいって私の脳内でモグラが言ってはいるんですが。
横でイワンくんが大慌てですよというか久しぶりの出番なのに後頭部だけとか寂しいじゃないですか早くナスチャさんとイワンくんの活躍が見たいので貴家先生よろしくお願いします。
・同じ鍋を囲む
ミッシェルさんと燈とマルコスが本気で肉の取り合いをしているこの可愛さ。
そしてあの時アレックスに食べさせてあげられなかったドロドロ丼を今度はちゃんと食べさせてあげることが出来る……のはいいとして、見た目的にモザイクかかってるぐらいの見た目のせいでアレックスドン引きですが。
そして加奈子が寝ながらエヴァのおっぱいを揉んでいるのはどういうことですか。
というか一年前も今もエヴァが豪快に酒を飲んでいたけれど、更に豪快な酒飲みになっているどころか今度は彼女がナスチャさんの代わりにラッパ飲みしているしイワンくんの代わりに日向が大慌てだしで、カオスすぎていっそ安心する。
・前を向いて生きるために
ダンさん自信もそれなりに色々と修羅場をくぐってはいるだろうと思うけれど、その彼が見ても彼らが持つ「前を向くための強さ」というのは尊敬すべきものだろう。
けれどそれは彼らが人の死を見てきたからであり、更にはそれを乗り越えてきたからこそ。
そして何より、未だ戦わねばならない目標がある。
火星という地獄から静観してなお、地球は安寧の土地ではなく未だ彼らにとって戦場である事を考えれば前を向かざるを得ないという一面もあるのだろう。
ダンさんは彼らを見て思い入れを強くはするけれど、彼が完全にこちら側の人間であるという保証は未だない事を考えると、もしニュートン一族側に戻ってしまった時、互いに辛い思いしかしないだろうことを考えるとこちら側の人間になってしまえばいいと強く願わずにはいられない。
・説教しながら
説教(物理)。
というか真面目な話をしているのにビール髭付けてるミッシェルさんが可愛すぎてもう。
・わずかな希望
国際情勢としてはかなり危ういバランスになったことは間違いないし、何よりも肉薄しておきながら仇である<祈る者>をみすみす取り逃がしてしまったことは彼らにとって悔やむべきことではあるけれど、テラフォーマーの存在を人間側が秘匿している状態である事、そしてテラフォーマー自身も人間の目を避けて活動していたことは希望と認識して間違いない。
当たり前のように地上で活動していたのであれば、圧倒的に戦える人数が少ない人間側が追い詰められるのは時間の問題だったろう。
奴らが人間に全面戦争を仕掛けるまではいかなかった事、そして何よりも研究にその数と時間を費やしていたことで人間の被害を全て無くすことは出来ずとも拠点を叩くことで対処できること判明したのも人間側にとっては朗報ともいえる。
少なくとも、今の時点では。
全面戦争を仕掛けるつもりがないというのはその研究が完成するまではという条件付きだったのだろう。
けれど既に奴らは望むものを、その研究を完成させている。
そしてそれを彼らはまだ知らない。
つかの間の休息のその後、すぐにでも直面するだろう災厄を、まだ知らない。
・外交的判断
#24でも書かれていた通り、いくらテラフォーマー及び中国の研究施設がある正式に中国の領土とは言えない前提があるとはいえそこは「中国が造り上げた人工島」であり、そこに罪のない一般人が拉致拘束されていたとしてもテラフォーマーの存在が人類に秘匿されている以上、対外的に見ればそこにアメリカ軍が侵入するという事は軍事的介入という結論に至らざるを得ない。
捕らえられていた人間達も、捕えていたテラフォーマーの存在も、それを助けに来た一警護の人間も、SPACIALsの存在も何もかも公にすることは出来ず、単に軍事的介入を行ったという(歪まされた)事実だけが知らされることになるのだろう。
そうなれば外交的には互いの落としどころを模索し、決断する必要がある。
テラフォーマーの存在を知らせることなく、戦争の引き金になるような兵器を使うこともなく、両国民を納得させるような言い分をまとめ上げる必要が。
どうやら舜は周りをきちんと見られるタイプのキャラなのかなと彼の台詞を見て思いつつ、前に居る染矢は果たしてどこまで話を理解しているのかと不安になったりもするけれど。
いや、でも脳筋に見えて意外と頭の回転は速そうだしなあ。
・世界の変革が始まる
多くの人間が普段と変わらないであろう日常を、普段と変わらぬ朝を迎えている。
昨日も、今日も、きっと明日も同じような朝を迎え、通勤し、通学し、何も変わらぬ日常がただ繰り返されるのだろうと疑問にすら思うことのない当たり前の朝。
けれど、切り替わったその映像は世界の変革を伝える。
知らぬところで物音を立てることなく静かに変革していくのではなく、誰の目にも見える形で。
誰の目にも見えてしまう形で。
余りに異質なその姿が、世界に晒される。
・会見
というかこれマスコミの人たちはどういう思いでこの場に居るのだろう。
テロップ出てるけど注意するのはフラッシュじゃないというかそれどころじゃない。
そして会見と言いつつ人間の言語を喋れぬ<祈る者>が何を語り、何を伝え、何を聞き入れろというのか。
・侵略
「それ」を発見したのは海上保安庁の巡視船だった。
ただでさえ国際情勢が不安定な状況である今、そして危うい場所である人工島へのアメリカ軍の介入という火種が未だくすぶっている中、日本の排他的経済水域に侵入してきたのは密漁船ではなく、不審船。
少なくともこの段階では。
目撃されたのは一隻の船影──のはずだった。
けれど、巡視船のレーダーた捉えたものは、一隻の船影などではない。
密漁でも偵察でも威嚇でもない、侵略を目的とした「艦隊」の姿。
余りにも異質な、人間の持つ常識と感性をあざ笑うかのような侵略者達の姿。
・艦隊
大型海洋哺乳類を母艦とし、どこで学習したのかはわからないけれど海戦を行うにあたって最も的確な編成を行い、陣形を保ちつつ迫るその姿は余りにも異質な、異様なもの。
鯨型のテラフォーマー(これをテラフォーマーと言っていいものか)は以前染矢と対峙した熊型のテラフォーマーのように、ある程度ベースに合わせた形での成長を行ったのかもしれないけれど、そうであればどれだけの歳月がかかったのかという疑念もある。
もしかしたら地球に辿り着いた10年前、奴らが落ちたのは北極近くであったことを考えれば大型の海洋哺乳類が生息、もしくは繁殖するための海域と重なっている為ベースに選んでもおかしくはない。
見る限りシロナガスクジラ、マッコウクジラ、シャチは確実だし、その他の大型海洋哺乳類もいるのだろう。
そして鯨のスピードではない、というのもテラフォーマーとの融合(M.O.手術による特性の上乗せというレベルではない気がする)によるものだろうし。
もしくは<祈る者>が研究していたものの副産物として、他生物との融合が容易になったという可能性もあるけれど、そうなるとあまりにも準備期間が短い気もするのでやはり研究とは別に人のいない地で何らかの準備を行っていたのではないかと思う。
少なくとも今確認された艦隊だけではない程の数を揃えるには、それ相応の準備が必要なのだから。
そう、これだけではない。
『他にも』。
・何故
何故今なのか、ではない。
今だから、なのだろう。
(内閣)総辞職という、同時に内閣を構成する大臣全てが地位を辞したその時だからこそ、日本という国のトップが一時的とはいえ不在の状態だからこそ。
内閣総辞職を調べてみたら、条件として
1:衆議院で内閣不信任決議案が可決、もしくは否決され10日以内に衆議院が解散されない時
2:内閣総理大臣が欠けた時
3:衆議院議員総選挙の後に初めて国会の召集があった時
というものがあったのだけれど、2が一番怖い。
一郎が再選を果たしたのは人工島に侵入する直前、つまり10日は経っていない状態でありながら総辞職中ということは2の可能性が一番高い。
彼に何かがあったということだろうか……。
二郎(仮)の存在も気になるし、何より一郎自身がバグズ手術という旧式の技術でありながら新たな可能性を示す存在である事を考えれば、どういう立場であれ重要人物であることには間違いない。
いくら死なない虫というネムリユスリカの特性を持っているとしても、事実上の不死というわけでもない。
もしかしたら今回の事を予測して何らかの形で身を引いたという可能性もあるけれど、それはテラフォーマーや中国にとって絶好の機会を与えることに他ならないと考えればあまり希望的な観測は持てないような気がする。
・アレクサンドル・G・ニュートンの遺物
20年前、バグズ二号の計画最高責任者であったアレクサンドル・G・ニュートン。
彼はあの計画の時点ですでにこうなるだろうことを予測していた。
否、知っていた。
ラハブという既に死しているだろう存在を、そして人間に確実に死をもたらすA.E.ウィルスの存在を完全に理解していた。
テラフォーマーの持つ異様なまでの学習能力の高さ、そして人間への攻撃性については自然進化によるものではなく外部から何らかの手が加わっている、というところまではアシモフさんも気付いてはいたけれど、それはあくまでも表面的な理解であって、その裏にある真の理解に至るにはまだ足りない。
アレクサンドルの言う『かつて起こった悲劇』はラハブに起きたことなのか、それとも人間に起きたことなのか。
そして人間がわざわざ火星に蒔いた苔を自分達のものとすり替えたというのであれば、テラフォーミングが始まった500年前にはまだ末裔が生きていたという事になるのか。
恐らくそれをアレクサンドルは全て理解していたのだろう。
彼の得た知識を、人類最高頭脳と謡われたその知識を、研究をたった一冊の本に全てまとめ上げた。
それは後に生まれるたった唯一無二の子孫のために。
人類の到達点たるジョセフ・G・ニュートンに受け継がせるためだけに書き上げられた本。
彼ならば自分の全てを託せると信じて、いや知っていたからこそ書き上げたものなのかもしれない。
・捨てられた島
かつてテラフォーマー及び中国、そしてニュートン一族の研究施設であったその島はSPACIALsにより制圧され、もはや指導者もおらずただうち捨てられたはずの島。
プロの軍人であろう彼らが油断することなく進んではいくものの、内部には誰も、何も居ない。
彼らが言う「細菌兵器を使用された」という情報は、恐らく不要になった人間を始末した時のものだろう。
そういう意味では一警護はアメリカ軍と情報を共有するような密接な関係にあるともいえる。
少なくとも目に届く範囲では、本来居たであろう多くのテラフォーマーの姿は既になく、奴らは海中への逃亡を謀ったのだろうという予測を立てはしたものの、そうであれば、どんなに良かっただろう。
もしくは、まだテラフォーマーが居た方が彼らにとっては幸運だったかもしれない。
たった一体の、人型の「何か」に遭遇さえしなければ。
細菌兵器への対策としてマスクを付けているにもかかわらず、そのマスクを通り抜けてくるほどの攻撃を仕掛けて来る「何か」に遭遇さえしなければ。
成す術もなく、数十人の命を奪う程の「何か」に遭遇さえしなければ。
起動するような音と同時に彼らの全員が内部から出血して死亡しているという事は、細菌兵器的なものというよりは超音波の様なものかなと思ったのだけれど、特にどこかが負傷、破裂したような形跡も(少なくとも今の段階では)見られないことを考えればやはり新たな、今あるマスクでは防げないような微細な細菌兵器なんだろうか。
紅ちゃんの持っていた特性を奪った、もしくは何らかの形で移植したのかもしれないけれど、もしそうであれば特性を使う本人が防護服を着る必要は無さそうな気もする。
彼女自身、自分の特性に対してはきちんと耐性を持っていたし。
かといって単に姿を見せない、その顔を隠すためにここまで気密性の高い防護服を着る必要があるのかなという疑問も残る。
わかっているのはたった一体の「何か」が、この捨てられた島から災厄を起こすという事。
既に決まっていたその災厄を。
ラハブが地球に種を蒔いた、どれほど前かもわからないその時から、人間が『こうなる事』が決まっていた事も含めて、全ては遥か昔に決まっていただろう災厄を。
そしてその災厄の果てに、ラハブという神が持つ目的があるという事だけがわかっている。
わかってしまっている。
既に存在しえないだろうその種族が、神が未だ人間を、テラフォーマーを動かしている。
・不気味の谷底
人であり人でなく、テラフォーマーでありテラフォーマーでないもの。
人に近しく、けれど遠く、テラフォーマーのように見えてテラフォーマーとは異なるもの。
どちらにも属さず、どちらにも属しているもの。
忌まわしいほどの嫌悪と恐怖を抱かせるもの。
人間ではないものが人間に近づくとき、そこには必ず不気味の谷が存在するという。
人間に近しいものでありながら、人間ではないことを感じさせる違和感は嫌悪と恐怖を抱かせる。
多くの研究者たちが人間型のロボットを作ろうとして、この不気味の谷を越えられないという現実がまさに体現されているかのような。
本来は「僅かな違和感」故に感じるものだけれど、僅かでなくとも人間に近づこうとしているという事実そのものが忌まわしさすら感じさせる。
もしかしたらテラフォーマーから見た人間も、M.O.手術という奴らの器官を取り込み、他生物と融合させた存在を同じように忌まわしく、嫌悪と恐怖、そして憎悪を感じているのかもしれないけれど。
防護服を着ていたこの個体がある程度の成長をしている事、けれど<祈る者>が抱いている子供は産まれて10日も経っていないだろう事。
恐らくだけれど、防護服を着ていた方の個体は奴らの研究課程で偶発的に、人間的に言うなら奇跡的に産まれた存在なのだろう。
ある種突然変異ともいえるような個体。
けれど<祈る者>が抱いている子供は、奴自身が研究を重ね、「意図的に造り上げた」存在。
この子供を造るために、<祈る者>は本郷の妹に何かをしたのか、それとも子供自身に何かをしたのか。
もしかしたら、本郷の妹は人間の男を番にあてがわれたのではないかもしれないとすら。
ああ、でも、知っている。
そういう存在を知っている。
ミッシェルさんが奇跡の子と言われ、燈が造られた存在であると言われ。
まるでかつてアレクサンドルが行った事を、<祈る者>がなぞっているかのような。
そういう意味では今回のタイトルANNEX PROJECTというのもあまりに皮肉めいているというか。
元々ANNEXという言葉の意味は付加する、添付する、併合するというもの。
テラフォーマーにとって新たな特性を、新たな種との融合を得るという意味では人間のアネックス計画と同じ事。
そして人間が火星に赴いたことが奴らにとって侵略と同義であるならば、その逆もまた。
全てをなぞるかのような。
ラハブの目的は、人間とテラフォーマーを使って自分達の種族を再興しようとしている、再生しようとしているという事なんだろうか。
実態のない、その存在すら不確定でありながらその存在を一部とはいえ認識され、確立され、まるで遥か高みから地球と火星に手を加え、操るかのように二つの種族がそこに行き着くかのような布石を知り得ぬほどの昔から打っていたという事なのか。
既に死しているだろう彼らが再びその存在を得るための何かを、地球と火星に蒔いたという事なのか。
彼らの取っての導きの道を、人間にとっての不本意なる道を作り上げていたというのか。
人間は人間ではいられないというその言葉は、行き着く先がラハブという種になる事を表しているというのか。
神のように扱われ、神のように憎まれるその存在は、二つの種族を産み、争わせることでより効率的な方法を得ようとしたとでもいうのか。
人間も、テラフォーマーも、ラハブという神の手の上から逃げられぬというのか。
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私の漫画歴におけるトラウマが20年ぶりに上書き更新されましたこえええええええええ!!!!!!!
ちなみに今週まで私のトラウマはデビルマンに出て来た見開きのサイコジェニーです。
コンビニで買う前に一度ざっと読むんだけど、前半の和やかな風景が全てぶっ飛んでいきましたよっていうか変な声でた。
ヒッって声でた。
というかもう前半と後半のテンションが違い過ぎて、記事を二本書いたかのような疲労っぷりです……。
前半はツッコミどころ満載のほのぼのだったのに……後半から畳みかける考察&考察&最後に恐怖という貴家先生復帰おめでとうございます詰め込みすぎですありがとうございます。
最後の2ページが本当もう。
もう。
橘先生の画力も相俟って、恐怖と嫌悪と殺意を感じるレベル。
殺意といっても憎しみ的なものではなくて、あ、コイツやばい殺さないとっていう義務感にも似たところに起因する殺意というか。
ゴキブリを見た時の殺らなきゃって思うあの感じというか。
というか今回出て来た赤ん坊の方、どういう経緯であれ本郷の姪っ子もしくは甥っ子になるわけで取り返さなくて良かったのではというものすごく微妙な気持ちにもなる……。
大真面目に考察しつつあのページ開きっぱなしでなんか変な汗を書きながら頭が煮える思いをしました……。
しかしあの「何ものでもない何か」が燈とミッシェルさんの対比である以上、今後も出て来るどころか明らかに重要キャラであろうことを考えると慣れるしかない。
アレクサンドルは「こうなる事」を全て予測していた、というよりも知っていたようだけれど、それが明かされる時には物語が終わるのだろうなと。
というよりもこの新章からたたみにかかってる感もありますね。
とはいえ今までの伏線その他色々とキャラクターの過去と未来に決着を付けなければならないことを考えればまだまだ読み続けることが出来そうではあるのですが。
というかこれだけの引きでありながら何故次号予告が『ミッシェルさんの実家は…?』なんですかwww
リア友から「小吉の仮面の中身は大丈夫だよね……?」っていうメールが来て恐怖に打ち震えるしかない。